番組紹介

ラジオNIKKEI第1 毎週土曜日 18:00~18:30 ほか

55年超の歴史を有する、民放ラジオ最長寿級のジャズ番組。進行役は、フリーアナウンサーの山本郁。毎回ミュージシャン、シンガー、ジャズ関係者などをスタジオに招き、そのゲストにゆかりの曲をかけてジャズ・トークをお届けします。

新着記事

3月16日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]

2019.03/15 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.453~ジャズ講座】

 昨年に引き続き今年もまた中野区の公民館から頼まれ、ジャズ講座を3回ほど行った。サブタイトルは昨年と同じく「知らなかったジャズ」。ぼく自身はジャズ講座などと言った大袈裟なものでは無くジャズトークと言った軽い感じを考えていたのだが、昨年はサブタイトルに「知らなかった」等と謳われている所為で「戦前にもジャズがあった」「中央線ジャズとは...」等、いささかマニアックだったのでは...と担当氏から注文が付き、今回は徹底して入門者向けとして、隔週の火曜日午後の2時間ほど3回に渡って実施した。

 
相手は50才以上の結構熱心なオジン&オバンがメインで、およそ40名程だったが、殆どはジャズなど全く知らない方達。そうなると入門講座は仲々に難しい。と言うことで1回目の「ジャズって愉しく・面白い音楽」では、ゲストに四谷のジャズ喫茶「イーグル」のマスター、後藤雅洋氏を迎えることにした。彼の所はもう半世紀近く続くジャズ名門店で、彼が慶応大の学生だった時に始めたもの。まあどうして彼を招いたのかと言うと、彼には2冊ほどジャズ入門を謳ったジャズ本があり、またカルチャースクールでも教えており、何より今や売れ行き絶好調なジャズムックシリーズ(小学館)の監修者・選曲者でもあること。彼と一緒にジャズの愉しさ、ジャズ喫茶の利用法など、ムック本収録曲中心にジャズ入門について語り合った。
 紹介したのはマイルス、上原ひろみ、ソニー・ロリンズなどの代表的演奏や美空ひばりのジャズ歌唱等々。中で一番受けたのはやはりひばりのジャズで、ムック本でも中高年層に大反響だったと言う。紹介する曲は2人ほぼ一致したのだが、彼の店で行った打合せの場で唯一意見が分かれたのが、帝王マイルス・デイビスの扱い。ぼくは世界中で最も売れ彼を代表するアルバムとして、当然名盤『カインド・オブ・ブルー』を推し、曲は「ソー・ワット」だと主張したが、彼は断固反対。あのアルバムでかえって入門者はジャズから離れてしまう。同じ「ソー・ワット」ならばここは『フォー&モア』(これも極め付きの名盤だが...)に収められた急速調演奏を選ぶべき...と言う。結局はゲストの意見を取り入れ『フォー&モア』を採用したのだが、これは今もって些か納得いかない所でもある。


 2回目は「ジャズ・ミーツ・クラシック」と言うことで、このコラムにも登場したこともあるジャズピアニストにしてパイプオルガン奏者の岩崎(小野田)良子さん。会場にはエレピも用意されていたので、彼女はエレピを弾きながら、ジャズとクラシックの融合、パイプオルガン演奏の難しさ、スペイン音楽~特にロマ(ジプシー)音楽の魅力などについて話してくれた。彼女がパイプオルガンを始めた切っ掛けは、2人目の子供を産むために聖路加病院に入院した30代半ばのこと。そこで新しいパイプオルガン導入の話を聞き、一念発起してこの楽器をマスター、子供を置いてのヨーロッパ留学など、その苦労談は聴衆のオバン連中には大いに感銘を与えた様で、講座終了後彼女の行うジャズライブに向かった人もかなりいたようだった。

 
3回目は「ぼくのMPB」と言うことで、ぼくの音楽原点とも言えるマイルス=M、タンゴ界の鬼才アストロ・ピアソラ=P、そして楽聖バッハ=B。この3人とジャズと言うテーマで一人語りする予定だった(このMPBとはブラジルのポップ・ミュージック、ムジカ・ポピュレイラ・ブラジレイラの略語)。しかし1回目の講座でマイルスの曲を紹介どれほど知っているか聞いてみたら、なんと僅か2名だけ。これにはがっかりでどうしようかと思っていた所、後藤氏とジャズはやはりライブだと言う話で纏まり、ジャズのライブスポットの愉しみ方の方が...と思い直した。
 そこで我らが新宿「J」の名物マスターバードマン幸田こと幸田稔氏に御登場頂くことにした。昨年暮れに新宿「J」40周年で1時間のジャズ特番をオンエアーした関係などもあり、その時の音源やタモリの「J」への応援・激励メッセージなども織り込みながら、40年を振り返りジャズの愉しさなどを語り合った。幸田氏はアルトサックスも持参、半世紀以上前の大学対抗バンド合戦優勝時早稲田ジャズ研の音源(ラジオ東京)なども披露、講座の最後には持参のアルトで「ラウンド・ミッドナイト」を吹き上げてくれた。学生No1だったころには及びもつかないが、現在の年令を感じさせる、枯れていながらもしみじみとした味わい深いソロ演奏で、オジン・オバンの皆様も大感激。バードマン氏もまんざらでない様子だった。やはり持つべきものは良き友なのである。


 まあこれで3回のジャズトークは無事終了。結構面倒くさいのだがいつもはあまり聞き直すことない名盤・名演の数々を、改めて聞き直しみてやはりジャズは素晴らしきもの、良きもの...だという認識を新たにさせてくれた、ぼくにも実のある講座実施でした。


【今週の番組ゲスト:ギタリスト 井上銘さん】
昨年秋に2枚同時リリースした『MONO LIGHT』『Solo Guitar』から
M1Dan feat.Kento NAGATSUKA
M2Desperado
M3Chega De Saudade
M4Nishinoomote-Kou















3月9日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]

2019.03/08 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.452~山下洋輔健在】

 2月中旬のある夜telがあり「吉田さんと言う人から電話よ...」と家人から告げられる。どこの吉田かな...と訝りながら電話口に出ると「あー小西さん、吉田です。元気でやってます...」と闊達な声が響く。あーあの吉田さんねーと納得。ラジオNIKKEI4代前の社長で、ラジオたんぱからラジオNIKKEIに局名変更した当時の、元気印社長である。

 「小西さん、山下君(洋輔)が階段から転げ落ちた話知っているよね...」「知ってますよ、結構大変だったらしいですね...」「そうらしいね、それが1月末には大分良くなって今はもう大丈夫らしい。そこで彼の全快祝いを半蔵門にあるⅮホテルの中華料理店で28日にやろうと思うんだけど、空いてる?..」手帳を見ると何も予定なし。最近はこうした日が多くこれもチャンジーならではの悪しき特権(?)。「今の所は大丈夫のようですが...」と返すと、「じゃその日に設定しますからよろしく...」とのことで、数年振りの山下氏との会食となった。この夜は山下事務所=ジャムライスの代表、村松氏も同席するとのこと。山下さんが階段から転げ落ちたのは、去年ぼくも行った上野文化会館でのNYトリオによるコンサートの数週間後の話で、関係者もその経過を大分心配していた。
 
 そして当日、定刻少し前に中華料理店に着くと、既に山下、村松両氏と吉田さんも店にいて、すぐに乾杯と言う運びになった。山下さんはこれ一杯で、お酒はドクターストップとのこと。「いやー心配かけてすいません。1週間ほど入院はしたんですが、至って良好。新聞に何かのはずみで載ってしまい、大事になってしまったんですよ...」と語る山下洋輔さんは至って元気で、その健在振りをアピール。確かにいつもの山下氏と少しも変わらず、相変わらず洒脱でダンディーな優男である。

 この山下氏と吉田氏、実は名門私立校、麻生中・高校のなんと同級生。吉田氏もこの学園出身らしく家系も立派な良い所のお坊ちゃんで、彼もダンディーそのもの。それに対しぼくも村松氏も、都会の田舎者と言った感じで大分分が悪い。この夜も飲めない2人を置いて、ビール、紹興酒などを勝手に飲み干す次第。そういえば吉田氏がラジオたんぱの社長になった時(日経新聞本社から移籍)、「山下君はぼくの麻布学園の同級生なんで、何か番組企画出来ないかね...」と相談を受け、まず実現したのが、茅場町にある東京証券取引所でのライブ演奏会。12月30日の取引=大納会が終了し、最後の鐘が鳴り終わると同時に山下トリオの演奏が始まると言う、取引所としては初の試み。企画を持参すると先方の広報も直ぐに了解、実施しようと言うことになったのだが、問題はコンサート型グランドピアノの搬入。あんな重いものを入れると取引所の床が抜けるのでは...、またピアノ搬入で施設の様々を傷つけるのでは...などと難問山積。これらの問題を一つ一つ解決して行き、ライブ実現を成功に導いたのは、ひとえに事務所社長の村松氏と現在「台湾特番」を一緒にやっている、コーディネイター(当時はラジオたんぱ社員)のM女史、この2人の努力の賜物。前日の真夜中に全てのセッティングが終了、どうにかライブ実現まで辿り着いた時の翌朝はかなりな感激だった。当日の山下トリオの爆発具合いももの凄く、今もって結構な語り草になっているとも聞く。初もの好きの山下氏も勿論このイベントには大満足。全てが目出度し々だった。
 そしてその1か月ほど後には、1時間の山下スペシャルトーク番組もスタート。これは山下氏の多彩な人脈を生かした対談番組。初回のゲストが森田一義ことタモリ、その他筒井康隆、赤塚不二夫、坂田明など実に多士済々な面々が登場、知的な面白トークを繰り広げる番組で、ある雑誌の山下洋輔特集号では、綾戸智恵登場の回がそのままその雑誌に収録されたりもしたものだった。


 ところでぼくと山下トリオ(学生時代からファンではあったが...)との縁は40年近く前。当時たんぱの恒例企画だった、3時間になんなんとする正月特番で、タモリや研ナオコなどをメインに様々なゲストが集結する、阿鼻叫喚の面白特番を3年ほど連続でやっていたが、そのとき必ずお呼びしたのが山下さんの激烈・山下トリオ。アルトは坂田明、ドラムは後輩の小山彰太だったはず。タモリの正月特番では、先日軽井沢の陸橋から事故死(?)してしまった、何かとお騒がせな日本舞踊家、花柳幻舟も飛び入りで参加、山下トリオをバックに即興の日本舞踊を披露、実に知的にして破廉恥・馬鹿げた特番で、まあ良くやっていたものでもある。

 
 宴席では山下、吉田両氏と、アワビなどの高級食材をほおばりながら、タモリや高平哲郎、中村誠一などかつてのお仲間の噂話、吉田氏がコーディネイトとした日本人初の北アフリカ、チュニジアジャズ演奏旅行の話等々、1時間半ほど実に愉しい時間を過ごさせてもらった。山下氏の活動再開はどうやら4月下旬ごろからのようだが、自身は実に意気軒高、色々なことをやりたいと語ってくれた。会話の中でラグビーの話も飛び出し、山下氏は結構ラグビーも好き、とのことでそうであれば今年のワールドカップ、全国どこかのラグビースタジアムで、山下洋輔のピアノソロによる、国歌演奏が出来ないものか...などと言う話まで飛び出し、ぼくがラグビー協会にサウンドする羽目になってしまった。果たして神聖なグランドに、ピアノなどを搬入していいものか...。など様々な問題ありだが、一応協会に話はしてみようかな...とも思っています。何せ天下の山下洋輔のお声掛かりなんですから...。

【今週の番組ゲスト:ベーシストの井上陽介さん】
1月リリースの新譜『NEW STORIES』から
M1Stella by Starlight
M2
Love Walked In
M3
The Way You Look Tonight
M4
Teen Town

3月2日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]

2019.03/01 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.451~春が来る】

 3月がスタートした。いよいよ春の到来である。米朝会談決裂、安倍内閣の統計隠蔽などなにかと騒がしい世の中だが、春は確実に訪れるのである。と言ってもこんなチャンジー=爺さんになってしまうと、若い頃に比べ格別この季節良いこともないのだが、何か心が浮き立つのだから不思議なものである。

 
ぼくはいま軽井沢の眼科に3か月に一度通院、老化に伴っての白内障の恐れ...などと女医さんから脅され、手術も勧められているのだが何とか回避。しかし冬の時期に軽井沢迄行くのは大変なのだが、今月末がまたその時期。但しこれもどんどん春めいてくると、感じは大分変って来る。軽井沢の町は通年で定点カメラを設置、町の交通状況や雪の状態がチェック出来て大変に便利、ぼくも時々その定点カメラで北國街道沿いの追分の街の様子を見ているのだが、今年は東京で雪が僅かに積もった時にも、現地はまるでその様子もなく通行も平常、全く信じられない落ち着き具合なのである。こんなならば水止めなどしなければ...、等とも思ってしまうだがそれが素人の浅はかさ。一度気温がグーンと冷え込むとすぐに水道管の破裂などと言う最悪状態に陥り、にっちもさっちも行かなくなる。かつて数度こうした経験があるだけに、水止めだけは厳格にしているのだが、こんな雪も無い状態を見ると、今年は3月末の病院診療の時には管理会社に頼んで水を通してもらい、山荘を使えるようにしてもらおうなどと考えてしまう。そうでないと眼科診療に通うためだけに新幹線代と小諸か佐久のホテル宿泊料がかかってしまい、予想外の出費になってしまうのだ。これはチャンジーの身としてはかなりつらい。しかし確実な事にもう春なのである。

 ところでこの春=スプリングの到来を歌った、ジャズのスタンダードソングはかなり数多く、それも殆どが希望に満ちたもの...と思えばさに非ず。アメリカ北部のNYやボストン、シカゴなどと言ったジャズに関連深い大都市では、春が来ることは間違いなく大きな喜びなのだろうし、その訪れは嬉しいことに違いないのだが...。日本でも春の到来を端的に告げるのは桜の開花。これを歌ったポップスはいずれもが名曲揃いで、かなりなヒットを記録しているのに、ある意味愉しい内容だけではないのと余りか、スタンダードソングも似ている様でもある。


 こうしたスタンダードソングでの春と言えば、まず何を置いても「スプリング・イズ・ヒア」だろう。ジャズピアノの名匠、ビル・エバンス・トリオの『ポートレート・イン・ジャズ』での演奏が秀逸だったが、歌い手ではクリス・コナー、キャロル・スローンと言った名家達の絶唱が印象深い。但しこの歌詞は決して明るい「春礼賛」などと言うものでは無い失恋のトーチソングで、春は来ても恋人がいない為少しも愉しくない...等と歌われている。もう1曲夫婦デュオのジャッキー&ロイやカーメン・マクレー、ダイアン・リーブスなどが唄った「スプリング・キャン・リアリー・ハング・ユー・アップ・ザ・モスト」も似たような失恋ソング。どうやらスタンダードの中で描かれた春は、ある意味結構シビアで余り明るいものとは言えない。
 
一方ジャズメンオリジナルでも、いくつか春がテーマになっており、まず最も有名なのは夭逝した天才トランぺッターのクリフォード・ブラウンの「ジョイ・スプリング」。これはタイトル通り春到来の喜びを爆発させた急速調のナンバー。一方同じトランぺッターで「静かなるブルーの人」等と言った形容句付きで語られることも多いケニー・ドーハム。彼には少し哀愁を帯びた「ブルー・スプリング」と言った佳曲もある。

 
いずれにせよジャズの世界でも、春と言った季節は重要なファクターの一つであることは間違いない。ぼくもロートルとは言え、春=スプリングを目一杯愉しもうと今思っている所なんです。 

【今週の番組ゲスト:3年ぶりのご出演nouon(ノウオン)のヴァイブラフォン&マリンバ奏者の山田あずささんとピアニストのケビン・マキューさん】
2ndアルバム『Flow』から
M1Selectness
M2Pigeons
M3Dicks
M4Kebiman Kebumen

2月23日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]

2019.02/22 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.450~児山紀芳】

先日のこのコラムでも少し紹介したとおり、
ジャズジャーナリストの児山紀芳氏が、2月初旬に亡くなった。もう80才を超えていたはずだが、長年NHKのジャズ番組「ジャズ・トゥナイト」を担当しており、そのパーソナリティー役も昨年ぐらいから降板、大分体の調子を崩しているらしいとの話は聞いていた。そんな折彼が新しいジャズ本「いつもジャズのことばかり考えていた」(白水社)を発表、昨年秋お茶の水「ディスクユニオン・ジャズトウキョウ店」でその出版記念イベントをやっている場に偶然出くわし、久しぶりに短い挨拶を交わした。調子が悪いと聞いていた割には元気そうだったが、やはり昔のような張りには欠けた。「元気にしてる...」と声を掛けられ少し世間話をし、こちらも用事があったのと、彼の方もイベント開始直前だったので、それで別れたがそれが最後だった。

 
児山氏は日本のモダンジャズ全盛時代、70~80年代に当時の中心誌「スイングジャーナル」の編集長としてシーンを牽引していた。我が「テイスト・オブ・ジャズ」で毎月最後に登場、様々なテーマでジャズトークを繰り広げているライターの青木和富氏も、今回彼の想い出を中心に語ってくれており、その中で彼によってジャズライターの道が開けた話を披露している。まあかく言うぼくもそれと同様の一人で、ジャズに関する記事を初めて書いたのはスイングジャーナル誌だった。その後ぼくはライバル誌とも言える「ジャズ・ライフ」の方にレビューなどを描くようになり、余り児山氏との関係は深くなかったが、青木氏は彼との付き合いも長いだけに、今回の放送でも色々なエピソードも紹介してくれている。

 彼は雑誌編集長を2度ほど務め上げた後、今度はレコード業界に転じ、ここでもその広い人脈を生かし様々なジャズアルバムを制作、一方クリフォード・ブラウンやアート・ペッパーなどの未発表音源の発掘作業にも努め、世界中のジャズ関係者から「ボックスマン(一人のプレーヤーのコンプリートボックスアルバムを制作)」としても知られていた。ただレコード会社は小規模な雑誌社などとは違いれっきとした企業、それだけに様々な軋轢などもあり結局は長続きせずに辞めてしまい、以降は物書き、プロデューサーなどとして活動、前者についてはラジオジャズパーソナリティーも行っていたようである。長い編集長生活で培った人脈は実に豊富で、海外の有名ミュージシャン達からの信頼も厚いものがあった。あのアート・ペッパーなどは「マンボ・コヤマ」と言った曲を彼に捧げており、その演奏は番組の中でも青木氏が紹介している筈である。

 
児山さんの編集長時代はジャズ全盛でジャズアルバムがよく売れた時代。元々関西出身で商売上手でもあった彼は「ゴールドディスク」と言う雑誌公認のお墨付きアルバムを毎月世に送り出すことになり、これがまた結構セールスを挙げたので受けに行っていた。しかしこの企画、中には売らんかな...のアルバムも少なくなく正に玉石混交状態。これが彼の評価を貶める大きな一因にもなっていたし、やり手に共通した強引さなどもあり結構色々言われ易い人ではあった。しかしジャーナリストとしてはやはり一流、ジャズ本のタイトルにもある通り、彼にはやはり「ジャズしかなかった」のであり、良い意味でのジャズ馬鹿でもあったのだ。葬儀は野暮用があり参加できなかったが、行った人に聞くとあの彼にしては...と言う感じで、いささか寂しい葬儀のようだったが、プロデュサー、ボックスマン、そしてジャズジャーナリストとしての彼のJ-ジャズに対する貢献度はかなり大きなものだったと思う。冥福を祈る。合掌!

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富氏】
23日に亡くなられた音楽評論家の児山紀芳さんの思い出を語って頂きました。
M1Manbo Koyama / Art Pepper
M22 Degrees East - 3 Degrees West / John Lewis
M3Joy Spring / Clifford Brown & Max Roach
M4St. Thomas / Sonny Rollins

2月16日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]

2019.02/15 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.449~注目のサックス奏者ダニー・マッキャスリン】

 デビッド・ボウイが亡くなったのは3年程前の2016年1月のことで、遺作になった『★(ブラックスター)』は、ロックの殿堂入りを果たしロック界のアイコンとして話題を集め続けた存在のラストアルバムだけに、何かと評判を呼びセールスも良かったと聞く。その『★』で主役のボウイを助ける重要な役割を担ったのが、テナーサックスのダニー・マッキャスリンとドラムのマーク・ジュリアナ、21世紀のジャズシーンを牽引する2人のプレーヤーだった。元々ボウイはジャズとは結構関りも深く(ジャズ好きだと思われる)、かつての大ヒットアルバム『ジギー・スタンダード』(72年)にはジャズプレーヤーも参加、主演映画ではあの巨星ギル・エバンスとも共演したりしていた。それだけにラストアルバムの構想が出来上がりバックメンバーを探すために、現代きっての才媛の作・編曲者&バンドリーダー、マリア・シュナイダーに相談に行ったときに紹介されたのがこの2人。直ぐに彼らを『★』に起用することを決め、ボウイの遺作サウンドはかなりジャズテイストが感じられるものに仕上がった。


 このラストアルバムで一躍世界的にも有名になった2人だが、彼らは17年初めにマッキャスリンをリーダーとするユニットで訪日、東京「ブルーノート」での公演は大反響を呼び、一躍ジャズ界のニュースターとして日本でも注目を集めるようになる。そんな彼らの一人、ダニー・マッキャスリンが2月初めに再度の来日を果たし、またブルーノートのステージに立つと言う。このニュースを聞きつけたのがラジオNIKKEIのボウイ大好き社員で、是非聴きに行きたい...と言うのでブルーノートに付き合うことにした。マッキャスリンの新しいアルバムは『ブロウ』と言うタイトルで、かなりロック色の強いアルバムだが、素晴らしい内容だと彼は言う。まあ余りそちらの色が強いのも...と思ったがいずれにせよ今注目の存在だけに、聴いておくのも決して無駄では無いと考えたのである。

 
今回のステージには、前回共に登場したマーク・ジュリアナ(ds)の姿はなく、彼への期待も大きかっただけにいささか残念な思いもしたが、彼に代わってドラムの椅子に座ったザック・ダンジガーも中々の強者。ロックビートをメインに今風のエキサイティングでエッジの効いたドラミングを展開してくれた。ユニットはロックファンには名前の知られているらしい、ボーカル&ギターのジェフ・テイラーを全面フューチャーしており、オープニングナンバーは完璧にロック色。その上マッキャスリンもボーカルを披露、これはどうなることか...と思っていると、2曲目からは大分趣きが変わって来て、基本ロックテイストではあるが、ハードコアなジャズ的要素も加わり興味深いものになって行く。中でもキーボード奏者が全体のサウンドを作り上げており、誰だろうとチラシを見るとこれがぼくのご贔屓の一人ジェイソン・リンドナー。うかつにも彼がボウイの『★』に参加していたことを忘れていたが、このマッキャスリンのステージでも変則ながら実に印象的なスペーシーサウンドを構築、ステージを盛り上げる。リンドナーと言うピアニスト&キーボード奏者は実に懐の深いプレーヤーで、数年前にはブラジルに移住し現地のミュージシャンと共演した楽園系の素敵なブラジリアンジャズアルバムを発表しており、純生のピアノトリオでも素晴らしい作品を制作する変幻自在な才人。ここでもマッキャスリンを自在・闊達な蠱惑的サウンドで刺激、それに触発されたマッキャスリンも長尺なテナーソロの「ブロウ」を展開、大いに気を吐く。ロック&ジャズの入り混じった刺激的な音空間がステージでは現出され、全体にかなりな興奮度だった。

 
いまジャズは、ピアニスト&プロデューサー、ロバート・グラスパーを筆頭とするアフリカン・アメリカンの中堅から若いプレーヤー達が活躍、ヒップホップなどをベースに彼らの日常~ストリート感覚を生かした新しいジャズを提供、これが大きな潮流として時代をリードしつつある。彼らの音楽は一時余り元気の無かった感もある、アフリカン・アメリカン(黒人)・ジャズの強烈な復権を物語るものだと思うのだが(どうもヒップホップ自体に馴染めないので、その意義は大いに認めるにしろぼく自身は敬遠気味だが...)、これに対してマッキャスリンやジュリアナの音楽(ジャズ)は、ホワイトアメリカン達からのグラスパー一派に対する挑戦状、ないしはアンチテーゼの様にも見て取れる。ここら辺皆様は如何にお考えだろうか...。まあこの双方共そんな意識は余り無いかも知れないが、お互いに切磋琢磨し時に融合・交流を図りながら、21世紀の新たなジャズを構築していくのでは...と、ぼくは今大いに期待している所なのですが...。いずれにせよダニー・マッキャスリンのステージはかなfり愉しませてもらいましたよ。

【今週の番組ゲスト:ジャズクラリネット奏者の谷口英治さん】
4年ぶり、記念すべき10枚目のリーダーアルバム「In A Mellow Tone」から

M1
Begin the Beguine
M2Crazy Rhythm
M3Lil' Darlin
M4Jumpin' at the Woodside
M5In A Mellow Tone


2月9日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]

2019.02/08 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.448~橋本治死す】

 ぼくの様なオールドボーイ=ロートルともなると、周りにはこの所訃報も数多く、余り人の死亡ニュースにも関心が無くなってくる。だがこの人の死亡ニュースには少しばかり驚かされた。作家・エッセイストにして、批評家、思想家とも言えそうな橋本治である。死因は癌ではなく肺炎とのこのようで、かなりな大男だが病には勝てなかったのである。橋本治と言っても今の若い人達は、なにその男...と言った感じで、殆ど名前を聞いたことも見たこともないと言った所だろう。しかし凄い男なのである。日本古来の伝統から流行りのアイドルまで、縦横に語れ視野も広く文明観もしっかり持ち、しかもあのデビュー作の「桃尻娘」に象徴されるようにポップさも兼ね備え、更に言えばセーター編みの大家でもある。そんな彼がいなくなるのは、日本全体にとって大損失なのは間違いない。

 
まあ彼にそんなに入れ込んでいるぼくではあるが、彼と最後に会ったのは今からもう30年以上も前のことで、彼の家(独身の彼は当時確か練馬区住まいだったと思う)迄行って、出演交渉をした時のこと。都会(住宅地)の中でただ一人蟄居生活とでも言えそうな、良く言えばシンプルライフ、実際は何とも侘しい生活、現代の兼好法師と言った趣きさえあったように思う。番組は2時間を超す長尺のライバル対談番組(当時はこんな番組も作らされていた)で、当時話題を集めていた気鋭作家が、橋本相手ならば俺も出演する...と言い出し、それを受けての出演交渉だったが、橋本の方はその作家へ少しも関心が無く交渉結果は見事にバツ、出演拒否されてしまった。
 実は彼に断られたのはこれが2度目だったが、その出演拒否の理由が全く橋本の言うとおりだったのですごすご引き返すしかなかった。最初の出演交渉は彼が未だ東大の学生時代、あの余りにも有名になった東大5月祭のポスター「止めてくれるなおっかさん、背中のイチョウが...」を作った直後、ぼくも入局数年目、若さに任せて頼み込んだのだがこの時もキッパリと拒否、それから10数年たっての再交渉も駄目で、そういう意味では全く仕事をしたこともないし、会ったのも若い頃に数回だけ。伝説の四谷の文壇飲み屋「ホワイト」(ここでは沢山特番を造らせてもらいました)物腰は柔らかいが強烈な印象を残す男の人で、なんとも忘れ難い存在だった。

 
その彼は後年「源氏物語」や「平家物語」、「枕草子」など古典ものの独特な現代語訳で、他を寄せ付けない業績を残してくれたのだが、ぼくが惹かれたのはその小説群。「ツバメが来た日」「蝶のゆくえ」等の短編集。「巡礼」「リア家の人達」などの長編群。どれも一つとしてハズレ作の無い実に読みごたえのある、現代きっての作家だったと思うし、中でも短編の切れ味は抜群で最高の短編作家でもあった。また日本の現状についても厳しい眼差しを向け、鋭い指摘を行っており、その評論集・思想集は分かり易い体裁ながら独特な怒りを発していた。今彼の死によって小説、思想等その作品が読めなくなるのは実に寂しいが、まあそれも全て詮無きことなのである。

 実は彼はぼくの高校の後輩で、ぼくの卒業時に入学と言う感じで学校ではダブってはいないのだが、その豊多摩と言う高校、杉並区の公立進学校で西高に次ぐ存在、東大合格者もそれなりにいた。今は残念ながら大分落ちぶれてしまった様でもあるが、そのつてで出演依頼もした訳だが、あっけなく敗退。以降は無関係だったがぼくは彼の小説・エッセイのかなり熱心なファンの一人。それだけに一度はちゃんと仕事をしてみたかったが...。
 
 
とここ迄橋本治の死亡について書き終えたら、またも二人の死亡ニュースを知らされた。一人は今は亡きジャズ雑誌「スイング・ジャーナル」の名物編集長で未発表音源の発掘などで「ボックス・マン」として世界中のジャズジャーナリストにも知られた児山紀芳氏、スキャンダルゴシップ雑誌と言われながらも、強烈な反骨・反体制精神を貫いた奇跡の雑誌「噂の真相」の名物編集長、岡留安則、奇しくも同じ雑誌編集者の死である。
児山さんについてはジャズトークで青木和富氏も語る筈だし、このコラムでもまた改めて書かせてもらおうと思っている。一方岡留氏の方は享年71才、橋本と同じ年の筈である。雑誌を終刊にしてからは余り噂を耳にしたことも無かったが、昔からお気に入りの沖縄に居を移したようで、その地で亡くなったとのこと。局の後輩でジャズ研の後輩でもあるエルカミナンテ岡本育夫が、彼を使った番組をやっておりそれで知り合ったが、その他にも新宿ゴールデン街の飲み屋でも時々一緒になることもあった。彼もまたすごい漢だった。どんどんそうした好漢がいなくなってしまう。寂しい限りです。

【今週の番組ゲスト:ジャズシンガーの黒木美紀さん、ギタリストでプロデューサーの三好'三吉'功郎さん】
黒木さんのデビューアルバム「Leaf of Glass」から
M1
How high the moon
M2
「リン。」
M3
One note samba
M4
Leaf of Glass
M5
「"Hiya-jill" for two

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パーソナリティ

山本 郁
やまもと かおる

新潟テレビ21アナウンサー・ラジオNIKKEI契約アナウンサーを経てフリーに。
ニッポン放送では『高嶋ひでたけのお早う!中年探偵団』最後のアシスタントをつとめた。
ラジオNIKKEI『聴く日経』、『テイスト・オブ・ジャズ』のパーソナリティー等。

新しい一週間の始まりにお耳にかかれて光栄です!!
今聴いて下さっている“あなた”をマイクの向こうに意識して価値ある情報を、正確に分かり易くお伝えします。

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