番組紹介

ラジオNIKKEI第1 毎週土曜日 18:00~18:30 ほか

55年超の歴史を有する、民放ラジオ最長寿級のジャズ番組。進行役は、フリーアナウンサーの山本郁。毎回ミュージシャン、シンガー、ジャズ関係者などをスタジオに招き、そのゲストにゆかりの曲をかけてジャズ・トークをお届けします。

新着記事

5月18日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]

2019.05/17 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.462~市原ひかりのボーカル作】 

 
 平成最後のこのコラムで、ぼくは「平成とジャズ」等と言う大層なテーマで書いてみたのだが、その最後でこれからのジャズ(令和のジャズ)に結構期待している...とも書き加えた。ただ一つそこで忘れていたことがある。それはこれからのジャズの領域では、ボーカルがかなり重要な意味を持って来るのでは...と言うこと。このボーカルとは、所謂ジャズボーカルだけでなく、ラップなどもその中に含まれる訳だが、これ等広範囲のボーカルの持つポップス性が、これからのジャズにとって意味合いを増す...と言う風に思えてならない。ジャズの本来持つポップス性、エンタメ性を色濃く彩るのがボーカルだと思うからこそ、ぼくは現代のボーカルにもっと注目して欲しいと思っているのだが...。

 まあこの問題は何時かもう少し詳しく書きたいと思うが、まず今回どうしてボーカルを...と言うと、今回の番組ゲストが素敵なボーカルアルバムを出しからに他ならない。市原ひかり、若手女流トランぺッターとして実力・人気共に、抜群の存在として知られる彼女。そのひかりんの父親は人気ジャズドラマーの市原康で、我が早稲田ジャズ研の後輩でもある名手。そんな関係で彼女のことを知ったと言うよりも、デビューアルバムを出す直前に色々話していたら、市原康の娘だと分かり、いよいよ彼女への関心が高まったと言うことなのだが、それ以来新作を出すとスタジオに遊びに来てもらうことも多く、その成長振りを目の当たりにしてきた訳なのである。そんな彼女が最近はステージでボーカルを披露することも多いと聞いており、スタジオでもボーカルのアルバムでも...等と希望を語っていたのだが、それがまさか実現するとはいささか驚きでもあった。

 数年前にアメリカのジャズミュージシャンと結婚した彼女、デビュー当時の可憐な可愛らしさからピンクの髪に染めたいささかパンク風の尖がったファッションの女性に変身。その彼女に唄うことを勧めたのはあの日野ちゃん(日野皓正)だと言うが、彼のアドバイスに従って本格的にボイストレーニングなどに励み、ライブでの反響の良さ等も相俟って、担当ディレクターが今回ジャズボーカルアルバムを出すことを決めたと言う次第。これが想像以上に素晴らしいアルバムで、これからのジャズボーカルの進む方向の一指針(いささかオーバーだが...)にもなりそうな予感すらある。アルバムタイトルは『シングス&プレイズ』で、彼女も敬愛するあの唄うトランぺッター、チェット・ベイカーのものと同じ。かなりチェットを意識した所もあるが実に軽やかで明快、モダンなセンスに溢れた好ボーカル作品なのである。


 いまジャズアルバムは売れないし、余り発売もされないのだが、ことボーカルに関しては結構な賑わい。と言うのも自分探しなどと言うことで、OL達が通うジャズボーカル教室も結構お盛んな様子。そこの卒業生達でボーカリスト予備軍もかなりな数になっており、そうした女性たちが名刺代わりにアルバムを出すことも多く、結構な賑わいになっているのだ。しかしこうしたアルバムはスタンダードソングの数々を、レッスンで受けたボーカル術を踏襲、自身の思うジャズボーカルの枠組みに押し込んだものばかり。

 
 ひかりちゃんのアルバムにはそうしたくだらない枠を取り払い、自在に自身の歌いたいものを歌った...と言う、自由な感情・感覚に溢れており、極めてモダンでありジャージー、そしてポップでもあると言った具合に何とも言えない心地良さなのである。今回スタジオに来てくれた彼女、アルバムジャケットも自身のペンで自身の顔をシンプルに描き出し、選曲などにも心したなど...と、全て手作りだと嬉しそうに語ってくれたが、この自由な感性を何時までも保ち続けて欲しいもの。こうした自由なボーカルが、ジャズのこれからの未来を形作っていくのでは...と思わされる、ロサンジェルス録音の好作品でした。

【今週の番組ゲスト:ジャズトランぺッターでジャズヴォーカリストの市原ひかりさん】
先月、リーダーとして9枚目、ヴォーカリストとしては初めてのアルバム『SINGS & PLAYS』をリリースされました
M1
My Funny Valentine
M2How My Heart Sings
M3Be Bop Lives
M4But Beautiful
 


          

5月11日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]

2019.05/10 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.461~平成から令和へのGW】

 平成から新元号の令和へと変わった、この4月末から5月初めにかけての10連休にも及ぶ長いGW、ぼくはこの間のほとんどを追分の山荘で過ごした。中2日半ほどは東京に戻り病院通いをしたのだが、どうもこうチャンジー(ロートル)になると、年齢のせいか体のそこここが時々不調になってしまう。今回は4月の頭に、突然胃から腰の辺りに痛みが走り、数日後に立川の大病院へ。すると総合内科に回され、出てきた医師がジャズでいう所のトラ(臨時雇い)のような若い医師。人柄は良さそうなのだが何とも頼りなく、こちらが質問しても上の空の感じ。1週間後再診察でも痛みは引かないので訴えると、ようやく「ではCT検査を...」と言い、それも5月の半ばにならないと...などと宣まうのだ。まあ運が悪く困った医師に遭遇...などと諦めていたのだが、痛みは引かない。そこで思い切って地元国立の病院にセカンドオピニオンを求めに行くと、直ぐにその場でCT検査を実施、一応何事も無い(結石はあるが...)との回答。再度痛みがあれば...と言うことで、GWのど真ん中に上京、診察を受ける羽目に...。だが実態は良く判らず、院長が言うには消化器関連の病気ではない様だとのこと。はなはだ心もとないのだが、消化器関連でないと聞いて一応一安心。そうなるとどうやら長い痛みも徐々に解消した感じあり。そんなこんなでGWをやり過ごした次第で、いささかトホホな事態だった。それにしても依然として不安と心配は残っており、厄介な元号跨ぎだった。
 

 まあそんな状況なので、いつもならば早朝御影用水脇から越生学園グランドなどを通って帰宅と言う1時間を超す「速歩ウオーキング」を行うのだが、今回ばかりはそんな気持ちにもなれず、もっぱら読書と音楽(ジャズ&クラシック)鑑賞に温泉三昧。上田市郊外の「ささらの湯」に、糖尿病に効く飲用温泉水を汲みに走り、小諸の布引観音(牛に惹かれて善光寺参りの観音)温泉では早朝入浴等々、追分周辺の東信の温泉を回った。どこの温泉に入っても心身の痛みが取れるようで、やはり温泉最高と言った気分。流石に草津や万座迄は足を伸ばせなかったが、どうやら不安と心配も、この温泉巡りでいささか軽減された感じだった。

 ジャズCDの方は、鑑賞と言うよりももっぱら整理の方に時間がかかり、こんなに所持していても...と思うのだが、いざ整理を始めると貧乏性と言うか思い切って処分できない、ダメな性格なのである。しかしこの整理も仲々に愉しいもので、今まで見向きもしなかったアルバムをなんとなく聞き直してみると、これが意外な拾い物...などと言うのも時々出てきて、また何とも嬉しいもの。今回面白かったのは『伝説のブギウギ・ピアノ』と言うコンピアルバム。ジャズの原型の一つともされるブギウギ(ピアノ)を30曲近く集めたアルバムで、「ブギ第1号」ともされるパイン・トップ・スミスの「パイン・トップス・ブギ」やカウ・カウ・ダベンポート、モンタナ・テイラーなど未知のピアニストばかりだが、その威勢の良さには感嘆しきりだった。まあどうしてこんなアルバムを聴こうかと思ったかと言うと、整理の途中に何気なく目にしたこのアルバム、もしかしたらカンサスシティーの大物、ジェイ・マクシャンのピアノも入っているのか...とみると、1曲あるではないか。マクシャンは先日アルバムのライナーを頼まれ必死で資料を探していた人物。それが追分の山荘に埋もれていたとは...。まあこのマクシャン(モダンジャズの開祖、チャーリー・パーカーを見い出した偉人)の1曲に惹かれ、全30曲余り(殆どが30~40年代の録音音源)を聞き通してしまったのだが、ジャズだけでなくR&Bやロックにも大きな影響を、この音楽が与えていることが良く理解できるもので、実に威勢の良い興味深いコンピ作だった。こうした掘り出し物があるから、やはりCD整理作業はやめられないのだ。

 
 読書では軽井沢、御代田の図書館で10数冊ほど借りまくり読みふけった。中でも興味深かったのは軽井沢在住の直木賞作家、藤田宣水のセミハードボイルド小説「老猿」。舞台が軽井沢の中軽の別荘地だけに、小説としての出来栄えは今一つだが、地域柄その設定にも興味深いものがありそれなりに愉しめた。もう一つの拾い物はドリアン助川の「あん」。樹木希林の映画でも評判になった(見落としてしまった)小説だが、ハンセン病と言う重いテーマを扱いながら、心温まるストーリーに仕上げており、実に後味の良い泣ける小説だった。昔は児童ものの出版社と言うイメージのポプラ社だったが、ここ数年様子一変といった感じで、意欲的な作品を次々世に送り出しており、「あん」はその代表作の一つ。是非ヴィデオで映画の方も見ようと思った程の逸品だった。音楽書では菊池成孔&大谷能生コンビによる「アフロ・ディズニー」が予想通り面白かった。中々に難しい内容の大学でのジャズ講義録だが、流石理論家の2人だけに興味深いもの。菊池はサックス吹きとしては余りその力量は評価出来ないのだが(自身のバンドや山下洋輔などとも共演)、こうしたジャズ理論書や講義本では、他に追随を許さない素晴らしさ。理論と実際、そしてその乖離、そこら辺が世の中とは中々に面白いもの。あの文春から出された一冊で、難しいが一読に値するジャズ本です。

【今週の番組ゲスト:ジャズヴァイオリニストの里見紀子さん】
1stアルバム「Project-N
2ndアルバム「A Love Supreme」から

M1A Love Supreme, Part 1 承認」
M2A Love Supreme, Part 2決意」
M3Red Light, Green Light〜だるまさんがころんだ〜」
M4Danny Boy


5月4日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]

2019.05/03 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.460~ゴダール】

 この前「グッバイ・ゴダール」というヴィデオをレンタルショップで借りて見てみた。ゴダールとは言うまでもなくかつてぼく等の敬愛するアイドルでもあった「ヌーベルバーグ」の代表格、鬼才監督のジャン・リュック・ゴダールのこと。映画は彼と2番目のかみさん、と言っても当時はまだ大学生だったアンヌ・ビアゼムスキーとの1年間の新婚生活を、アンヌの視点から捉えたある種コミカルな恋愛ムービーとも言える趣向のもの。ただ対象がゴダールだけにだてにコミカルな内容とは言えないが、何か可笑し味がある不思議な味わいの作品だった。
 原作はアンヌ・ビアゼムスキー自身で、彼女はゴダールの「中国女」等で主演を務め、彼と別れてからも映画女優として活躍、後年は作家として名を挙げゴダールとの関わりを描いた小説も評判を呼んだはずである。この映画は価値紊乱の時代とも言えるあの騒乱の60年代後半、カルチェラタンなどで学生デモが頻発していた時代を軽やかに描いており、そこら辺も中々に面白いのだが、ゴダールも良く言われる難渋な気難し屋ではなく、恋人へ嫉妬深い面も見せるある種、市井の一知識人として描かれている等、あの時代の様相、風俗なども強く思い出され、映画の出来栄えはイマイチだが中々に興味深い作品だった。


 ところで「ヌーベルバーグ」と言っても、今の若い人達にはなんじゃそりゃ...等と言われるかも知れないが、ヌーベルバーグとは60年代に起きたその名の通り仏映画の「新しい波」の意味合い。その手法・姿勢などは以降の映画作りに画期的な影響を与えた運動体である。当時は映画(アート作品)全盛の時代で、「アートシアター」などと呼ばれる芸術作品上映映画館も新宿・渋谷などに数多く存在、多くの若い人たちを熱狂させたものだった。その若手の中心監督メンバーがジャン・リュック・ゴダールだったのだが、その彼も今年でもう88才。新作「イメージの本」が現在も公開中だし、次作は「シナリオ」に決まっており、もう撮り始めているとも言われる。フランソワ・トリフォー、アニュエス・バルダ、アラン・シャブローなど、かつてのヌーベルバーグの仲間達も次々に亡くなってしまった中、唯一孤軍奮闘している様でその意欲には本当に感嘆させられる。但しぼく個人は「中国女」以降の彼には殆ど関心が無くなってしまい、70年代半ば以降の彼の作品は殆ど見ていないのは、大いに反省すべき所。

 まあ彼の新作は別として、久しぶりに彼の作品を...と思って、家に積んどく状態だった彼のデビュー作「勝手にしやがれ」を見直すことにした。脚本はヌーベルバーグの僚友、フランソワ・トリフォーで、「シナリオ」の重要性を説くゴダールとしては、この作品はトリフォーのものとも語ってている様だが、やはり映画作りとしては画期的な作品で、カットバックやスピード感ある編集作業など、ゴダールの監督としての才能の豊かさには改めて驚かされるし、作品自体は今尚少しも新鮮さを失っていない。モダンジャズが単なるポップスから、芸術性も兼ね備えたポップ音楽として認識される様になった一つの要素に、ヌーベルバーグの監督達の作品のバックに使用されたことが大きく関わっているとぼくは考えているのだが、このゴダールのデビュー作「勝手にしやがれ」もやはりバック音楽はモダンジャズが使われており、これまでは余り印象に無かったのだが、今回見直して改めてジャズが結構効果的に使われている点に気付かされジャの効用を再認識したものだった。

 主役はぼくのご贔屓、ジャン・ポール・ベルモンドと可憐なハリウッド女優ジーン・セバーグの素敵なコンビ。やくざな犯罪者とパリ留学中のアメルカ女子大生との「勝手にしやがれ」な軽やかにスピーディーに弾け廻くる犯罪・恋愛ムービーで、その無軌道振りも当時大きな注目を集めた一因だろう。ただ当時の切迫した世相にあって何かのんびりとして場当たり的な雰囲気が強いのも面白く、ベルモンドは遊び人ながらカンヌからパリに迎かう道中で、心ならずも警官殺しを行ってしまうれっきとした犯罪者。パリでは遊びながら逃げ廻るのだがそれがちっともせっぱ詰まっておらず、警察の追及もお粗末の一言。今ならばコミックとしても成り立たない様な設定なのだが、これが不思議に生き生きとしており笑わされる。最後はジーン・セバーグが警察に彼の存在を密告し、ベルモンドは刑事に撃たれ街中を逃げ回り無残に死亡すると言う有名な長カットで終わる訳だが、その悲惨なカットも何かコミカルに写ってしまう辺りも半世紀ほどの時代の大いなる差なのか...。色々と考えさせられる映画史に残る銘品でした。ゴダールの「勝手にしやがれ」皆様も是非一度ご覧になってみては...。

【今週の番組ゲスト:クロマチックハーモニカ奏者の山下怜さん】

アルバム「Dear Darling」から
M1「When I Fall in Love」
M2「Tango pour Claude」
M3「Made in France」
M4「ひまわり」




     

4月27日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]

2019.04/26 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.459~平成ジャズ】                                      

 どんどん時代の閉塞・劣化状況が顕著になってきた感も強かった「平成」。それがいよいよ終焉を迎え、今度は「令和」と言う如何にも国家・権力統制を強める年号に代わるのだと言う。バブル崩壊後ずぶずぶと悪化の方向に落ち込んだ平成。それが数日後には終わり新元号に...、もう何をか況や...なのであるが、我がジャズ番組「テイスト・オブ・ジャズ」も今回が平成最後の放送。そこで毎月レギュラー登場のジャズ評論家、青木和富氏にお願いし、まあ如何にもベタな企画と言われそうだが、平成のジャズと言うテーマで時代を再検証してみようと言うことに決めた。青木氏がこの平成のジャズについて、どんなアルバムを選出し(別項参照)、どんな判定を示すのかは番組をお聴き頂きたい。

 と言うことでここでは、ぼく自身の平成ジャズ観~この30年余りのジャズ状況についてほんの少しばかり記してみたい。平成がスタートしたのは1989年。ベルリンの壁が崩壊、米ソ2大強国体制による冷戦構造、即ち社会主義=コミニズムの溶解が始まった年であり、国内的には日経平均株価が最高値を記録、バブル好景気を謳歌していた時代でもあった。音楽界としては昭和歌謡の女王、美空ひばりが亡くなったのがこの年最大の事件だったと思う。そして日本は2年後にバブル崩壊、以降はどんどんと奈落に落ち込んでいき、遂には安倍氏の登場により国内格差や差別なども頂点に達し、政治の無責任・貧困状況も極限と言う、まさに悪しきサイクルに落ち込んでしまっている...、とぼくはこの平成を見立てているのだが...。


 そして肝心のジャズだが、90年代以降のジャズは何か日本のこの悪しき状況とも通底し、中核が見えず活力も失くしてしまった感も強い。確かにこの平成、モダンジャズを推進してきた大物たちは次々とこの世を去ってしまい、今やソニー・ロリンズ、ウエイン・ショーター、リー・コニッツなどほんの数人の大看板しか残っていない。パット・メセニー、ウイントン・マルサリス、ジョシア・レッドマン、カサンドラ・ウイルソン等々、大物に代わる時代を担うプレーヤー、シンガーを何人かは輩出していても、当然のこととしてそうはいない。ジャズ100年以上の歴史の中で、全盛期の消えゆく残り香の時代が平成だったとも言えそうである。まあしかし平成とジャズなどは元々無関係なものだから、それも仕方ない所。
 ただ一時日本のジャズ=J―ジャズを元気づけていた感のあるジャズフェス。ニューポートフェス&ブルーノートフェスの国内版や斑尾ジャズフェスなど、大型ジャズイベントはことごとく頓挫、それに変わってフジロックなどの国内ロックフェスが台頭、それ等は今なお盛大に開催されている。これにはジャズ自体の衰退傾向も大きいが、ジャズイベントに関わっていた連中の商売根性、ジャズイベントを実施する時点で収益をトントンにする(=大手代理店と組みクライアントを捉まえ、その中身などには余り関心を向けない等々...)と言った考え方が、イベンターやジャズ関係者などに蔓延していたように思えてならないのは、今からすれば大変に残念なことと言わざるを得ない。

 加えて
これもわが国で顕著な傾向だが、マイルスやコルトレーン、ロリンズと言った時代を牽引していた、サックス&トランペットなどの、華々しくも雄々しい管楽器奏者のプレーから、平成に入ると殆どがピアニスト~それもピアノトリオの演奏にしかファンの関心が向かなくなってしまった(一部のジャズライターのせいもあるか...)ことも、ある種の停滞を生んだ要因ではないかとも思われる。確かにビル・エバンス、キース・ジャレット、そしてブラッド・メルドーなど時代を担ってきたピアニスト達の、この30年近い間に果たした貢献度は大きい。しかし々である、余りにも予定調和の感も強いピアノだけに、スポットが当たり過ぎな感は否めないし、これ等のピアニストは全て白人ばかり。それだけにジャズの漂白化傾向(?)が平成の時代は強まって来たとも言えそうだし、それに対し、ジャズを本源的に担う黒の復権が臨まれて来た...とも言えるかもしれない。
 元々ジャズと言う音楽は雑種性で、ラテン、ロック、クラシック等様々な音楽から活力を取り込み、自身の存命を図りつつワールドミュージックとしての色彩も強めて来たのだが、その導入力にいささかさび付きが生じて来つつあるとも言えそうだ。

 
そして来る「令和」。当然のことながらジャズとは直接の関係は無いのだが、この時代にまた新たな歴史が再構築されつつある様な予感は確実にしている。カマシ・ワシントンを筆頭にした黒人色を強く打ち出すプレーヤー達の台頭、イギリスの新たな波とも言える、シャバカ・ハッチングスなどアフリカ系移民の子弟群、そしてアクセル・トスカなど、ぼくの大好きなラテンジャズを始めとした、世界各地のワールドミュージック系ジャズプレーヤーの新星達。こうした彼らがこれまでのジャズの歴史とは、一寸異なった絵図をこれから描き出してくれそうな感もある。チャンジー(ロートル)のぼくにそれを見続けることが出来るかは色々と疑問ではあるが、出来るだけ観察は続けていくつもりです。よろしく!

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん
「平成のジャズ」というテーマでお話し頂きました。
M1The Doo-Bop Song / Miles Davis
M2Bye Bye Blackbird / Keith Jarrett
M3Spiral / Hiromi Uehara
M4Lifeline / Vijay Iyer & Craig Taborn
M5Don't Know Why / Norah Jones
M6Some Enchanted Evening / Sonny Rollins

4月20日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]

2019.04/19 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.458~レディー・パルミエリ】

  先日久し振りに「ブルーノート東京」に行ってきた。ラテンジャズ~サルサの大御所、エディー・パルミエリ楽団のライブを聴くためである。確か2年ほど前、やはりブルーノート東京で行われた来日コンサートも聴いているのだが、何回聴いても堪えられない程の凄さ・快感、今回もまた十二分に堪能し愉しませてもらった。エディー御大は現在なんと83才。昨年にはカルロス・サンタナも参加した『フル・サークル』など2作品を同時発表、年令を少しも感じさせない意気軒高振り。今回も又依然としてバイタリティー溢れるステージ振りで、ラテンピアノの象徴として強烈な存在感を印象付けてくれた。

 
今回の来日公演は4人のホーン陣を加えた11人編成のサルサ・オルケスタによるもので、ハーマン・オリベイラのボーカルを中心(もう一人のボーカルはギターに似た楽器、トレスの名人でもあるネルソン・ゴンザレス)にした編成なので、「サルサ・オルケスタ」と言う名称になっているが、ボーカルがメインで無い場合には「パルミエリ・ラテンジャズオーケストラ」となったはず。すなわちこれはあくまでもぼくの解釈なのだが、サルサとラテンジャズの大まかな相違は、ボーカルがそのバンドの主体かどうかという点だと思う。そして今回はボーカルメインと言うことで「パルミエリ・サルサ・オルケスタ」なのだが、サルサでもラテンジャズでもその凄味・興奮度には少しの違いもない。
 
 今回の来日メンバーはキューバからの面々も加えており、御大以外にはトレスのネルソン・ゴンザレスやトロンボーンのジミー・ボッシュ、ベースのルベーン・ゴンザレスなど、ぼくが知るプレーヤーはそう多くはないが、その他のティンバレス、ボンゴ、コンガなとと言ったパーカッション陣も強者揃いだし、ソロを取るトランペット(ジョナサン・パウエル)も実に強力で、流石サルサ~ラテンジャズ界の大御所バンドに相応しい実力者ばかりの陣容。特にキューバから抜擢された面々の張り切り様はけだし聞き物でもあった。
 ステージはまず御大のソロピアノからスタート。亡妻に捧げたナンバーと言うことでラテンピアノの定石を踏まえたバラード演奏ながらも、途中から御大ならではの豪快にして奔放、フリージャズにも通じる大胆な崩しを織り込んだ圧巻のソロプレー。これで観客のハートをがっちりと掴みとり、自身のオルケスタの歌と演奏になだれ込む...と言った心憎い演出で、エンターテイナーとしても抜群のセンスの持ち主であることを証明してくれた。彼の凄い所は手癖中心だったラテンピアノの世界に、革命的とも言える大胆な解釈を付け加えたこと。これによりラテンピアノの世界は大きな拡がりを獲得することが出来たのだった。更にこのソロピアノに続く、オルケスタによる狂乱とも呼べそうな悦楽の歌と演奏の祭典。御大も「チャ・チャ・チャラ...」と言ったラテンならではの変則手拍子を客に要求、場をグーンと盛り上げていく。

 
興奮・興奮の1時間余りはあっという間に過ぎ去っていき、余りの盛り上がりにアンコールを期待する拍手鳴りやまぬ中、御大は静かにステージを下りる。83才に余り過酷なアンコールを期待しても...と言うファンの労わりもあって、ステージは無事円満終了。愉しみと興奮のひと時は幕を下ろした。また来年あるいは再来年にも、彼及びそのオルケスタの元気な姿を見れそうな気もするのだが...、それはまあ何とも言えませんね。頑張れエディー、ファンは期待していますよ。

【今週の番組ゲスト:島村楽器 音響企画課の頼久生さん】
島村楽器音楽教室の音楽発表会「SWING DREAM」が2月にビルボードライブ大阪で、3月にブルーノート東京で開催されました。ジャズを聴くだけでなく、演奏する側に回る楽しみについてお話し頂きました。
M1It Don't Mean A Thing
M2Bibbidi-Bobbidi-Boo
M3Limehouse Blues / Cannonball Adderley Quintet in Chicago
M4Heyoke  / KENNY WHEELER」」
M5Fantasy in D / Cedar Walton

4月13日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]

2019.04/12 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.457~ショーケン死す】

 
希代のモテ男にしてモメ男でもあったショーケンこと萩原健一があっけなく(?)死んでしまった。それも10万人に1人と言う難病だったとのこと。彼はぼくより5つほど年下だが、その生き様~人生航路は正に「月とすっぽん」か「天国と地獄」程の違いがあったと思う。彼との番組での触れ合い=交錯はわずか2回ほど。その上彼の最初期のキャリアであるGS「テンプターズ」などは殆ど聞いたこともなかったし、代表作と言われる「太陽にほえろ」等も見たことも無かった。まあ言ってみればかなり無縁な人なのだし、好きな無頼派の役者・歌手の一人ながらショーケン自体は余り好きだとも言えない存在だった。ではなぜここで...となるのだが、彼とのわずか2度ほどの触れ合い(直接ではなく彼の廻りの状況=端的に言えば関わりある女性への思い)がかなり強烈だったと言うことに他ならない。良く知られる様に彼は3度の離婚と4度の逮捕、正に希代のモテ男にしてモメ男。ワルぶっていると言うよりもワルそのものだったのである。それだけに並み居る女優たちがタイトロープを悠然と歩き続ける、その一寸可愛げを伴った(ヤンチャとも言える)に強烈に惹かれてしまったのだと思う。

 その触れ合った2回とは、最初が日本歌謡史に燦然と輝く女王~美空ひばりの(確か)正月特番であった。これは先輩の篠田さんと言うディレクター担当のもので、彼は野球ディレクターとして有名な相撲取りにも似た巨漢。立川談志や三遊亭円楽など落語界にも滅法強く(円楽の家での麻雀大会にも良く付き合わされた)、芸能界にも顔が利くと言う短波には特異な存在。そのツテでひばりを呼んで来れたのだろうが、番組では直接のお声掛かりでお前も共同ディレクターをやれと言うことになった。スタジオには2卵性親子などとも揶揄された、有名なステージママのお袋さん、そして彼女おつきの御用ライターなどが揃い、メインのお嬢(美空ひばりの愛称)を囲み中々緊張の布陣。1時間の番組はひばりの一人語りがメインだが、ひばりのお気に入りのゲストを一人招こうと言うことになって、そのゲストこそ美空(本名加藤)親子が大好きだと言うショーケンだったのである。
 スタジオに来た彼は、相手が天下無双のお嬢親子だけにいささか緊張気味だったが、そこは流石に無頼派気取りの輩だけに、適当に奔放さも演出、「役者やのう...」と言った感じで巧く親子を乗せる。番組は先輩の篠田デレクターがメインだけに、ぼくは食事の用意や電話取りなど色々周辺をフォロー、その収録最中何かの用事で廊下に出てみると、何やら壁際に顔を隠した感じで佇んでいる綺麗な女性がいる。どこかで見たことがと思いきや...、なんとこれがお騒がせ女優としても知られた桃井かおり。今や伝説になってしまった銘店「ホワイト」の常連で、店でも良く一緒になったこともあったので彼女に声をかけると、当時誰も知らなかったのだがどうやらショーケンと付き合っており、彼に誘われ収録現場に来たとのことのようだった。だがそこは天下の大スター美空親子の前には顔を出しずらい...、と言うことで収録が終わるまでの間、廊下に一人淋しく佇んでいたと言う次第。あのかおりを一人で待たせるとは...とショーケンと言う男の魅力、傲慢さなどを改めて思い知らされたものだった。かおりもまた日頃のツッパリさも無くおとなしく待っているのだ。「ショーケン流石色男やのう...」と言う感じで、改めて恐れ入った。


 そしてもう一度恐れ入ったのが、世界的なバイオリン奏者にして天下の美形、前橋汀子さんのインタビューでの場面。確か青山の喫茶店で30分位のものだったが、この知的で有名なバイオリン奏者(白系ロシア人の血が混じっているクオーターで、その余りの美貌に文化人のファンも多数だった)が当時付き合っていたのがやはりショーケン。世界的なバイオリン奏者迄...といささか憎い思いもしたのだが、そのインタビューの席には同席はしていなかったが彼の存在は大きく、どうも終了後は2人待ち合わせをしている気配で、心もそぞろと言った感じ。肝心のインタビューもそこそこに迎えに来たショーケンと帰ってしまった(筈)だが、以前の桃井かおりの件もあるだけに、その凄まじい迄のモテ具合、羨ましいを通り越し、ある種何んとも言い難い感慨を抱いたものだった。

 
 現在ピエール瀧、新井浩文などが事件を起こし、猛烈パッシングを受けその出演作、アルバムなどが販売中止を余儀なくされていることを考えれば、つくづくショーケンは幸運な俳優・歌手、そして紛れもなく激動で奔放・闊達だった昭和の漢で、制約だけ強い平成では決して許されず、もし今だったらば彼の存在は、間違いなく世間に抹殺されていたに違いない。げに時代の趨勢とは恐ろしいものだし、ショーケンと言う男は実に恵まれた男だったとも言える。
 
それにしても自らを振り返り「ジェットコースター人生から今はメリーゴーラウンドの生活...」とは良く言ったものである。

【今週の番組ゲスト:ピアニストのジョナサン・カッツさん】
リーダーを務めるでTOKYO BIG BAND 1stアルバム「SAKURA」から
M1Sakura Sakura
M2Hamabe no Uta
M3Aka Tombo
M4Umi









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パーソナリティ

山本 郁
やまもと かおる

新潟テレビ21アナウンサー・ラジオNIKKEI契約アナウンサーを経てフリーに。
ニッポン放送では『高嶋ひでたけのお早う!中年探偵団』最後のアシスタントをつとめた。
ラジオNIKKEI『聴く日経』、『テイスト・オブ・ジャズ』のパーソナリティー等。

新しい一週間の始まりにお耳にかかれて光栄です!!
今聴いて下さっている“あなた”をマイクの向こうに意識して価値ある情報を、正確に分かり易くお伝えします。

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