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テイスト・オブ・ジャズ

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テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.620~タモリ・ステーション~】

 朝新聞を見るとテレビ朝日の特番で「タモリ・ステーション」とあり、ウクライナ問題を取りあげるとのこと。タモリこと森田一義氏がウクライナ危機について語るとは...意外な感もあったが、これは是非見ないと...と愉しみにしていた。確かこのスペシャル企画は、以前に大谷選手を取り上げ王さんなども登場していた筈(未見)だと思ったが...。今回はもろウクライナ侵攻について取り上げるものである。そう言えばこのコロナ禍だけに、早大ジャズ研の集まりもこの2年間ほどやれていなくて、タモリこと森田氏にも出会っていない。OB会の集りで等で会っても、彼とは挨拶を交わすぐらいで、話す機会もほとんど無くなってしまった。じっくりと話をしたのは2年ほど前、ジャズ特番のインタビューが終わった時の事。特に今はコロナ禍、今年は集まりをやろう...と言う話もあるのだが実際どうなるか...。そんな折だけにじっくりと彼の意見を、それもこの難しい局面についてどんな風に彼が語るのか...、興味津々でもあった。

 さてその放送当日夜、少し開始時間が過ぎてしまったがTVと向かい合う。画面を付けるとウクライナの惨状が映し出され、報道ステーションの大越健介キャスターがウクライナとポーランドの国境近くでレポートをしており、画面がスタジオに切り替わると中央にタモリが鎮座、その脇にいるのが大下容子アナと報ステの小浜アナ、更に識者が2人ほどいて、大下アナの質問に応えている。しかしタモリにしゃべりを振ることは無く、彼もじっと座って全体の進行を眺めているだけ。どこで彼に話を振るのかと思いきや、オーラスで彼に感想を求め、タモリも一言「今この時間でも戦争で人が殺されているんです、平和が何より大事ですよね...」と語り、全体を締めて特番は終了する。番組を通しての彼の様子は、異様でもあり結構緊張感あるものだった。タモリこと森田一義氏の意見を...と思ったぼくや番組視聴者は、完全に肩透かしを食らった感じも強かった。
 当初は何だこの番組...とも思ったのだが、時間が経つにつれこれはこれでありなのか...とも思い直した。ある意味彼は完全に番組全体を通して沈黙を貫き通し、最後に一言発することにより、この悲惨な戦争への彼なりの見解や抗議を表明したのかも知れない...。まあ番組制作の真相は分からないが、制作陣も思い切った番組構成と進行を図ったものである。しゃべりすぎ気味のキャスター陣が多いTV番組で、自身の意見を述べるのでは無い、異色の立位置を取る森田一義キャスター。北野武先生ではこうはならない筈で、やはり流石にタモリらしいなとも思った。

 この「タモリ・ステーション」での森田一義氏を見ていたら、あの中野の宝仙寺で行われた赤塚不二夫氏の葬儀での彼の追悼の詞を、なんとなく思い出してしまった。ぼくもこの葬儀結構前の方の席にいたのだが、おもむろにその懐から取り出した追悼文、そこには実際に何も書かれていなかった(?)のだが、それを読み上げる風を装いながら、アドリブで完璧に不二夫ちゃんへの想いを語り尽くす...。見事な話芸で彼の真骨頂をそこに見たのだが、今回のスタジオでも微動だにせず2時間近くを黙り通す。喋れば喋ることは幾らでもあった筈だが、そこは流石に千両役者である。改めて感心した。

 昔人気番組「笑っていいとも」で、明石家さんまとコーナーを一緒にやっていた頃、さんまの家でパーティーがあり、当時の吉本の若手芸人が数多く集まっていたなか、そこの隅でじっと黙って座っている男がいる。誰だか分らず皆が気味悪がった(サングラスをしていなかったせいも有ったのだが...)と言う結構有名なエピソードがある。まあ彼は一度こうと決めると、実際にその他大勢の一員になり切ることが出来る。今回のタモリ・ステーションでも、まるでアンドロイドのように沈黙を続ける彼は、その存在だけで凡百のコメンテイターを凌駕してしまったふうにも思えた。色々と考えさせられ、ある意味楽しめもしたTV番組だったが、いずれにせよ戦争だけは何としても止めなければならない。ぼくのほぼ1年後に生まれた、奇才にして天才の森田一義氏の言葉の通りに...。

【今週の番組ゲスト:ピアニスト 魚返明未さん ギタリスト 井上 銘さん】
デュオアルバム『魚返明未&井上銘』から
M1「きこえない波」
M2「サイクリングロード」
M3「丘の彼方」
M4「隔たり」


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