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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.637~渋やん、真文氏など~】

 この7月の我がジャズ番組は今回がベテランのピアニスト渋やんこと澁谷毅、そして来週がサックス奏者の山口真文氏、両者ともに久方振りの登場である。山口氏が久々のリーダー作『トリニティー』を発表したと言う話を知り、これは何を置いてもスタジオに来てもらわないと...と思い、彼に連絡を取り、喜んで...と快諾を得て、スタジオに遊びに来てくれた次第。トリニティーとは「3位一体」という意味合いで、このタイトルからもサックストリオによるアルバムであることがそれとなく分かる。胸のすくテナーサックスの快演が、全編聴かれる素晴らしいアルバムで、スタジオの副調室のモニターを聴いていても心躍る思いだった。そんな素敵な演奏を展開しながらも、肝心の真文氏は至って恬淡...と言うか、謙遜の極みみたいな受け答えで、そのシャイな性格を知っていても、もう少しアピールすれば...といささか気になってしまう程。しかしこれこそが彼の良さで、超一流のジャズメンである証座とも言える。「星影のステラ」から「夜は千の目を持つ」迄全8曲、どれもスタンダードソングばかりで構成されており、自身のオリジナルをメインにしてきた彼にしては珍しいアルバムだが、これが実に味わい深く、グッドなのだ。語り手としてはもう少し自身をアピールすれば...とも思うが、そうなると真文氏の個性が無くなってしまうかも...。かなり長い付き合いだが、素敵な人柄のジャズミュージシャンである。

 そんな真文氏だが、実は我がジャズ番組この彼を掉尾に、日本のジャズを牽引して来た超ベテランを並べた、豪華ラインアップを組んでいた。ベースの巨星、吉野弘志、そして今回はプーさんこと故菊池雅章と並ぶピアノの鬼才、渋やんこと渋谷毅、そして真文氏と言うラインアップである。このトリニティ~3者の繋がりは、担当者のぼくが言うのもなんだが凄い。我が「テイスト・オブ・ジャズ」位しか実現出来ない、実現しようとしない...とも言えそうなものと秘かに自負している。ただこれも吉野氏、渋やん、そして真文氏と言う、日本のジャズシーンの屋台骨を背負って来た真の実力派の3人が、本当に偶然に新作をこぞって発表したことが大きく関わっている。

 吉野氏のアルバムは全編ベースソロによるアルバム、そして今回の渋やんのアルバムもソロピアノ集。ソロによる作品が並んでいるが、これも様々な理由によるもの。吉野氏の作品は自身のレーベルからの始めての意欲的ソロ作品だし、渋やんのソロ作品は異端の女流ピアニスト&作・編曲家、カーラ・ブレイの作品を取り上げた異色作で、タイトルも「カーラ・ブレイが好き...」である。そして真文氏の全編スタンダード集。そのどれも出色の作品ばかりである。その上珍しいことには吉野氏と渋やんは、ジャズミュージシャンにしては数少ない東京芸大で学んだ人達で、但し渋やんの方は中退の筈。また真文氏も慶応大の音楽サークル出身者。世界でも独自の個性を誇る日本のジャズ・シーンの中でも、その個性を際立たせて来たこの素晴らしい3名を、連続してスタジオに招き、その音楽を紹介することが出来たのは、長年ジャズ番組を担当して来た者としても、望外の喜びとも言える。これだからラジオのジャズ番組プロデュース役、何時までも止められないんですよね...。

【今週の番組ゲスト:ピアニスト渋谷毅(たけし)さん】
15年ぶりのソロアルバム『I  LOVE CARLA BLEY』から
M1「Lawns」
M2「Little ABI」
M3「Soon I Will Be Done With The Troubles Of This World」
M4「通り過ぎた時間」

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