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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日22:00-22:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.229~ジャズ本あれこれ~】

 ジャズ本~ジャズに関係した書籍のことだが、最近出たジャズ本の中でやはり話題は、村上春樹が鬼才セロニアス・モンクについてミュージシャン、評論家、ジャズライブハウスのマスターなど様々な人が書いたコラムを編著した、『セロニアスのいた風景』と言う事になるだろう。本のラストには彼が文句の主要作品について感想を述べており、ここがこの本の一番の肝になる訳だが、彼のジャズ関連本はこれで5作目になる筈である。作家になる前、国分寺、千駄ヶ谷で自身のジャズ喫茶「ピーター・キャット」を営んでいた彼は店でも寡黙な男だったが、ジャズの知識も豊富で決して通ぶらない人だった。

 この村上春樹ほど話題にはならないが、最近、音楽小売業から様々な分野に手を伸ばしつつある「ディスク・ユニオン」。ここが始めた音楽書籍「デュー・ブックス」で、これも注目の2冊のジャズ翻訳本が出された。アシュリー・カーンと言うアメリカの気鋭ジャズ評論家が書いた,マイルスとジョン・コルトレーンの評論本である。マイルスの方は『マイルス・デイビス/カインド・オブ・ブルー創作術』、そしてコルトレーンの方は『至上の愛の真実』と言うもので、マイルスの『カインド・オブ・ブルー』は全世界で1000万枚以上を売ったジャズ史上屈指の人気盤。そしてコルトレーンの『至上の愛』も、コルトレーンを代表する名盤。その上コルトレーンも『カインド・オブ・ブルー』の参加メンバーと言う事もあってこの2冊因縁浅からぬ繋がりを持った名盤で人気盤であり、それ等の創作過程などを記したドキュメントと言うのだから、やはりジャズ・ファンにはぜひ読んで欲しい作品と言える。そしてこの2冊を訳したのは、今やジャズ本の翻訳家としては第一人者とも言える川島文丸氏。これまでにもクリフォード・ブラウンやアート・ブレーキーなどのジャズ本を訳しており、その訳は既に定評がある。

 元々彼は大手レコード会社の役員まで勤め挙げた人物で、古くからのぼくのジャズ仲間の一人だが、東京外大出身だけに英語はお手の物。今までジャズ本の翻訳は時にジャズ音痴の人が担当し、全く初歩的な人名間違いやジャズ用語のトリ違いなども散見されたのだが、ジャズ担当も長かった彼はそこら辺は正確無比。2冊同時に出版と言う事で彼にこの本を持ってスタジオに遊びに来てもらった。
 翻訳作業はそれほど難しいものでは無く、大体1冊を4か月ほどで完成させるとのこと。だが最も苦労するのは形容詞の使い方。スプレンディッド、マーベラス、ファンタスティックなど、同じような誉め言葉をどうその文脈に合わせ、日本語の訳語を使い分けるか...、ここら辺が一番気を遣うと語ってくれた。マイルス、コルトレーン両書共に1冊3000円強。少しお高い感じもあるが十二分に読み応えのあるものなので、是非皆様にもお勧めしたいジャズ本です。

【今秋の番組ゲスト:音楽評論家で翻訳家の川嶋文丸さん】
M1『So What/Miles Davis』
M2『Blue in Green /Miles Davis』
M3『Freddie/Freeloader』
M4『Love Supreme Part1:承認/John Coltrane』

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