まあそんな状況なので、いつもならば早朝御影用水脇から越生学園グランドなどを通って帰宅と言う1時間を超す「速歩ウオーキング」を行うのだが、今回ばかりはそんな気持ちにもなれず、もっぱら読書と音楽(ジャズ&クラシック)鑑賞に温泉三昧。上田市郊外の「ささらの湯」に、糖尿病に効く飲用温泉水を汲みに走り、小諸の布引観音(牛に惹かれて善光寺参りの観音)温泉では早朝入浴等々、追分周辺の東信の温泉を回った。どこの温泉に入っても心身の痛みが取れるようで、やはり温泉最高と言った気分。流石に草津や万座迄は足を伸ばせなかったが、どうやら不安と心配も、この温泉巡りでいささか軽減された感じだった。
ジャズCDの方は、鑑賞と言うよりももっぱら整理の方に時間がかかり、こんなに所持していても...と思うのだが、いざ整理を始めると貧乏性と言うか思い切って処分できない、ダメな性格なのである。しかしこの整理も仲々に愉しいもので、今まで見向きもしなかったアルバムをなんとなく聞き直してみると、これが意外な拾い物...などと言うのも時々出てきて、また何とも嬉しいもの。今回面白かったのは『伝説のブギウギ・ピアノ』と言うコンピアルバム。ジャズの原型の一つともされるブギウギ(ピアノ)を30曲近く集めたアルバムで、「ブギ第1号」ともされるパイン・トップ・スミスの「パイン・トップス・ブギ」やカウ・カウ・ダベンポート、モンタナ・テイラーなど未知のピアニストばかりだが、その威勢の良さには感嘆しきりだった。まあどうしてこんなアルバムを聴こうかと思ったかと言うと、整理の途中に何気なく目にしたこのアルバム、もしかしたらカンサスシティーの大物、ジェイ・マクシャンのピアノも入っているのか...とみると、1曲あるではないか。マクシャンは先日アルバムのライナーを頼まれ必死で資料を探していた人物。それが追分の山荘に埋もれていたとは...。まあこのマクシャン(モダンジャズの開祖、チャーリー・パーカーを見い出した偉人)の1曲に惹かれ、全30曲余り(殆どが30~40年代の録音音源)を聞き通してしまったのだが、ジャズだけでなくR&Bやロックにも大きな影響を、この音楽が与えていることが良く理解できるもので、実に威勢の良い興味深いコンピ作だった。こうした掘り出し物があるから、やはりCD整理作業はやめられないのだ。
読書では軽井沢、御代田の図書館で10数冊ほど借りまくり読みふけった。中でも興味深かったのは軽井沢在住の直木賞作家、藤田宣水のセミハードボイルド小説「老猿」。舞台が軽井沢の中軽の別荘地だけに、小説としての出来栄えは今一つだが、地域柄その設定にも興味深いものがありそれなりに愉しめた。もう一つの拾い物はドリアン助川の「あん」。樹木希林の映画でも評判になった(見落としてしまった)小説だが、ハンセン病と言う重いテーマを扱いながら、心温まるストーリーに仕上げており、実に後味の良い泣ける小説だった。昔は児童ものの出版社と言うイメージのポプラ社だったが、ここ数年様子一変といった感じで、意欲的な作品を次々世に送り出しており、「あん」はその代表作の一つ。是非ヴィデオで映画の方も見ようと思った程の逸品だった。音楽書では菊池成孔&大谷能生コンビによる「アフロ・ディズニー」が予想通り面白かった。中々に難しい内容の大学でのジャズ講義録だが、流石理論家の2人だけに興味深いもの。菊池はサックス吹きとしては余りその力量は評価出来ないのだが(自身のバンドや山下洋輔などとも共演)、こうしたジャズ理論書や講義本では、他に追随を許さない素晴らしさ。理論と実際、そしてその乖離、そこら辺が世の中とは中々に面白いもの。あの文春から出された一冊で、難しいが一読に値するジャズ本です。
【今週の番組ゲスト:ジャズヴァイオリニストの里見紀子さん】
1stアルバム「Project-N」
2ndアルバム「A Love Supreme」から
M1「A Love Supreme, Part 1 承認」
M2「A Love Supreme, Part 2決意」
M3「Red Light, Green Light〜だるまさんがころんだ〜」
M4「Danny Boy」