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テイスト・オブ・ジャズ

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テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.596~ジャズ・ロフト~】

 今まだロードショウの最中だと思う話題の映画に、ジョニー・デップが制作・主演した「MINAMATA」がある。これは報道写真家ユージン・スミスが、あの悲惨を極めた水俣病の患者さん達を追って撮り続けたその晩年の姿を描き出した劇映画。制作陣は水俣市の協力を得られずに苦労した...と言ったエピソード等も伝わっている作品だが、ジョニー・デップと言う人気俳優の社会性やその気概、正義感等が良く伝わってくるものと、中々に評価が高いフィルムだ。その主人公のユージン・スミス、彼は元々アメリカの人気写真誌「ライフ」のカメラマンとして売り出し、全米を代表するドキュメンタリー写真家として知名度を上げたが、ある日突然家族を捨てNYのど真ん中にある小汚いロフトの一室に居を移し、そこで写真とジャズ三昧の生活を送る。そのドキュメンタリーフィルムがもうすぐ公開される。

 タイトルは「ジャズ・ロフト」。宣伝のキャッチに「写真家ユージン・スミス×気鋭のジャズアーティスト達」とある。このドキュメンタリー映画のDVDが配給会社から送られて来たので、直ぐに見ることにした。ユージン・スミスとジャズの関係。それを知ったのは10年ほど前に、恵比寿にある写真美術館で行われた彼の大規模回顧展だった。代表作の「MINAMATA」や第2次大戦の報道写真、フィラデルフィアの労働者達のポートレート等と並んで、セロニアス・モンクやレスター・ヤング等の大物達の写真や、一連の私的なジャムセッションの模様などを写し取ったものもあり、その時始めて彼がジャズ好きで、ジャズ関連の素晴らし写真も撮っていることを知り、ちょっとしたショックだったし、それをこのジャズコラムでも書いた筈なである。

 そのジャズ漬けだった60年代のユージン・スミスの姿を、友人やミュージシャンの証言などで紹介したのがこの作品であり、インタビューに登場するのはカーラ・ブレイ、フィル・ウッズ、チャック・イスラエルなど錚々たる面々。映画のハイライトを形作る今は亡きモンクやズート・シムズ、ホール・オーバートンも写真と声のみの登場だが、この3人は重要な役割を占める。モンクの歴史的な演奏会になった10人編成のビッグバンドによるタウンホールコンサート、彼のロフトで行われたそのリハーサルの模様なども、音声と写真で生々しく収められており、ジャズファンならば間違いなく心躍るもの。このコンサートの編曲者が現代音楽家でジャズ演奏家でもあるホール・オーバートンで、彼はユージン・スミスの隣人にして友人。この2人の関係も大変に興味深いものだし、挿入される写真群も素晴らしいものばかり。異色のジャズフィルムだが、ジャズファンには是非お勧めの1作です。

【今週の番組ゲスト:ギタリストの中鉢洋夫さん、ドラマー/プロデューサーの平井景さん】
Volvox』から
M1「雲の河」
M2Dali's Car
M3Volvox
M4Midnight Old Tree


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