お知らせ:

テイスト・オブ・ジャズ

番組へのお便りはこちら
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.507~ECM】
 
 いよいよ4月スタート、我が街国立の桜並木もいささか満開を過ぎ、これからの新シーズン到来を告げている。国立の街のシンボルだった三角屋根の旧駅舎も、駅前にあと数日ほどで復元される筈...と何かと華やぐ時期なのだが、世間一般はコロナパンデミックでそれどころではなく、国立の街も例外ではなく元気なし。こんな中で勢いづいているのは、あの女狸こと小池女史ぐらい。オリンピックの延期が決まるまでは、コロナ罹患者数もわずかで東京の安全性をアピールし続けていた女史とリーダーの安倍。延期が決まり足かせが無くなると同時にその患者数は飛躍的に増え続け、連日のように記者会見を開き注意喚起どころか、首都封鎖も近い等と宣い続ける。確かにNYやロンドンなど世界の各都市での状況は悲惨なものだし、個々人が注意し続けないとならないのはその通り。だが記者会見を見ていると、あの有頂天だった時期が思い出され、何ともほろ苦く許しがたい気分だ。まあ今は個々人が細心の注意を払い、やれることをやるしかない。


 さて4月最初のジャズ番組は、毎年ジャズ関係者(ジャズプレーヤーやライター等々)に登場してもらい、ジャズ入門の為のお勧めアルバムを紹介、ジャズの愉しさを伝えてもらっている。今年はジャズ評論家、青木和富氏に頼んでいるジャズトークの時間でも、彼のお勧めの初心者向けアルバムを幾つか紹介(取り上げたアルバムは先週分コラムに載せてあります)した。そして今週は今年創立51周年を迎え、今や欧州随一と言うよりもコンテンポラリーなジャズレーベルとして世界でも屈指の存在として認識されている「ECM」について。その入門編的なベーシックコレクションをこのレーベルの生き字引とも言える、ジャズプロデューサーで日本最初のジャズブログ「JazzTokyo」主催者でもある稲岡邦弥氏に、色々と紹介してもらうことにした。

 
「ECM」はEditions of Contemporary Musicの略語で、いかにも現代的なジャズサウンドの表出に相応しいもの。そしてそのレーベルモットーが「
ザ・モスト・ビューティフル・サウンド・ネクスト・トゥー・サイレンス(沈黙の次に美しい音)」と言うのだから、これまでのジャズサウンドとははっきり決別した、新たなジャズサウンドの確立に腐心していることが良く分かる。その創始者はドイツ人でミュンヘン在住のマンフレード・アイヒャー。交響楽団にも在籍しジャズベーシストでもあったアイヒャーは、欧州ならではのクラシカルで独自の静けさを伴った、知的なジャズサウンドを創出するために、ミュンヘンの地でジャズ・レーベルを立ち上げた。それが1969年のことで昨年はレーベル創立50周年。プロデューサーはアイヒャーただ一人で、自身の気に入ってミュージシャンを集め数々のアルバムを世に送り出し、その数はすでに1000枚を超えている。その上クラシックの素養も深い彼は、「ニューシリーズ」としてクラシックアルバムも制作するようになり、こちらにも世界的なミュージシャンが集まっており、まさに個人プロデュースのカタログながら、世界屈指の内容を伴ったレーベルにまで成長している。その第一弾は当時ミュンヘンに在住していたピアニスト、マル・ウオルドロンの『フリー・アット・ラスト』。


 これがECMのカタログ番号1001で、以降ずっとこの番号は継続され今や2000番台の半ば近くに突入していると言う訳。このレーベルの最初から付き合っているのが、当時「トリオ・レコード」のジャズ責任者だった稲岡氏、2人はそれ以来50余年の付き合いがある仲。稲岡氏は創立40周年の時に、「ECM全カタログ」を刊行することを思いつきそれを作り上げ、昨年の50周年ではその改訂版を又出版した。アイヒャーも彼には絶対の信頼を寄せており、こんな例はジャズ界でも実に珍しいもの。ぼくと稲岡氏の中も40数年にわたるもので、今回も出演依頼をすると二つ返事でOKしてくれたのだが、その膨大なカタログの中からわずか5枚を選び出すのは、大変な作業だとお叱りを受けてしまった。稲岡氏が選んだアルバムは別表に掲載してあるとおりだが、カタログ最初のマルのトリオ作を始め、我が国でのフュージョンミュージックブームの先駆けとなり大ヒットした、カモメアルバムことチックコリアの『リターン・トゥ・フォーエバー』など、どれも興味深いものばかり。番組では彼の労作「ECM完全カタログ」も紹介しているが、こんな素晴らしいカタログが日本で作られたことを、ジャズファンは誇りに思わないとならないだろう。東京キララ社から出されているこの完全カタログ、お値段は5000円といささか高めだが、ファンならば充分に愉しむことが出来るし、決してお高い買い物ではないことを保証する。正にジャズファンならば「一家に一冊」のカタログ本として番組も大推薦します。


【今週の番組ゲスト:音楽プロデューサーの稲岡邦彌さん】
稲岡さんの手掛けた『ECMカタログ 増補改訂版』〜50周年記念版〜をご紹介頂きました。

M1
RAT NOW / Mal Waldron TrioECM1001FREE AT LAST 』から
M2
IRR / JAN GARBAREKECM1015SART』より
M3
RETURN TO FOREVER / CHICKCOREAECM1022RETURN TO FOREVER』より
M4
Köln, January 24, 1975 Part / Keith JarrettECM1064/1065The Köln Concert』より
M5
JAMES / Pat Metheny GroupECM 1216OFFRAMP』より

お知らせ

お知らせ一覧