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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日22:00-22:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.227~堅実なベースマン~】

 ウッドベースと言う楽器、弦楽器の中では最も大きいもので、ベーシストはジャズ演奏中、リズムのボトムをドラムと共にしっかり確実に支える、かなり地味な役割。ドラマーが派手なソロ等を展開し、人目に付く人気稼業なのに比べ、余りソロスペースも与えられず、ベーシストはひたすらバックアップに励む縁の下の力持ち的役割。チャールス・ミンガズ、ポール・チェンバース、ロン・カーター等といったビッグネーム以外は、リーダーアルバムが出されることもこれまでそう多く無かった。それだけにベーシストにはその役柄どおり、全体に地味目で真面目な性格の人も多いようである。ただこのベース、最近の傾向としてはこの大きな楽器を軽々と扱う女性陣もかなり増えてきており、更にベースを弾きながら歌も歌う=ベースの弾き語りが売りのエスペランサやニッキ・パロットと言った才媛も登場し、新たな様相も見えてきている。

 そんなベーシストの中でも、今や国内実力No1と評価の高いのが井上陽介。大阪出身の彼は、大阪の音楽大学時代からプロ活動を開始、国内で実績を積んだのち91年に単身NYに渡り、本場でギグ(仕事)をこなすようになる。同地で多くの有名ミュージシャンと共演、その実力を評価され97年には待望の初リーダー作も発表。10数年のNY生活を終え帰国してからは、自身のバンドや各セッションなどで大活躍、ジャズ以外でも映画・TVなど様々な分野で活躍の売れっ子である。その彼はまさにこれぞジャズ・ベースマンと言った、地味で堅実・実直な好男子でもある。

 ところで彼、井上陽介は、なぜかこの番組とは縁が深く、まだNY時代の初リーダー作発表時からスタジオに遊びに来てくれている。その彼の才能を最初に認め、レコーディングに起用したのが、当時レコード会社の大幹部だったこの番組創始者で先輩の木全信プロデューサー。彼から紹介されデビュー作を持ってスタジオに遊びに来た陽介氏は、帰国後の第一人者になってからもよくスタジオに来てくれている。数年前に国立音大にジャズ専科が出来た時、ぼくが音大と協同で1時間半の特番を制作、そのベース科の主任が彼で色々とベース講義をしてもらったりもした(今も同校で主任を続けている)。

 その彼が5年振りにリーダー作を出すと言う。それじゃスタジオに来てもらわないと...と言う事で、5年振りに彼の登場となった。その新作のタイトルは『グッド・タイム』。彼はアルバムライナーの冒頭「アイ・ハズ・ア・ドリーム」と記し、「このアルバムは夢を失いそうになりながらも、悩み、倒れそうになりながらも、また立ち上がり、夢を追いかけている男たちの奮闘記です」と書き記している。そしてこのアルバムは、井上自身そして仲間達、更にファンのみんなも、アルバムを通し「グッド・タイム」を共有出来るものにしたかった、とも番組で語ってくれている。タイトル曲は自身のオリジナルだが、その他のカバー「フィール・ライク・メイキン・ラブ」「ヒア・ゼア・エブリホエア」など、自身のお気に入りの60~70年代のポップスヒット曲やR&B名曲を、ピアノの秋田慎二など気の合った仲間と共に、彼流のジャズに昇華し、実に愉しげにプレーし、心地良い音楽を提供してくれている。彼ももう大台の50才、夢は始まったばかりだと静かに語る陽介氏には、これからやりたいことも沢山あるようで、その辺は番組で聴いてみて下さい。好漢井上陽介のこれから、J-ジャズと共に、前途洋々なのではないでしょうかね...。
【今週の番組ゲスト:ベーシストの井上陽介さん】
M1『Good Time』
M2『Feel Like Making Love』
M3『Tell Me A Bedtime Story』
M4『Black Orpheus』
《番組からのお知らせ》
番組でもおなじみジャズピアニストの山下洋輔さんと50年以上の親交がある「光の画家 松井守男」さんの展覧会が開催されます。レジオン・ドヌール勲章を受勲された松井守男画伯が山下氏にオマージュを捧げる作品などが展示されます。

松井守男展覧会 東京展
日程:2014年11月5日(水)~11月10日(月) 10:00~19:00(5日は16:00まで)
展示作品:「ピカソ、ダヴィンチ、ヨースケ・ヤマシタ」ほか
会場:アウディフォーラム東京(東京都渋谷区神宮前6-12-18)

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