12月23日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [テイスト・オブ・ジャズ]
2021/12/23(木) 19:00 番組スタッフ

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.606~村上RADIO~】
 
 先日このコラムで、全国のラジオ局でジャズ番組は80いくつもあるんだと記し、その中で人気なのは村上春樹のやっている「村上RADIO」位では...ともかいたのだった。すると直ぐにこのコラムの熱心な読者の一人だと言う(まあ実際にそんなもの好きな人いるんですね...)ある知り合いからTELありで、「村上ラヂオと言うエッセイ集が出ているよ...」と言う要らぬおせっかいが入る。まあそう聞くと一応目を通さないと...、と思って本屋に行くが置いていない。仕方なく近所の図書館巡りで1冊見つける。どうやら2000年から01年にかけての1年間、人気女性誌ananに連載したコラムを抜粋して纏めたもので薄い本だけにすぐに読めてしまう。タイトルはあくまでも「村上ラヂオ」で「ラジオ」でない所が、拘り屋の彼らしい所。春樹が女性それも当時の若い女性向けに書いたものだけに、結構面白いものも幾つかあった。

 ある意味で温厚な彼だけに「けんかをしない」と言うコラムでは、「ぼくはとても性格温厚とは言えないが、正面切って他人と喧嘩をすることは無い...」などと書かれていると、彼がまだジャズ喫茶「ピーター・キャット」の若き親父をしいていた頃、その初代の店(国分寺駅北口にあり、以降千駄ヶ谷に移り人気店になる)のカウンターの陰で、物静かに読書していた姿を思い出すが、静かではあるが結構小うるさそうな男ではあった。若い女性向けということで、テーマもファッションから食い物など、如何にも女性好みと言う様なテーマも数多いのだが、やはり面白いのは音楽に関するもの。タイトルを拾ってみても「滋養のある音楽」「オブラディ・オブラダ」「柳よ泣いておくれ」「きんぴらミュージック」等々。「自分には20歳前半の女の子が、何に興味を持っているか...などは分からない。だから自分に興味あることだけを書くようにした...」と後書きにあるが、それでも今読んでも面白い。流石現代の文豪。こうでなくちゃである。

 上の幾つかの音楽コラム、「オブラディ・オブラダ」は当然彼のビートルズ体験について。彼はぼくよりも3,4才下だから、ビートルズ来日時は高校生時代だと思う。当然彼のポップス体験は、ビートルズとビーチ・ボーイズと言うことになるのだろが、「高校時代はクラシックとジャズにのめり込んでいたので、ビートルズは敬して遠ざけていた...」と書かれており、ああそうなのか...と納得させられる。また「きんぴらミュージック」は、フォークロックの主役格、ニール・ヤングの音楽はきんぴらに合うという内容で「ニール、君も頑張れよな。ぼくもきんぴらごぼうを作りながら君の音楽を聴いているんだから...」と言う一節がある。「柳よ泣いておくれ」は当然名花ビリー・ホリディ―の名称で知られるスタンダードソングについてのもの。「ぼくは柳の木が好きです。気が向くとその木の下に椅子を持って行き、読書しています」と優雅さを誇っている。そして何より嬉しいのは「滋養のある音楽」と言う一章。この音楽とはあのヴィム・ベンダースが監督に一時大ヒットしたキューバの超ベテランミュージシャン達の音楽ドキュメンタリー作品「ブエナ・ビスタ・ソーシャル・クラブ」についてのもの。手持ちカメラを駆使しての映像だけに、「画像は荒っぽいけれど、その分音楽の息遣いも生々しく再現されており、音楽家たちも素晴らしいもの」と絶賛している。チャーミングな音楽家と音楽もワクワクするほど楽しくて、引き込まれてしまった...と。春樹は書いているが、キューバ音楽がそれほどに彼を魅了したとは、キューバやその音楽好きなぼくにとっては、嬉しい限りのものだった。

【今週の番組ゲスト:ギタリストの助川太郎さん】
Requie-mundo』から

M1
「春のない男」
M2「マウンテンチャイルド」
M3「ソワンダフル」
M
4「希望への眠り」


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