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テイスト・オブ・ジャズ

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テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.577~追分通信21夏~きみはポール・ジャクレーを知っているか...~】 

 巷ではオリンピック狂騒曲が続いているが、山荘にはTVが無いために少しも感興が沸かない。どうやら日本選手の金メダル・ラッシュが続き、興奮度もかなり高くなっているようだが、この地では殆ど関係無し。その上期待していた7人制ラグビー。これが男女共に惨敗、協会の指導に問題ありだけにもう何をか況やである。そんな巷とは趣きを異にした追分の山荘周辺だが、個人的な大事件と言えば、御影用水に群れ集っていた30羽以上の鴨達、これが一羽残らず居なくなってしまったこと...。夏の盛りには珍しいことだが、果たして一時的な現象か、はたまた何かの異変を感じていなくなってしまったのか...、大いに気になる所ではある...。

 さて今回のサブタイトル、良く使われる「君は...を知っているか...」のパクリパターンなのだが、その肝心の主ポール・ジャクレー、この人物のことを知る人はまずいないだろう。かく記すぼくも、その存在今回初めて知った位なのだから、普通の人はまず知らないはず。避暑地の軽井沢にかなり詳しい人ならば、もしかしたら...と言った位か...。この人物、外国では一風変わった存在として、それなりに知られているのだ。種明かしをすると、フランス人ながら日本に長く住みつき、第2次大戦以降は軽井沢を本拠に活動していた西洋浮世絵師なのである。フランス人で浮世絵師。如何にも外国人が好みそうな人物だが、その人の全作品展を追分にある軽井沢追分塾郷土館でこの8月頭から10月末まで、2期に分けて開催している。中軽井沢にある図書館でそのチラシを見て、木版画大好きなぼくは直ぐに心動かされた。チラシに写っているその作品は、南太平洋のどこかの島の若い女性を描いたもので、なんとも言えぬ味わいがある。その上「全木版画展」とあるので、これは是非に...と勇んで郷土館に向かった。その上軽井沢図書館は結構この展覧会に力を入れている様子、司書の人は作品集もありますよ...とわざわざその全作品集も持って来てくれ、少しばかり予習も済ませ郷土館に向かう。

 このポール・ジャクレーと言う浮世絵師、1896年(明治29年)パリに生まれたが、父親が一橋大学などのフランス語教師として来日したため3才で日本に渡る。以来1960年(昭和35年)に軽井沢で没するまで、日本に生涯住み着いたと言う、日本人以上に日本の文化に精通したフランス人絵師だった。今年は彼の没後60年と言うことで、その画業を記念し回顧展が開催された訳だが、その全木版画160数点が2期にわたり展示される。会場の追分郷土館、追分宿の端に位置するこの資料館、その存在は知っていたが中に入るのは今回が初めて。いつもは追分宿の歴史などを展示しているらしいのだが、今回はモダン浮世絵版画の展示だけに雰囲気も一変、かなり派手やかな装いでお客も予想以上の入り。前期の今回は戦前までの作品がメインで、90近い作品が展示されており、中でも興味深かったのが、セレベスなどの南洋の島々を巡った時のもの。江戸時代以来の浮世絵版画の技法に基づく南太平洋の島々の美しい女性たちの艶やかで逞しい姿。ゴーギャンの女性を日本的な版画に仕立てたと言った趣きもあり、何とも言えない明るさと心地よさ。その上彼の版画、誰かに似ているなーと思いながら見ていると、思い出したのは画伯、横尾忠則の名前。彼の描くポートレート版画によく似ているのである。即ち彼は、その戦前の作品から極めてモダン=現代的な色彩感を有していたということ。戦後は軽井沢に住み着いたまま生涯を過ごしたということだが、もう少しその存在が知れても良かったのでは...と、この展覧会を見ると残念な気持ちも強くなる。

 彼の全版画集は岡部出版という出版社から、大枚6千円で出されているが、近くの図書館などで一度その作品確認してみれば、その画業の素晴らしさに驚かされる筈だし、何せ全画業が見れる作品集など、そう多くはないと思われる。こんなフランス人がいて日本で浮世絵版画を作り続けたこと、このオリンピック狂騒曲の時期に知るのも、決して無駄では無いと思いますよ。

【今週の番組ゲスト:サックスプレイヤーの鍬田修一さん】
Marveling』より
M1「宝島 feat. 本田雅人」
M2FLAMENCO feat. 本田雅人and 鍬田修一」
M3FANTA SEA feat. 鍬田修一」
M4FUSION JUICE feat. 小林太 and 鍬田修一」

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