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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日22:00-22:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.225~話題のジャズフィルム~】

 最近ジャズが元気を失いつつあることに関連し、ジャズプレーヤーやシンガーまたはジャズそのものをテーマにしたいわゆる「ジャズ・フィルム(映画)」がめっきり少なくなってしまった印象がある。更には映画音楽としてジャズを使うケース(一時はブームとも言える程、多かったのだが...)も、かなり減っているように思え、寂しい限りでもある。そんな中、北欧の代表的ジャズ愛好国スウェーデンで、同国を代表する世界的ジャズシンガーを主人公にした映画が、北欧各国で大ヒット、いろんな映画賞も受賞していると言うニュースを少し前に雑誌で見て、さすが民度、文化度の高い国ならではと感心したものだった。

 その主人公とは、あのジャズピアノのレジェンド、ビル・エバンスと共演を果たし、彼の代表曲の「ワルツ・フォー・デビー」(ジャズワルツの代表曲)を母国語のスウェーデン語で唄い綴り、世界中のジャズファンから絶賛された歌姫モニカ・ゼタールンド。映画の原タイトルも「モニカ・Z」となっている。この映画、久々の本格的なジャズ映画なので、もし日本で上映されるならば是非見に行かないと...、と思っていた。まあ映画が仕事のメインでないので、試写会の案内もそう多くは来ないのだが、一応の話題作は招待される。
 そんな試写状の中に、なんとこの「モニカ・Z」の案内が混じっていたのである。ただぼくはドジなだけに、それに気付くことが無かった。と言うのもこの映画の邦題が「ストックホルムでワルツを」となっており、チラシにも小さくしかモニカの名前が出ていない。これで彼女の伝記映画と知るには、かなり無理があると言うもの。ぼくもジャズ仲間から教えられ、ようやくその試写状に気付き、直ぐに六本木にある試写室に駆け付けた次第。どうもジャズが、若い人達から敬遠され気味だと配給会社の担当が判断してジャズシンガーのストーリーをあまり前に出すことなく、「決して夢を諦めなかった一人の女性の奇跡の物語」と言う、女性サクセスストーリーとして売り込もうとしている様子だった。良く見ると「シングルマザーの電話交換手から世界有数のジャズシンガーへ...」とか「エバンスの名曲"ワルツ・フォー・デビー"の歌姫に」等とあるが、邦題やチラシののほほんとした写真からは、単なる女性映画としか思えない。この映画、北欧各国では大ヒットしたのだが、映画としてはさほど良い出来と言えるかはいささか疑問でもある。ただしジャズ・ファンが見れば中々に泣かされる場面も多く(NYのクラブで憧れのトミー・フラナガン・トリオと共演する場面等々)、登場するジャズメンやプロデューサーなど有名人も数多く、大変に興味深い。
 最も印象深いのはビル・エバンスに自身のテープを送り、その実力を認められ、「ワルツ・フォー・デビー」を彼のトリオをバックに、NYのクラブで唄うと言うクライマックスシーン。主演のエッダ・マグナソンの歌も実にこなれた旨みあるもの(吹き替えではなさそう)だし,何より故エバンス役のピアニストの横顔がエバンスにそっくりなのもご愛嬌。このジャズワルツの銘品以外にも「テイク・ファイブ」「捧げるは愛のみ」「月光のいたずら」「旅立てジャック」などのスタンダードソングも続々登場。ジャズ映画ならではの楽しみも多く、ジャズに興味のある方やジャズファンを自負される方ならば、是非見るべき作品としてお勧めしたい。 
 なお映画のラストで、ベーシストと幸せな結婚式を迎えるモニカ・Zだったが、05年5月にストックホルムの自宅アパートで起きた火事で死亡。享年67才だった。全く惜しい歌姫を亡くしたものです。心より合掌!

【今週の番組ゲスト:コアポート代表の高木洋司さん】
M1『かすかな記憶/ アカ・セカ・トリオ』
M2『シンキン バウト ユー/ ベッカ・スティーヴンス バンド』
M3『ユー アー マイ スプリング/ トリオ センス』
M4『マイ キンドレッド スピリッツ/カーメン・ランディ』
M5『ペカード/吉田慶子』

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