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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.427~注目の若手ドラマー登場】

 コンテンポラリーなジャズシーンに於いて、今や最も変化・進展しているのがドラマーの世界だとぼくは思っている。先日の東京ジャズで最も注目を集めたユニットの一つが、ロバート・グラスパー率いる若手才能集団ユニット「R+R=NOW」だったが、ここにはリーダーのグラスパーを始めベースのデレク・ホッジス、サックスのテラス・マーティンなど、それぞれがリーダーとしてシーンを担い、強烈に「今」を感じさせる才気が集合していた。その中でも際立っていたのがドラムのジャスティン・タイソンで、黒人特有の力強く重量感溢れるドラミングをベースに、リズムの概念が変わりつつあることを如実に窺わせる多彩で卓越な叩き技も披露、これは...と思わせる圧巻のプレーを展開していた。

 
このジャスティンを始め今は亡きデビッド・ボーイとの競演でも知られるマーク・ジュリアナなど、本場のドラムシーンは黒人、白人、更に東欧系、中南米系など多士済々な才能が入り混じり、正にダイナミックな進化を遂げている。そうしたリズムマンの動向は当然日本のシーンにも連動している部分もあり若手でも有望株が登場、シーンに刺激を与えるような活動を展開している。
 その代表格が番組にも登場してくれた20代の若手技巧派石若駿と、海外経験も豊富な大村亘(もう30代の中堅だが...)の2人と言うことになるだろう。北海道出身で10代の頃から日野皓正等に認められ、早熟の天才として知られた石若駿に対し、父親の仕事の関係でアメリカなど海外生活も長い大村の方は、オーストラリアの大学に留学、そこの音楽科を出て日本に帰国しシーンに登場と言う経歴だけに(人気ピアニスト、ハクエイ・キムも、彼と同じくオーストラリアの大学でジャズを学んでいる)、帰国当初はあまりその存在が知られることも無かったが、繊細で大胆な多彩さを誇る素晴らしいドラミングは、若手仲間の信頼を得て数多くのセッションなどに呼ばれ、その存在が徐々に知られるようになり、今や石若と並んで若手の代表格となっている。

 
ぼくが彼の存在を初めて知ったのはクラブ仲間でもある友達のベーシスト、「チンさん」こと鈴木良雄が若手を集めて結成したユニット「ジェネレーション・ギャップ」に彼が参加した時のこと。「若手の素晴らしいドラマーがいるんだよね...」と言うチンの紹介で、彼が初リーダーアルバムを出した時にスタジオに来てもらった。帰国子女と言う関係もありその日本人離れした柔軟な思考、視野の広さ、気さくな人柄なども相俟って、直ぐにご贔屓の一人になったのだった。以降彼は優秀な演奏仲間などを連れて時々遊びに来てくれたが、今回久しぶりにリーダー作を発表したと言うので、その紹介を兼ねスタジオに来てもらうことにした。
 アルバムは大学でジャズ教師もしているギタリスト、デイブ・ムーニーとの双頭リーダー作『BENIGN STRANGERS』である。テナーのジョン・エリスやピアノのグレン・ザレスキーなど、日本ではまだ余り知られていないが、コンテンポラリーな白人ジャズシーンを象徴する様な知的なジャズ資質が集った好作品で、最初は自主出版と言うことだっだが、その内容の良さもありアメリカでも屈指のジャズレーベル「サニーサイド」から出されることになったのだと言う。
 
内容は流石に大村くんとムーニーの名コンビとも言える素晴らしいもので、彼はここでドラムだけでなく最近嵌っているインドの打楽器"タブラ"も演奏している。今年もインドにタブラ修行に行ってきたと言う彼は、その話も番組でしてくれているが、飄々として実に魅力的な人物で、国際派としての軽やかなジャズ活動はまさに刮目に値するもの。保守的な傾向が強まりつつある日本の若者(彼自身はもう若くはないかも...)の中では、改めてその自在で自由な考え方、ぼくにはとても魅力的なものに映ります。

【今週の番組ゲスト:ドラマーでコンポーザーでタブラ奏者の大村亘(こう)さん】
久しぶりにご自身の名義でリリースしたアルバム『BENIGN STRANGERS』から4曲ご紹介しました。

M1
「ザ・ハイツ」
M2
「ビナイン・ストレンジャーズ」
M3
「イン・ジス・バランス・オブ・タイム」
M4
「トゥエンティーナインス・ロード」



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