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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.285~ジャズ2015】 
 我が「テイスト・オブ・ジャズ」も今回の放送が2015年の打ち止め。毎年掉尾の番組では、気鋭のジャズ評論家、ライターを招きその年の印象に残ったアルバムをいくつか紹介してもらって来ているが、今年はジャズライターのニューウエーブとも言える柳楽光隆くん。
 
彼は「21世紀のジャズ・シーンを網羅した初のジャズ本」というキャッチで評判を呼んでいるジャズ本「ジャズ・ザ・ニュー・チャプター」の著者でもある新進気鋭のライター。この本はかなり好評の様でこれまでにvol3まで出されている。そしてこのジャズ本の中心になるのが、新世代を代表するピアニスト&プロデューサーのロバート・グラスパーで、番組でもまず彼の新作『カバード』から1曲紹介した。このトリオアルバムは、タイトル通りヒップホップ、R&Bからロック、そしてジャズスタンダード迄をグラスパー流に大胆にカバーしたもので、その斬新なアプローチが目立つ秀作。この他彼の周辺の「ネクストチャプター」とも言えるミュージシャンのものも取り上げている(曲目については下を参照)。

 
一方日本のジャズシーンについても...、というぼくからの要望には、今注目の才媛、挟間美帆の『タイム・リバー』を挙げてくれた。山下洋輔氏にその才を見出されたこの若きジャズ作曲家は、いまや本場NYをメインに大活躍、世界中が注目する存在に成長しており、その新作は彼女が表現の更なる高みに到達したことを如実に物語るもの。ぼくも今年のJ-ジャズのベストの1枚として推薦したいアルバムでもある。そしてラストはこのバンドの一員でもある、テナーのダニー・マクシャンの新作で閉めてくれた。「ジャズ・ニューチャプター」。若き黒人ミュージシャン達の台頭を物語る、この言葉通りの状況が今新たに生まれつつあり、ロートルのぼくなどはどうもラップ&ヒップホップが生理的に受け入れ難いのだが、これまでのジャズファンとは違う新しいファン層が増えつつあるのは実感出来る1年間であったと思う。ぼく自身の2015年お勧め作品は前回のコラムで紹介した通り。

 
そのレギュラー番組に引き続き、暮れの31日には、夕方5時から1時間のジャズスペシャル番組を放送する。この特番は「ジャズゆく年くる年」ということで、今年の回顧と16年以降のジャズシーンの展望...などをしようというもので、ジャズ評論家の青木和富、佐藤英輔の御二人をスタジオに招き、心行くまで語りあってもらうという趣旨。進行役は我らが山本郁嬢。番組は2人が印象的だったアルバムをそれぞれ5枚ほど持ち寄ってもらい、それらについて語り合ってもらうことから、ジャズシーンの現在&未来像がなんとなく浮かび上がればベストと言うもの。
 
この特番でもやはり今シーンの中心にいる、グラスパーの『カバード』からスタートすることになった。ただ英輔氏は余り本場のアメリカのミュージシャンを取り上げることが無く、アルゼンチン、アフリカのマリ、キューバなどの周辺諸国のミュージシャン~ワールド・ミュージック・ジャズのアルバムを主に紹介。ジョシュア・レッドマンなどのアメリカの主力を紹介した和富氏とはだいぶ趣が異なっており、そこら辺もかなり興味深いところだと思う。ただ2人とも共通していたのは、これまでのジャズというものが今や大きく変質しつつあるのではないだろうか...、という点。ジャズはどんどん拡散しつつもその本質を保ち続ける...、というぼくの考え方にも近く、大きく頷けるものだった。
  
 
特番のほうは最後に柳楽氏のダニー・マクシャンに対抗するように、英輔氏が現代サックスの代表格、クリス・ポッターの最新作を紹介、和富氏は今年NYで亡くなった鬼才、菊池雅章の代表曲「ダンシング・ミスト」を紹介、冥福を祈りつつ幕を閉じることにした。「テイスト・オブ・ジャズ・スペシャル」の方も、日頃余り耳にしないようなジャズ音が聴かれるはずで、愉しみにしてもらいたいもの。 また来年も番組よろしくお願いします。
【今週の番組ゲスト:音楽評論家の柳樂光隆(なぎらみつたか)さん】
M1「Don't Even Care/ROBERT GLASPER」
M2「FOR FREE?/KENDRIC LAMAR」
M3「DON'T UNPLUG MY BODY」
M4「The Urban Legend/狭間美帆」
M5「NO EYES/DONNY McCASLIN」 

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