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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.462~市原ひかりのボーカル作】 

 
 平成最後のこのコラムで、ぼくは「平成とジャズ」等と言う大層なテーマで書いてみたのだが、その最後でこれからのジャズ(令和のジャズ)に結構期待している...とも書き加えた。ただ一つそこで忘れていたことがある。それはこれからのジャズの領域では、ボーカルがかなり重要な意味を持って来るのでは...と言うこと。このボーカルとは、所謂ジャズボーカルだけでなく、ラップなどもその中に含まれる訳だが、これ等広範囲のボーカルの持つポップス性が、これからのジャズにとって意味合いを増す...と言う風に思えてならない。ジャズの本来持つポップス性、エンタメ性を色濃く彩るのがボーカルだと思うからこそ、ぼくは現代のボーカルにもっと注目して欲しいと思っているのだが...。

 まあこの問題は何時かもう少し詳しく書きたいと思うが、まず今回どうしてボーカルを...と言うと、今回の番組ゲストが素敵なボーカルアルバムを出しからに他ならない。市原ひかり、若手女流トランぺッターとして実力・人気共に、抜群の存在として知られる彼女。そのひかりんの父親は人気ジャズドラマーの市原康で、我が早稲田ジャズ研の後輩でもある名手。そんな関係で彼女のことを知ったと言うよりも、デビューアルバムを出す直前に色々話していたら、市原康の娘だと分かり、いよいよ彼女への関心が高まったと言うことなのだが、それ以来新作を出すとスタジオに遊びに来てもらうことも多く、その成長振りを目の当たりにしてきた訳なのである。そんな彼女が最近はステージでボーカルを披露することも多いと聞いており、スタジオでもボーカルのアルバムでも...等と希望を語っていたのだが、それがまさか実現するとはいささか驚きでもあった。

 数年前にアメリカのジャズミュージシャンと結婚した彼女、デビュー当時の可憐な可愛らしさからピンクの髪に染めたいささかパンク風の尖がったファッションの女性に変身。その彼女に唄うことを勧めたのはあの日野ちゃん(日野皓正)だと言うが、彼のアドバイスに従って本格的にボイストレーニングなどに励み、ライブでの反響の良さ等も相俟って、担当ディレクターが今回ジャズボーカルアルバムを出すことを決めたと言う次第。これが想像以上に素晴らしいアルバムで、これからのジャズボーカルの進む方向の一指針(いささかオーバーだが...)にもなりそうな予感すらある。アルバムタイトルは『シングス&プレイズ』で、彼女も敬愛するあの唄うトランぺッター、チェット・ベイカーのものと同じ。かなりチェットを意識した所もあるが実に軽やかで明快、モダンなセンスに溢れた好ボーカル作品なのである。


 いまジャズアルバムは売れないし、余り発売もされないのだが、ことボーカルに関しては結構な賑わい。と言うのも自分探しなどと言うことで、OL達が通うジャズボーカル教室も結構お盛んな様子。そこの卒業生達でボーカリスト予備軍もかなりな数になっており、そうした女性たちが名刺代わりにアルバムを出すことも多く、結構な賑わいになっているのだ。しかしこうしたアルバムはスタンダードソングの数々を、レッスンで受けたボーカル術を踏襲、自身の思うジャズボーカルの枠組みに押し込んだものばかり。

 
 ひかりちゃんのアルバムにはそうしたくだらない枠を取り払い、自在に自身の歌いたいものを歌った...と言う、自由な感情・感覚に溢れており、極めてモダンでありジャージー、そしてポップでもあると言った具合に何とも言えない心地良さなのである。今回スタジオに来てくれた彼女、アルバムジャケットも自身のペンで自身の顔をシンプルに描き出し、選曲などにも心したなど...と、全て手作りだと嬉しそうに語ってくれたが、この自由な感性を何時までも保ち続けて欲しいもの。こうした自由なボーカルが、ジャズのこれからの未来を形作っていくのでは...と思わされる、ロサンジェルス録音の好作品でした。

【今週の番組ゲスト:ジャズトランぺッターでジャズヴォーカリストの市原ひかりさん】
先月、リーダーとして9枚目、ヴォーカリストとしては初めてのアルバム『SINGS & PLAYS』をリリースされました
M1
My Funny Valentine
M2How My Heart Sings
M3Be Bop Lives
M4But Beautiful
 


          

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