「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中(再放送は毎週金曜日 18:30~19:00 ※特別番組放送により休止の場合あり)。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.690~MPBの大物たち】
今年の夏は異常ともいえる熱波襲来、これは日本だけの現象かと思いきや、世界的規模での異常気象らしく、この地球はこれからどうなってしまうのか...。そんな異常気象も関係してか、この所ワールドワイドな規模でミュージシャンやシンガー達の訃報が次々に舞い込んでくる。寂しい限りである。
その筆頭はぼくの御贔屓の一人、フランスの女優にして歌手、モデルのジェーン・バーキン。人気歌手のセルジュ・ゲンズブールとの間に出来た実娘~女優のシャルロット・ゲンズブールの存在でも知られている彼女だが、何よりもその名前が有名なのは、あのエルメスの高価なバック「バーキン」の名前の由来になった女性だということ。まさにワン&オンリーとも言える個性的かつ神秘的な美貌の持ち主で、その歌唱も決して上手いとは言えないが、実に味わいのある詩情に富んだ旨い歌い手でもあった。今ぼく自身は人生の終活活動真っただ中で、色々とアルバム整理などもしており欧州関連特にシャンソンやロマ(ジプシー)ものなど、フランス関連なども次々に廃棄しているが、彼女のアルバムだけは捨てられずにとって置いてある、大事な存在の一人。フランスと記したが生まれはイギリスでフランスでの活躍で知られているが、本籍はイギリス人かも...。
そして驚いたことにブラジルのポピュラーミュージック=MPB(ムジカ・ポピュレイラ・ブラジル)の大物が3人、この7月のほぼ同じ頃に亡くなってしまった。これは小野リサさんなどと一緒にブラジル音楽の普及に貢献している、フルート奏者の城戸ゆかさん(古くからの知り合いでもある)のフェイスブックで知ったのだが、特にブラジルの異常熱風にやられた訳でも無いだろう。だが実にびっくりもしたし残念でもあった。その3人とは、まずピアニストにしてアコーディオン奏者やシンガー等々、実にマルチに活躍していた、ボサノバなど全ゆるブラジル音楽の重鎮とも言える存在のジョアン・ドナート。そしてブラジリアンジャズシンガーの第一人者、レニー・アンドラージ、更に1950年代からMPBの中心メンバーでもあった大ベテランの女性シンガー、ドリス・モンティス。3人の中ではドリス・モンティスはもうとっくに亡くなっているとばかり思っていたので、それも驚きだったがなんと50年代から活躍し続けた...とは、まさに凄いの一言である。
3人の中ではやはり重鎮ジョアン・ドナートが、小野リサなどとの関係もあり最もその存在が知られる人だと思うが、何でもこなす器用なプレーヤーであると共に、実にセンスの良いジャージーな楽園音楽を提供してくれる、本当に素敵なブラジリアンだった。軽やかながら含蓄のある...意外に有りそうでないその独特なドナードミュージックは、もう永遠に聞かれない。そしてレニー・アンドラージ。彼女は前述したようにブラジルのジャズシーンを長いこと背負ってきたシンガーで、アルバムもかなり数多く出している筈だが、日本で出されたのは確か2枚ほど。それだけにその実力のわりにその名前は知られていないのは残念なことだが、その日本で紹介されたアルバムも素晴らしいもの。彼女が歌うジャズスタンダードには、ブラジル独自のサウダージ(寂寥感)が漂い、アメリカなどのジャズシンガーとは一味違う香匂が漂っていた。それがブラジリアン特有の熱気とない混ざり、独得な風味を醸し出しており、もう少し日本でも評価されていいシンガーだったと思う。
いずれにせよジェーン・バーキンをはじめ、ジョアン・ドナードなど3人のブラジリアン達、その冥福を偲びたい...
【今週の番組ゲスト:3週連続のラテン特集① チカブーンのリーダー 森村あずささん】
M1「Sandunguera / Los Van Van」
M2「El Buey Cansao / Los Van Van」
M3「Billie Jean / TONY SUCCAR」
M4「SUKIYAKI / MIMY & TONY」