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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.426~東京ジャズ2018】 

 今年も行ってきました「東京ジャズフェスティバル」。9月最初の土曜、日曜と言うことで秋を告げる重要な季節イベントでもある。そして今年で何ともう17回目、ぼくは1回目からの皆勤賞、17年も通い続けているんですね。12回目は確か調布の味の素スタジオ、そして3回目からは有楽町の東京国際フォーラムAステージに変わった筈。更に昨年からは場所を主催のNHKのお膝元、渋谷NHKホールに移しての開催。1、2回はハービー・ハンコックのプロデュースと言うことで、ジャズだけでなくワールドミュージック色も交じえオーラスには全員が登場する豪華なセッションも組まれ、ジャズとワールドミュージックの競演・共演、如何にもフェスならではの興奮の趣向もありかなり興味深い内容だった。だが東京国際フォーラムに移ってからは、次第に普通のコンサートの積み重ね...と言った感じに変わっていき、更に昨年NHKホールに移ってからは、会場外のイベントや出店なども何ともパッとせず、如何にもNHK管理と言った感じで今一つすっきりしない面持ち。今年はそこら辺が...と思ったが全体の感じは昨年同様、今年は2日間とも雨模様だっただけに、よりお祭り色は薄くなってしまった感もあった。

 
初日土曜日の昼の部はエレクトリックポップ&ロックユニット「コーネリアス」のステージで開始されたが、どうもジャズフェスのオープニングを飾るグループとしては不向きな点は否めない。映像も使った新たな挑戦を図るユニットであるのは分かるが、ジャズフェス的要素は皆無。客もかなりな違和感を覚えた様で、野外のステージに繰り出す連中もいた。続いては今年のフェスの目玉のひとつ「コンテンポラリー・ジャズ」を牽引するリーダー格、ピアニストのロバート・グラスパー率いる注目のスーパーユニット、R+R=NOWの登場。このユニットはグラスパーを始めクリスチャン・スコット(tp)デリツク・ホッジス(b)等の若手の精鋭達勢揃いのユニット。ジャズとヒップ・ホップの融合などがこのユニットのテーマでもあり、かなりそちらよりのサウンドかと思いきや、若々しくはあってもかなりジャズのフォームを意識したもので、ロートルのぼくなどはホッとしたし、興味深く聴くことが出来た。特に目を引いたのはジャスティン・タイソンのドラム技。びしっとヘビーでいてよく弾む、今を象徴するドラミングには魅了された。

 その日の夜の部はバルカン出身のピアニストティグラン・ハマシアンのトリオから。東欧バルカンのミュージシャンは変拍子ビシバシの演奏を得意としており、その若手代表格がこのハマシアン。爽快とも言えるほどにジャズと民族色とを融合、変拍子プレーも光っていた。そして登場は御大ハービー・ハンコック。大体そのステージの感じが想像できたが、やはりその通りで「ヘッド・ハンターズ」時代のヒット曲の数々を今風にアレンジしたこの所のステージと同様のもの。アフリカ出身のギタリスト、リオネール・ルケエやグラスパーのユニットにも参加していたサックスのテラス・マーチンのプレーが印象深く、御大はまあ相変わらずと言った感じ。


 そして日曜日の昼の部。ぼくの期待はこのステージにあった。最初はジャズコーラス、マントラこと「マンハッタン・トランスファー」。もう40年以上活動を続ける超ベテラン・コーラスグループだがお馴染みのメンツはジャニス・シーゲルなど女性陣だけでリーダーだったティム・ハイザーなど男性陣は皆亡くなって今はいない。
だがさすがにNYのステージで鍛えられただけにエンタメ精神に溢れた実に愉しいステージだった。そして迎える今回のフェスの華、キューバの至宝ディーバ、オマーラ・ポルトゥオンドと新進ピアニスト、ロベルト・フォンセカのステージ。オマーラは90才を超える高齢。ステージでは椅子に座っての歌唱だったが歌声は艶を失っていない。日本のサルサバンド、オルケスタ・デラ・ルスもゲスト参加、バンドの歌姫NORAとのデュオなどは涙が出てしまうような、微笑ましくも愛らしく素晴らしい2重唱。オマーラは「さくら・さくら」を日本語で唄ったりとサービス精神も旺盛でファンを魅了し尽くす。彼女の最後の来日公演(?)だと思われるだけに盛り上がりも最高、来て良かったと心から思わせられるステージだった。

 
 最後の部はくねくねギターの名手ジョン・スコフィールドのユニットと我らがサダオさん(渡辺貞夫)のフルバンド公演。昨年は正にサダオさんフェスの感じで、ファンに強烈な印象を残したが、今回のサダオオーケストラは精鋭揃いだけに良くバンドも鳴っていてアンサンブルも見事、それなりに興味深いものではあったが昨年のあの神技を聴いているだけにちょっと物足りない感じもあった。しかしそこはサダオさん。多くのファンは彼の妙演に感激の様子。流石に大ボスである。

 まあ全体はざっとこんな感じだが、オマーラのステージが無ければフェスのお愉しみ感

も大分薄いものになってしまったのは間違いなく、来年はそこら辺の色をもっと強めて欲しいと思ったのは、果たしてぼくだけだったのだろうか...。
【今週の番組ゲスト:ジャズサックス奏者でボーカリストの佐藤洋祐さん】
新譜「ふるさと」から
M1「みかんの花咲く丘」
M2「ふるさと」
M3「海」
M4「切手のないおくりもの」






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