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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.287~海野雅威】

 今や若手のジャズミュージシャンの多くが、本場アメリカの音楽大学~バークレー音楽大学などを出ており、それは男性プレーヤーだけでなく女性もそうした例が多い。例えばジャズピアノの世界でも、上原ひろみ、山中千尋、片岡真由子等など、ほとんどがバークレー出身で海外の音楽(ジャズ系)大学出身でないと通用しない...といった傾向すら見える、とも言えそうなほど。かつてはアメリカに渡ると言うのはかなり大変なことだったが、今は本場アメリカで学ぶことは、まずジャズプレーヤー&シンガーになる前提条件とも言えそうなのである。しかし本場でミュージシャン生活を続けていくというのは本当に大変なこと。その大変さを分かりつつ、またそのプレーを日本でも高く評価され、ミュージシャン生活も安定していながらも、本場NYでミュージシャンとして再挑戦を図る志の高いミュージシャンもいるのだ。そうした一人に、今やNY歴10年を超した実力派のピアニスト、海野雅威がいる。

 
海野くんは東京芸大出身の俊才。大学時代からジャズに目覚めたが、卒業後はぼくのクラブ仲間にして今やJ-ジャズの重鎮のベーシスト、チンさんこと鈴木良雄がその才を高く評価し、自身のコンボに抜擢、一躍注目を集めることになる。ぼくはチンから海野くんの素晴らしさを聞いており、大学を出たばかりのころのプレーも耳にしているが、その時に直ぐ「これはかなりな大物」といった印象を持った。その後08年には、今は亡き伊藤八十八氏のプロデュースでデビューアルバムを吹き込みこれも好評、ピアニストとしての地歩を固めた。しかしボスのチンさんや友人の中村健吾など、本場で経験を積んだ連中の話を聞くうちに、彼の中でNYに進出する夢が膨らみ、とうとう現地に渡ることにする。それからはその実力が徐々にNYのミュージシャン達からも認められるようになり、クラブギグ(仕事)やレコーディングなども増えて来て、どうにかNYでもやっていけるようになり、はや10年余り。

 
彼は毎年里帰りして国内ツアーなどもやっているが、時々近況報告をしに番組に遊びに来てくれる。今回もまた昨年11月のツアーに合わせて、自身のアルバムや彼がセッションメンバーで参加したアルバム、10数枚を引っ提げスタジオに登場、色々と彼のギグ状況、NYのジャズシーンなど面白い話を聞かせてくれた。ツアーには奥さんも同行しており彼女もスタジオに顔を見せてくれた。数年振りの登場だったが、相変わらず飄々、恬淡とした佇まいはかなり好感が持てるもので「厳しいですが、ようやくNYでも認められるようになりましたよ...」と嬉しそうに語ってくれた。たまたまディスクユニオンのごみ箱(CDボックス)漁りで、彼が入ったアルバムを見つけ買い求めた話をしたらば、このアルバムでしょうとバッグの中から取り出して来た。ベテランドラマーのリーダー作だが、メインは海野くんで、これがなかなかのアルバム。しかし「これはぼくのものでは無いので、今回は掛けませんよ」と宣言されてしまった。まあそれも良しであるし、彼が向こうで作ったアルバム(自費出版のものも数枚ある)もどれもその研鑽の成果を窺わせる、実に素晴らしいものばかりだった。
 
 
彼はこの収録が終了すると、その二日ほど後にまたNYに戻ってしまった(11月末)のだが、収録の次の日が亡き恩のある伊藤プロデューサーを偲ぶ追悼会。この話を知らされていなかった彼は大変に驚き、ぜひ参加したいと言うので、直ぐに発起人と連絡を取り参加OKとなった。更にその会で行われる大物達が集うジャズセッションにも、参加することも決まった。その会でのセッションで彼は生き々とピアノを奏で上げ、その実力を多くのジャズ関係者に再認識させた。会場で彼は奥さんと一緒にわざわざ僕のところに来て、「大変有難うございました」と挨拶してくれ、奥さんからも大感謝されてしまった。 番組出演が生んだまさに「瓢箪から駒」事件だったが、彼の演奏が好評だっただけに、ぼくも少しばかりいい気持でありました。海野君、これからもNYで頑張ってね!
【今週の番組ゲスト:NEW YORK在住のピアニスト 海野雅威(ただたか)さん(左)。右は海野さんの弟さんです】 
M1「Some Other Suite/海野雅威」
M2「Whele You Were Out/海野雅威」
M3「The Rabbit /EYAL VILNER Big Band」
M4「Amazing Grace / WINARD HARPAR」

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