「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中(再放送は毎週金曜日 18:30~19:00 ※特別番組放送により休止の場合あり)。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.681~新宿「J」とバードマン幸田の復活】
ジャズの街~新宿のジャズ文化盛り上げに大いに力のあったジャズクラブ「J」。この店が突然閉店してしまって早3年余り、ぼくら早稲田大ジャズ研OBの心の拠り所だったし、小野リサや佐藤達哉等々、この場所から多くのミュージシャンやシンガーが巣立っていった。何よりここではかつて「テイスト・オブ・ジャズ」の月1回ほどのライブ収録も行っており、店の40周年記念で早稲田のホテルを借り切りパーティーを大々的に行った時には、それに呼応した形で「新宿J物語」と言う1時間の特番を、タモリなどをゲストに迎え制作もした、我がジャズ番組にとっても大変に関わりの深いジャズスポットでもある。
オーナーでマスターのバードマン幸田(稔)くんは、ぼくとジャズ研の同期。「片倉ハドソン」と言うお堅い一流企業の実直サラリーマンだった彼が、脱サラして店をやる...(前のオーナー店長は海水浴中に水死)と言った時には、仲間はほぼ全員反対したのだが、ジャズへの想いは止められず店を受け継ぎ、新宿では「ピット・イン」「ダグ」に次ぐ由緒あるジャズスポットへと育て上げた。店の維持には大変な苦労があったことは色々と承知しており、中でも一時経営が困難な折には、タモリそしてその師匠格の漫画家~赤塚不二夫氏の多大な援助で立て直しに成功した経緯...等など、色々と苦労話は尽きなかった。だがそれにしても突然の閉鎖、それも40周年の大々的パーティーを敢行、店のあれこれを記したジャズ本も出した(早稲田大学報でぼくが書評担当した)翌年でもあっただけに、これには本当に驚かされたものだった。
まあコロナ禍の始まりの直後だけに、あのまま続けていたならば...と思うと、閉店決定は賢い選択だったかもしれないが残念ではあった。だがそれ以上に心配だったのは、バードマン幸田くんの消息。誰からの携帯も一切受けつけず、全くの音信不通。ぼくも何回か連絡取るも当然連絡出来ず。クラブ仲間や先輩・後輩だけでなく、番組にゲスト出演してくれるミュージシャンやシンガー達からも、「幸田さんどうしたんですか...」と聞かれることしばしば。応えようもなくかなり時間は過ぎて行ったのだが、昨年の秋ぐらいから一部の面々には、連絡を取り出した...と言う話が聞こえてくると同時に、暮れの早稲田大の稲門会(OB会)音楽祭の司会を、先輩の露木アナ(元フジTVアナ)と一緒に行うらしい...と言う情報も漏れ聞こえて来た。「そうか元気になって本当に良かったなー...」と少し安堵の気持ちにもなった。
それが今年になって突然に彼からTELが入り、クラブの後輩ミュージシャンが新しいアルバムを出したので、番組に出演させてやって欲しいとの依頼。彼からの頼みならば二つ返事でOKなので快諾したが、その折色々と聞いてみると、相当に悩み体も精神も病んでしまい、入院生活をそれもかなりの間強いられていたらしいのだ。その大変さは聞く以上のものだったと思うが、70代後半よく耐えてそれなりに元気になったものと、ある種感激したし、番組に遊びに来た彼とも付き合いのあるミュージシャン達には、それなりにそのカンバック振りを伝えたが、誰もが一様に喜んでいた。このことからもバードマン幸田と言う男は、音楽仲間からの信頼も厚い好漢だった...と、改めて感じ入った次第。この所ぼくや仲間達の高齢化に伴い、同じ世代のミュージシャンやシンガー、ライター、制作者等々の逝去が続いている。この原稿を書く直前にも、同期のまとめ役=クラブの幹事長だったTくんが闘病の末に逝去という知らせが入る。彼は芸大の美術科を受験するため3年も浪人,結局ダメで早稲田の文学部に潜り込んだという、柔道部出身の猛者だったが...。それに対しバードマン幸田君はこの年齢で良くカンバック出来た...と、心からその復活を喜びたい思い。まだ完全ではないけれど出来ればまたジャズ関連の何かを...、と言うその手助けを...とぼくはいま切に思っている所。その折にはミュージシャンやシンガーもきっと駆けつけてくれる筈ですが...。
【今週の番組ゲスト:ピアニスト秋田慎治さん】
新譜『Sincerely Greateful』から
M1「Next day you left」
M2「Beyond the Frame」
M3「Hate you cuz I Love You」
M4「海」