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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.421~追分通信2 軽井沢ジャズフェス】

 台風一過ようやく追分も暑さも一段落、こうなると夏本番がかえって涼しくなるのでは...と言った心配をしたのもつかのま、ふたたび日本全国が酷暑に襲われている。この台風12号が通り過ぎた翌日の早朝、恒例の一万歩ウオーキングで御影用水脇を歩くと、台風一過だからかも知れないが...用水の鴨ご一同様の数、前には20羽前後などと言っていたが今回正確に数えるとなんと48羽、ほとんどがコガモだがこれは驚くべき数であり、3家族でこの数何か嬉しくなってしまうほどの壮観さ。この夏はひょっとして何かいいことがあるかも...。

  さて台風襲来当日の28日(土)、今年もまた軽井沢ジャズフェスが滞りなく行われた。7回めである。御代田町最大の祭り「竜神祭」は早々と中止が決定され、町の広報車が慌ただしくその中止を告げ廻っていただけにいささか心配だったが、会場の軽井沢大賀ホールに着くと開場15分前にも関わらず、例年以上に入場者で混雑、これはチケットの売れ行きも良かったのでは...とスタッフの一人に聞いてみると、やはりそのようだとのこと。まあこれで主催者「88プロ」の伊藤妙子女史(伊藤八十八氏未亡人)も一安心と言った感じ。彼女に良かったですねと声掛けしてから楽屋に向かう。奥に陣取る構成・演出の高平哲郎氏とサックス演奏と司会を兼ねる誠一ちゃん(中村誠一)に挨拶をし、タモリの不倫週刊誌ネタなど友人をネタにバカ話をして客席に...。ほぼ満杯の客席に主催者でもないのになぜかホッとし、これならばと...演奏の方にも期待が膨らむ。

 肝心のフェス内容だが、今年は出演者の顔ぶれからも余りジャズ色は...と言う感じもあったが、やはりそのようで...「純生ジャズ」を期待した向きにはいささか物足りなかったかも知れない。だがリゾート地でのジャージーな音楽祭としては、それなりに良かったようにも思える。ただ全部で6つのユニットが登場、午後2時開始で6時まで15分間の休憩をはさ4時間6バンドの出演。セットチェンジなどの関係もあってか一つのユニットの演奏時間が短めな印象もあったのは残念な所(これはトリを務めるパブロ・シーゲル。ジャズタンゴユニットに時間を割いた為もあるかもしれない...)。

 フェスのオープニングは妙子さんが是非聴きたかったと言う、西脇辰弥のクロマティック・ハーモニカユニット。全体をハーモニカの巨匠トッーツ・シールマンスに関するナンバーでまとめた辺りもなかなかのステージ構成で、「真夜中のカーボーイのテーマ」「ブルースエット」等お馴染みのナンバーが並んだ演奏も実に心地良いもの。驚いたことには彼がハーモニカを始めたのは30才になってからだと言う。それまではピアノをやっていて、ある日突然ハーモニカの音色に惹かれこの楽器を始め、今では第一人者だと言うのだから...、まあこんなこともあるのだ。
 次は先日番組にも登場してくれたギター&作曲、プロデューサーの鳥山雄司のデュオユニットで、相方はピアノの和泉宏隆。「オーケーボーイズ」の名称でも活動をしていた2人は、その名称通り幼少からの慶応ボーイで、慶応高校時代からのバンド仲間だけに息の合った演奏ぶり。鳥山の代表作「世界遺産のテーマ」等を演奏、彼ら自身も言っていたように「僕らはジャズでないし、なんと言ったらいいのか...」と言った感じで、フュージョンとも言い難く正に2人だけの音楽世界と言ったものだが、彼ら目当ての客もいたようで、CD売り場で彼らのアルバムを探している人も結構いたようだ。続いて台湾のバイオリン奏者ダフニィ・スーのユニット。ただし突然登場しコメントも無く演奏、観客の多くは彼女が何者か余り良く判らなかったのでは...。

 ここで15分間の休憩が入り、続いては結成50周年目と言う大ベテランのコーラスグループ、タイム・ファイブの登場。彼らが手本にしている「フォー・フレッシュメン」張りにそれぞれが楽器を奏でながら、見事なコーラスハーモニーを聞かせる。中々の達人技だったがどうも音響が良くなく、今一つその魅力が伝わらない感もあり、その音響問題は続く誠一&寺久保エレナ・サックスユニットでも感じられた。NYで活躍中のエレナは夏のこの時期に日本へ里帰りで、確かこのフェスでは皆勤賞の筈。本場仕込みの力強いアルトプレーで毎回フェスを盛り立ててくれるのだが、今回は誠一ユニットへの客演の形で、いささかその本領発揮と迄は行かない感もあった。司会も兼ねる誠一ちゃんは流石ベテランの風格充分のプレー。ただこのユニットがどういう訳かベースレス。本来のベーシストが都合つかなかったのかも知れないが、ここは今回唯一のジャズユニットだけに誰かトラ(臨時)のベーシストを入れるべきだったと思う。

 今回のオオトリはフェスの目玉とも言うべき、パブロ・シーグレルの「ジャズ・タンゴ・アンサンブル」のステージで、シーゲルは本場のミュージシャンとのユニットでグラミー賞も受賞している。今回は日本のミュージシャンとの特別ユニットだったが、これは期待通り聴き応え充分なものだった。今や帝王アストル・ピアソラ亡きあとのポストピアソラを担う第一人者のシーゲル。彼のかなり難解なオリジナルタンゴをメインに、ピアソラ・ナンバーも2曲ほど。鬼怒なつき、ヤヒロ・トモヒロ、そして今や小松亮太と並ぶ日本のバンドネオンの代表格に成長した北村想など日本のミュージシャンも奮闘、ジャズタンゴと言う新しい分野の創出にも力を発揮、シーゲルを中心にしたその力強くももの悲しさも秘めた演奏は、多くの観客を魅了した様だった。シーゲル・タンゴ・ユニットは1曲のアンコールをはさみそのままラストのセッションに突入。ここには誠一、エレナ、西脇の3人も加わりお馴染みの「枯葉」を演奏、フィナーレを華々しく飾ってくれた。これまでこうしたフィナーレセッションが無いことがいささか寂しく思えていたので、今回は色々曲折は有ったようだがこのフィナーレセッションが実現したこと、グッドでもあった。良い心持ちで会場を後にすると台風の風雨強しで、軽井沢駅までずぶぬれになりながらようやく到着。しかし「雨に唄えば...」で、結構軽やかな心持でした。来年もこのジャズ・フェス是非続いて欲しいものです。期待してますよ!

【今週の番組ゲスト:ジャズギタリストの松尾由堂さん】
新作「Song in Motion」から
M1Blue Violet
M2Time Thieves
M3Croquis
M4Sound of Snow
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