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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.459~平成ジャズ】                                      

 どんどん時代の閉塞・劣化状況が顕著になってきた感も強かった「平成」。それがいよいよ終焉を迎え、今度は「令和」と言う如何にも国家・権力統制を強める年号に代わるのだと言う。バブル崩壊後ずぶずぶと悪化の方向に落ち込んだ平成。それが数日後には終わり新元号に...、もう何をか況や...なのであるが、我がジャズ番組「テイスト・オブ・ジャズ」も今回が平成最後の放送。そこで毎月レギュラー登場のジャズ評論家、青木和富氏にお願いし、まあ如何にもベタな企画と言われそうだが、平成のジャズと言うテーマで時代を再検証してみようと言うことに決めた。青木氏がこの平成のジャズについて、どんなアルバムを選出し(別項参照)、どんな判定を示すのかは番組をお聴き頂きたい。

 と言うことでここでは、ぼく自身の平成ジャズ観~この30年余りのジャズ状況についてほんの少しばかり記してみたい。平成がスタートしたのは1989年。ベルリンの壁が崩壊、米ソ2大強国体制による冷戦構造、即ち社会主義=コミニズムの溶解が始まった年であり、国内的には日経平均株価が最高値を記録、バブル好景気を謳歌していた時代でもあった。音楽界としては昭和歌謡の女王、美空ひばりが亡くなったのがこの年最大の事件だったと思う。そして日本は2年後にバブル崩壊、以降はどんどんと奈落に落ち込んでいき、遂には安倍氏の登場により国内格差や差別なども頂点に達し、政治の無責任・貧困状況も極限と言う、まさに悪しきサイクルに落ち込んでしまっている...、とぼくはこの平成を見立てているのだが...。


 そして肝心のジャズだが、90年代以降のジャズは何か日本のこの悪しき状況とも通底し、中核が見えず活力も失くしてしまった感も強い。確かにこの平成、モダンジャズを推進してきた大物たちは次々とこの世を去ってしまい、今やソニー・ロリンズ、ウエイン・ショーター、リー・コニッツなどほんの数人の大看板しか残っていない。パット・メセニー、ウイントン・マルサリス、ジョシア・レッドマン、カサンドラ・ウイルソン等々、大物に代わる時代を担うプレーヤー、シンガーを何人かは輩出していても、当然のこととしてそうはいない。ジャズ100年以上の歴史の中で、全盛期の消えゆく残り香の時代が平成だったとも言えそうである。まあしかし平成とジャズなどは元々無関係なものだから、それも仕方ない所。
 ただ一時日本のジャズ=J―ジャズを元気づけていた感のあるジャズフェス。ニューポートフェス&ブルーノートフェスの国内版や斑尾ジャズフェスなど、大型ジャズイベントはことごとく頓挫、それに変わってフジロックなどの国内ロックフェスが台頭、それ等は今なお盛大に開催されている。これにはジャズ自体の衰退傾向も大きいが、ジャズイベントに関わっていた連中の商売根性、ジャズイベントを実施する時点で収益をトントンにする(=大手代理店と組みクライアントを捉まえ、その中身などには余り関心を向けない等々...)と言った考え方が、イベンターやジャズ関係者などに蔓延していたように思えてならないのは、今からすれば大変に残念なことと言わざるを得ない。

 加えて
これもわが国で顕著な傾向だが、マイルスやコルトレーン、ロリンズと言った時代を牽引していた、サックス&トランペットなどの、華々しくも雄々しい管楽器奏者のプレーから、平成に入ると殆どがピアニスト~それもピアノトリオの演奏にしかファンの関心が向かなくなってしまった(一部のジャズライターのせいもあるか...)ことも、ある種の停滞を生んだ要因ではないかとも思われる。確かにビル・エバンス、キース・ジャレット、そしてブラッド・メルドーなど時代を担ってきたピアニスト達の、この30年近い間に果たした貢献度は大きい。しかし々である、余りにも予定調和の感も強いピアノだけに、スポットが当たり過ぎな感は否めないし、これ等のピアニストは全て白人ばかり。それだけにジャズの漂白化傾向(?)が平成の時代は強まって来たとも言えそうだし、それに対し、ジャズを本源的に担う黒の復権が臨まれて来た...とも言えるかもしれない。
 元々ジャズと言う音楽は雑種性で、ラテン、ロック、クラシック等様々な音楽から活力を取り込み、自身の存命を図りつつワールドミュージックとしての色彩も強めて来たのだが、その導入力にいささかさび付きが生じて来つつあるとも言えそうだ。

 
そして来る「令和」。当然のことながらジャズとは直接の関係は無いのだが、この時代にまた新たな歴史が再構築されつつある様な予感は確実にしている。カマシ・ワシントンを筆頭にした黒人色を強く打ち出すプレーヤー達の台頭、イギリスの新たな波とも言える、シャバカ・ハッチングスなどアフリカ系移民の子弟群、そしてアクセル・トスカなど、ぼくの大好きなラテンジャズを始めとした、世界各地のワールドミュージック系ジャズプレーヤーの新星達。こうした彼らがこれまでのジャズの歴史とは、一寸異なった絵図をこれから描き出してくれそうな感もある。チャンジー(ロートル)のぼくにそれを見続けることが出来るかは色々と疑問ではあるが、出来るだけ観察は続けていくつもりです。よろしく!

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん
「平成のジャズ」というテーマでお話し頂きました。
M1The Doo-Bop Song / Miles Davis
M2Bye Bye Blackbird / Keith Jarrett
M3Spiral / Hiromi Uehara
M4Lifeline / Vijay Iyer & Craig Taborn
M5Don't Know Why / Norah Jones
M6Some Enchanted Evening / Sonny Rollins

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