11月9日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [テイスト・オブ・ジャズ]
2019/11/08(金) 19:00 番組スタッフ
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.486~村上ソングス】


 つい先日まで残暑厳しき折などと言っていたのが、このところめっきり寒くなって来た。ラグビーワールドカップ・ロスも加算され、寒さ・寂しさは更に増しつつあるのだが、この寂しき秋に因んだスタンダードナンバーも数多い。中でも最も有名なものと言えば、やはり「ニューヨークの秋」と言うことになるだろう。バーノン・デュークが1934年に書いた(作詞・作曲)このナンバー、当然ニューヨークの秋について唄っている訳だが、その詞はこんな風なもの。現代の文豪にしてジャズ通の村上春樹はこう訳している。


 「ニューヨークの秋はなぜこのように人の心をそそるのだろうか...。ニューヨークの秋は初めての夜の心の震えを運んでくる。(中略)宵闇を愛でる恋人たちはセントラルパークのベンチに寄り添う。それがニューヨークの秋。 わたしはまたそこに戻って来た」。
 これは村上春樹が文章を書き、それに和田誠がイラストを付けた「村上ソングス(中央公論社)」に収められたもので、全部で30近いスタンダードソングスを村上が選び、それについての思いを記した実にチャーミングな音楽本。村上、和田共にスタンダードに精通しており、特に和田氏はスタンダードソング・コンピレーションアルバムを幾つか残している程だし、一方の村上の方は作家になる前はジャズ喫茶「ピーター・キャット」(国分寺→千駄ヶ谷)のマスター。両者ともにこの分野に詳しく、その上良く食事などをする親しい仲。良い本が出来るのも至極当然と言った感じ。

 ただ惜しむらくは和田氏が今年の10月に急逝してしまったこと。この名コンビの作品はもう見れなくなってしまったのは寂しいが、週刊文春の表紙は相変わらず続いている様でなによりである。

 さて肝心のニューヨークの秋だが、ぼくは一度だけこの季節のNYを体験しているが、短期間の滞在だけに情緒もへったくれも無く、ライブスポット巡りと友人に会っただけ...。そう言えばこのコラムを担当してくれているO局長、彼はかつてNY支局長を1年間ほどやっていた筈(羨ましい限りですね)。彼にNY体験を聞いてもと思ったが...、余りこの詞の情緒を解するような男でも無さそうなので止めにした。この歌は最後にNYに戻ってきた...とあるように、どこか田舎街に長い間滞在しており、そこから大都市NYに戻ったばかりの男の心境を歌ったもので、「私が憎みつつも憧れ続けるこの街」などという詞も見られ、これは東京と言う大都会に対する多くの日本の人達の感情にも通じる所も多い筈。村上ソングスではこの歌に和田氏がセントラルパークからのNYの摩天楼を描いたイラストを付けているが、これがまたなんとも素敵なのだ。実に旨く・上手いのである。

 ところで摩天楼と言えば、あの9・11のNY同時多発テロで霧消してしまったビルもその一つ。その犠牲になった人達への鎮魂歌としても、この歌が良く使われる...という事実は余り知られていない。TV番組などでも良く流されるとのことで、これはNY在住の公認会計士の後輩から聞いた一口知識。村上ソングスでは、この歌の代表的歌唱としてテッド・ストレイターと言うシンガーのものを挙げているが、恥ずかしながらぼくはこのシンガー&ピアニストの存在を知らない。「アトランティック」にあるアルバムに収録されているそうだが、スモールコンボをバックに彼はピアノの弾き語りでこの曲を取り上げていると言う。まあそれなら一度調べてみる必要もありそうだが...、ぼくはこの曲の演奏ものではMJQ(ぼくがジャズに嵌る切っ掛けの1曲でもある)、そしてサックスの名手デクスター・ゴードンのものを挙げたい。そして歌ものでは、やはり名花ジョー・スタッフォード。彼女のそのものずばりの代表作『ニューヨークの秋』に尽きると思うのだが...。ここはひとつ、村上春樹先生のジョー・スタッフォードについてのお話などもお伺いしたい所ですが...。

【今週の番組ゲスト:THE DOOOD(ザ・ドゥードゥ)』のキーボーディスト 斎藤タカヤさん パーカッショニスト 松岡"matzz"髙廣さん】
9月にリリースされたアルバム『DOOODISM』から
M1Interceptor
M2GangDingBop
M3YEMAYA46
M4HYPNORISHA


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