9月9日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [テイスト・オブ・ジャズ]
2021/09/09(木) 19:00 番組スタッフ

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.591~ハービー・マン~】

 追分の山荘でCD整理をしていると、色々と懐かしく珍しいアルバムなどがひょこっと顔を出し、それなりの愉しさがあるもの。但し一枚見付けるとそれに聞き入ってしまい、なかなか作業が捗らないこともしばしば。そんな中今回拾い出した1枚がこのアルバム。ぼく等ジャズ黄金時代を堪能したチャンジー世代にとって、忘れられない存在のジャズフルート奏者、ハービー・マンの『アット・ザ・ヴィレッジ・ゲイト』(62年12月/アトランティック)である。

 ぼくが未だ大学生の頃から若きラジオ局員だった20代の頃、1960年代後半から70年代にかけてのジャズ全盛期。当時のファンは新宿や渋谷のモダンジャズ喫茶に通い、ジャズを聴き漁ったもの(アルバムが高くて買えなかった為なのだが...)だが、その頃客のリクエストも多く、良く掛かっていたのがこのアルバムだった。タイトル通りNYにかつてあった有名なライブハウス「ヴィレッジ・ゲイト」でのライブ盤で、ライブ演奏だけに演奏も長尺で、全部で3曲しか収録されていない。今人気盛り返しつつあるアナログ盤では、A面2曲B面1曲のみの収録となっている。アルバムの人気曲は何と言っても冒頭の「カミン・ホーム・ベイビー」。ここでベースを弾いているベン・タッカーのオリジナルで、メル・トーメの歌唱盤などでも人気を博した曲。数あるジャズ曲の中でもデイブ・ブルーベックの「テイク・ファイブ」と並ぶ最大のヒット曲と言えるが、当時はこの曲が掛かると「なんだこんなシャリコマ(コマーシャリズム)のナンバーをリクエストしやがって...」と、席を立って店を出て行くファンも少なくなかった...などとも、まことしやかに語られた曰く付きのジャズヒットチューンである。ぼくなども露骨に嫌な顔をしたファンの一人だったが、今はあの当時のこと反省しています。

 この人気曲がÀ面だけにその裏面の曲が何なのかは当時さっぱり気にしなかったのだが、今回その裏ナンバー=CDでは3曲目は、アメリカを代表する作曲家、ジョージ・ガーシュインの銘曲「イット・エイント・ネセサリー・ソー」であることに気が付いた。その上裏面一杯に収録されたこのナンバーの演奏時間はなんと20分弱。当時にしてはかなりな長尺ものなのだが、今でも結構最後まで飽きずに聞き通せる。これは中々凄いことで流石にこの当時10数年に渡って、ジャズフルート界の頂点に君臨していたハービー・マンだけのことはある。そしてもう一つ今回気付かされたのは、このメンバー構成。2人のパーカッション奏者が参加してこのライブを盛り立てているのだ。一人はチーフ・ベイ、そしてもう一人がレイ・マンティラ。2人とも今はもう物故してしまっているが、ベイの方はアフリカンパーカッションの第一人者、そしてマンティラの方は、つい最近までラテンジャズの第一人者として大活躍していた、この分野のボス格の一人。この2人の起用が無ければ、いくら大ヒット曲が収録されているとは言え、ここ迄人気も出なかったのでは...とも思われる。ジャズフルートの顔役にして商売人でもあったハービーの面目躍如といった所だろう。なお肝心のハービー・マンは2003年長年の癌との闘いの末、73才でこの世を去っている。ジャズ商売人でもある彼は、商売上手なユダヤ系で生涯になんと80枚以上の作品を残している。

 まあこうした今まで気付かなかった発見も幾つかあり、CD整理の道楽も中々に捨てたものでは無い。それにしてもジャズフルートシーン、日本では何人かの若手女流奏者も育っているのだが、本場アメリカでハービー・マンや彼に続くヒューバート・ロウズ以降、これと言った人材が出現していないのは寂しい限り。ラテンジャズの世界では相変わらず重宝されているが、肝心のジャズでもう少しこれといった人材の出現を強く望みたいところ。今回ハービー・マンの大ヒットアルバムを聴きながらそんなことを思った次第なのです。

【今週の番組ゲスト:ピアニスト、ヴォーカリスト、コンポーザーの橋本一子さん】
12年ぶりのアルバム『view』から
M1「view」
M2「blackbird」
M3「giant steps」
M4「blue」



 

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