8月26日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [テイスト・オブ・ジャズ]
2021/08/26(木) 19:00 番組スタッフ

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.589~最近読んだ本から~】

 信濃追分での山荘生活では、1時間近いウオーキングや音楽鑑賞、読書などほとんどステイホームなので、軽井沢の町や人気のアウトレットモールに出没することもなく、生来の怠け者なので庭も草ぼうぼう。まあ例年だとこうした生活に、ラグビーのメッカ~菅平詣が加わるのだが、昨年からはコロナ禍真っ盛りで早稲田大などグランド見学が禁止。昨年は合宿なしだったが今年は合宿での練習試合なども組まれており、それだけにどうするかだが、やはり一度は菅平には上がりたいもの。
 その山荘生活の大きなポイントの一つになっている読書。軽井沢の町立図書館や御代田、小諸など近隣の図書館を廻り、読みたいものをかき集め期日までに読み通そう...と思うのだが、これが意外にままならない。チャンジーだけに視力の問題などもあり、読むスピードが目に見えて落ちている。それだけに7~8冊借りるとその半分ほどは、画集や絵本、読み易い音楽ムック本にしているが、東信の図書館では数も多くないし絵本などは児童室なので、ぼくの様なチャンジーは余り長くは居られない。まあそう言いながらも絵本探しは愉しいし、評論家の柳田男もかつて「日本の大人ももっと絵本を見る(読む)様になれば、日本も落ち着いた良い国になるのだが...」と書いていた筈。ぼくもその意見に大賛成なのだが、絵本についてはまた改めて書きたいと思う。そこで今回は今年夏に図書館から借りて読んだ、20数冊の中から印象に残った2冊をここで紹介してみたい。

 その1冊は翻訳家の内藤里永子のエッセイ「森の生活」、そしてもう1冊は現役のTVドキュメンタリー作家、河野啓のドキュメンタリー「デス・ゾーン~栗城史多のエベレスト劇場」で、こちらは昨年の開高健ノンフィクション賞作品。この両書に通底しているのは高山経験、即ち本格の登山、クライマーだということ。内藤さんの本には山のことは直接には出て来ないが、彼女が町を離れたった一人で10年間近く森の生活をしていたのは、同じ翻訳家仲間でかつてクライマーとしても行動を共にした親友を失くしたことが切っ掛けになっている。一方の栗城のドキュメンタリーは、「ニートのクライマー」としてTVなどでも話題を呼び、自身の登山の模様をSNSで生中継し、その登山スタイルが賛否を呼んだ若きクライマーの実像に迫ろうと言うもの。8回目のエベレスト挑戦で命を落とした若き栗城の話なので、当然山岳が主舞台となる。 

 絵本作家、ターシャ・デューダなど数多くの翻訳で知られる内藤さんの森の生活の舞台は、中軽井沢千が滝に広大な敷地を誇る「国営小鳥の森」に隣接した小さな小屋。彼女自身はその森について直接には紹介していないが、中西悟道(日本野鳥の会創始者)のレリーフがある「小鳥の集まる森」と記されており、こうなれば星野リゾートに隣接したこの森しかない。たった一人でこの深い森の小屋で孤独に生活し、そこで思索すること。親友の死など親しい人達の死、深い森の中での孤独な黙想、訪れる小鳥との会話等、その思考は森羅万象に及び読む者の心を深く動かす。追分と中軽、ある時期は結構近くに暮らしていながらも、思うこと・感じることはまさに月にすっぽん、深く反省である。

 一方栗城の方は「エベレスト劇場」のサブタイトルにもある通り、「7大陸最高峰無酸素単独登頂」を売り物に、若さをばねに怖いもの知らずでがむしゃらに山頂を目指す。エベレスト以外は全て登頂に成功したのだが、「他とは格が違う...」と言われるエベレスト登頂は、全く歯が立たず最後は滑落死でその若い生涯を閉じてしまう。ぼくの知り合いの山岳関係者(一応ぼくも日本山岳会会員です)は、異口同音に彼のエベレスト挑戦はただ死にに行っている様なもの...と、その挑戦を評していたが、多分その通りだったのだろう。その上SNS中継だけは単独挑戦の様に見せながらも、実際は多数のシェルパがサポートなど、そのキャッチフレーズに疑問符が付く行動も数多い。著者はかつてTVマンとして栗城の山岳ドキュメンタリーを作成した仲だが、行き違いがあり長い間音信不通だったと言う。その彼が死亡のニュースを聞きドキュメンタリーを書くことを決意、北海道放送のディレクターだけに、同じ北海道、道南出身の彼の友人や山の先輩などをこまめに訪ね、その証言を集め登山家像を描き出すが、小柄でなよなよとしたその姿は、ぼくの知る多くのヒマラヤクライマーとは大分様相は違う。但しスポンサー獲得法とかSNSの利用など、これまでのクライマーには無い新たな登山家の姿を実現した。河野は栗城自身もエベレスト登頂は困難だと自覚しており、その為に南壁最難ルートを選び、結局死亡してしまった、劇場型登山家だったのでは...と推測しているが、これからも次々に栗城のようなクライマーが登場することも予想される。その生き方、行動パターンなど色々考えさせられる力強いドキュメンタリーで、一気読みしてしまった。静と動と言うか対照的な2冊だがどちらも興味深い内容だった。
 
 そう言えばもう何年も、少しは手応えのある高山に登っていないなーと、これ等を読んでまた反省の念が沸く。どうもチャンジーのぼくは、反省の毎日なのです。

【今週の番組ゲスト:ドラマー 高橋徹さん】

初リーダーアルバム『TOKYO GROOVIN' HIGH』より
M1「Theme Of Tokyo Groovin' High」
M2「Limbo Jazz」
M3「Forest Flower」
M4「When You Grow Too Old To Dream」

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