8月27日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [テイスト・オブ・ジャズ]
2016/08/26(金) 19:00 番組スタッフ
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.320~追分山荘通信16その2】

 追分の山荘にはTVも無いし、新聞もとっていないので、情報収集はもっぱらインターネット。それだけに肝心のリオオリンピックなどはどうなっているのか、ほとんど分からずじまい。かろうじて7人制ラグビーだけはネットで試合視聴が可能で、ジャパンセブンズの面々の健闘に感激出来た。ただこのヤフーのネット情報、政治や外交問題などのニュース元が産経新聞と読売新聞と言ったいわく付きのものに偏っている感があり、その見解に相当イラついてしまう。若い人達の意見もこのネット情報がメインのようなだけに、現在の安倍政権のごり押し体質にも呼応し、これからの日本の進路、ここら辺りからもかなりやばい方向に向かいつあるなとネット情報だけで暮らしてみると感じとれる。

 まあそれはさておき、この8月だが信濃追分~軽井沢地域は概ね天候は良好だったが周りの山々の視界が全く良くない。お山(浅間山)も頂上まで見えたことはわずか数日ほど。また例年だとはるか南方に連なる八ヶ岳連峰から蓼科・美ヶ原へと続く長い稜線も、全部が晴れて見渡せたのは一日も無く、これは異変とも言える出来事だ。ラグビーの聖地、菅平には毎年2回ほど上がり、早稲田ラグビー部の仕上がり具合を点検するのが恒例だが、今年は何と3日も高原に上がり早稲田Aチームの練習試合を全て見てしまった。暇な男である。成績は今イチだったが若い面々の多い、伸びしろ豊かなチームだけに、この秋の対抗戦も大いに愉しみで、またまた秩父宮ラグビーに通わないとならない羽目になりそうだ。

 ところでこちらに来ると、読書と音楽鑑賞(と言うよりは原稿書き)がメインになるが、軽井沢と御代田の町立図書館を最大限活用し、様々な本を漁った。中でも仕事に直結する台湾関連では、台湾初めての女性総統・蔡英文の自叙伝と、直木賞を獲得した東山彰良『流(りゅう)』の2冊が圧倒的に面白かったし、色々参考にもなった。祭氏は女性ながら確固とした信念の持ち主で、少数民族や社会的弱者への心配りなど、政治家としても素晴らしい資質を有した才媛。どこぞの自信過多な首相も、少しはその生き方・考え方を学んで欲しいと切望するほどの素敵な英知で、その自伝も読んで久しぶりに感激した。是非一度は台湾特番で登場して欲しいものである。

 一方の作家、東山彰良は両親が台湾人で、小学校の初めごろ日本に移住・成長したという経歴の持ち主。デビュー作の『逃亡作法』を読み、凄い資質のハードボイルド作家の出現とぼくなりに目を付け、ほとんどの作品は読んでいたのだが、両親が台湾人とは全く気付かなかった。それだけにそのペンネームも、祖父が大陸の山東省出身(『流』はその祖父を主人公にした台湾関連ミステリー作と読める)なので、それを逆さにしたものと言うのも恥ずかしながら最近知ったばかり。台湾特番ファミリーの一員でもあるエッセイストで女優、歯科医の一青妙(一青窈の姉)さんとの対談企画が、とある会場で行われ、その彼女から紹介されたのだが、残念ながらこの9月にオンエアー予定の台湾特番には登場頂けないが、次回には是非彼の魅力あるお話しを皆様にもお届けしたいと思っている。

 そして音楽のお話しだが、これがジャズではなくクラシック関連。ぼくの誕生日は終戦記念日の8月15日なのだが、なんとその日に軽井沢大賀ホール(ソニー社長だった大賀氏が軽井沢の町に寄付したモダンなホール。軽井沢ジャズフェスもここで開催)で、チェロ奏者の堤剛氏がバッハの無伴奏チェロ・ソナタ全曲の演奏会を行うと言う。ぼくの最も愛するバッハの無伴奏ソロ組曲(チェロとヴァイオリン双方の無伴奏曲が最高の音楽だとぼくは信じる)を、一日で全曲を演奏するとはめったに聴けないものだし、やる方も相当な力技。このニュースを大分前に耳にし、珍しくも大賀ホールに予約電話を入れて、誕生日当日は勇んで会場に向かった。
 堤氏は現在はサントリーホール館長で、それ以前は桐朋学園大学長も務めたクラシック音楽界の超名士。しかしチェロ奏者としてはあの鬼才、ヤーノシュ・シュタルケルの直弟子で、師匠譲りの峻厳なバッハ無伴奏全曲アルバムを以前に聞き、かなり感銘を受けた覚えもあるので期待大のコンサートだったのだ。全曲で4時間弱、相当に力が入るコンサートで、聴く方もかなり大変だがやる方は当然ながら更に大変な試みで体力もいる。ただ功成り名を遂げた堤氏だけに、かつてのような研ぎ澄まされたひりひりと粘り付く鋭利さは影を潜め、悠々迫らざる大人の風格豊かなものに変わっており、宮廷音楽の舞曲を集めたこの無伴奏チェロ曲としては、聴き易く疲れない演奏だった。全体としてはそれなりに楽しめはしたが、冷徹で深淵な「シュタルケル・バッハ」の信奉者でもあるぼくにとっては、いささか物足りない感じがしたのもまた事実。まあ色々な感慨を抱きながら誕生日の夜、山荘への帰り道を急いだものでした。
今週の番組ゲスト:「ジャズのお勉強」音楽評論家の青木和富さん】
M1「Love Is A Many Splendored Thing/Brown-Roach Quintet
M2「Round Midnight/Miles Davis」
M3「If I Were A Bell/Miles Davis」
M4So What/Miles Davis

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