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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.277~信濃追分秋景色】

 10月の半ば3日ほど追分の別荘に居た。天気も良く見所満載の追分周辺、この時期は追分~軽井沢でぼくの最も好きな季節。在住者や軽井沢通に言わせると、ベストシーズンは冬でそれに次ぐのがこの秋だとのことだが、冬は水抜きをしてしまうので住むのは難しい。実際に暮らさないので、冬の本当の良さは判らないが、木々が赤、黄に染まるこの時期も見事で、冬程ではないが観光客も殆どおらず、心安まりのんびりと過ごせる好個の時期でもある。それだけに今回の山荘滞在は、所用も幾つかあったが、何より心を落ち着けたいのが一番だっただけにまさにぴったり。今回柄にもなく心落ちつけたいと思ったのも、前の週に3日おきに通夜が3つも続き、「メメント・モリ」ではないがいささか落ち着いて珍しく「生と死」について考えたいとも思ったからだった。


 その亡くなった三人とは、一人が局の後輩(お偉いさんだった)、もう一人は大学のジャズ研の後輩でEMIジャパンのジャズ担当総括者、そしてこのところ余り会っていなかった古くからの山友達で、3人は50代後半から60代半ば、60代後半と年令も分かれており、全員のイニシャルがHだと言うのも何かの因縁か...。山や温泉仲間はぼくがあまり山行をしなくなってしまったせいもあり、会う機会が少なくなってしまったのだが、一頃は結構熱中して山行に励んでおり、一緒に山に登ったものだったが(山と渓谷社の連中などと共に)、最近は急に元気を失くしてしまい、山にも行かなくなってしまったようで、酒好きな快活な男だったが、色々と気持ちが沈んでしまったのが良くなかったのかも知れない。ラジオ日経の後輩の彼は役員までやった優秀な男。この7月頭には後輩の退社祝いの昼食会の時に会ったのが最後。その時は元気そうだったが、その僅か数か月程後に「がん」で逝ってしまった。60代半ばにしてはかなりな進行速度だが、いい男だっただけに全く残念なこと。

 
そしてその3人の中で最も若いのが、早稲田大学のジャズ研後輩のHくん。レコード会社は昔とは趣きが一変、完全外資の会社ばかりになり、その上CDは売れない2重3重苦の中にあり、50代社員など殆どいないと言うよりも生き残れなくなっているようだ。H君のEMIも「ユニバーサル」にワールドワイド規模で吸収、合併され早や数年。今や旧EMIの社員は殆ど残っていないと言う有様で、彼も昨年退社しあるプロダクションに移ったのだが、やはりかなりなストレスがあったことは想像に難くない。大学時代はギターを弾きかなり有望とも言われていたようで、レコード会社に入社以降も時々ライブなどもこなしていたようだった。彼が手掛けた新人では、今かなり注目されているギターの井上銘などもいるが、やはりこのジャズギターには人一倍愛着が強かったようである。通夜の席でもウエス・モンゴメリーなどがバックに流されており、通夜客の涙を誘っていたが、まだ50代後半、若すぎる感じでとても寂しい。EMIの社屋が元のラジオ日経の局舎のすぐ近くにあったので、時々昼飯などを一緒にしたのだが、ジャズ研出身者にしては生真面目すぎるほどの真面目男。それだけに色々悩みも多かっ筈だが、天国でウエスやケニー・バレル等のギター名手達の演奏をのんびりと心から愉しんで欲しいと思う。

 
追分の山荘から見る木々の紅葉ももうすぐ真っ盛り。それがしばし続き本格的な冬の訪れとなる、その静かで穏やかな一瞬の中、物故者達との交流を思い返す。寂しくはあるが静かで落ち着いた一時だった。こうした折のバック・ミュージックに最適なのはやはりECM系の静謐な音楽。特にキース・ジャレットとスティーブ・キューンのソロピアノが心に沁みました。合掌!

【今週の番組ゲスト:「かわさきジャズ2015」の実行委員会事務局長 前沢陽一さんとビデオアーツミュージックの服部幸弘さん】
M1「Wild Rice/Lee Ritnour」
M2「Obrivion/Richard Galliano」
M3「Day Dreaming/Geila Zilkha」
M4「ラストダンスは私と/伊藤君子」

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