【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.528~チン&剛】
「チンさん&剛さん」と言えば、ジャズファンならばもうお馴染のベテランコンビ。チンさんことベースの鈴木良雄、剛さんことピアノの山本剛。J-ジャズシーンを長年牽引して来たリーダー達で、2人でデュオライブも長年実施しているのだが、正式なデュオアルバムは今回が初めてで、タイトルは『ラビング・タッチ』。アルバムは今年の春ごろの発売で、スタジオにももう少し早くと言うことだったが、コロナ禍で夏の収録にずれ込んでしまった。両者ともほぼ同じ年代でチンの方が少し上。大学生の頃からの知り合いの筈(チンは早稲田ジャズ研、剛は日大だがジャズ研ではない)で、チンの方はぼくの大学時代のクラブ仲間。サダオさん(渡辺貞夫)のバンド時代からスタジオには良く遊びに来ていたが、その後アメリカに渡ってしばらくご無沙汰。その後帰国し六本木の「ピット・イン」(今は閉店)での凱旋ライブは、我がラジオたんぱでも録音中継した。その後はベースの第一人者としてシーンに君臨し今に至る。一方の剛氏の方だが、これがなんと初めての番組登場。「どうして呼んでくれなかったの...」などと剛先生からお叱りの一言だったが、これまで何回か新譜が出るたびに声はかけてきたが、なぜかスケジュールがうまく決まらず今回に至ったと言う次第。
スインギーでブルージー(ブルース弾きとしては本邦随一)な剛氏、骨太で細かいフォローでピアノを支えるチンさん。絶妙なコンビのこの2人のデュオアルバムが、これまで無かったのはちょっと意外だが、岡本太郎記念館の館長でジャズ好きの平野氏が、自身で立ち上げたジャズレーベル「デイズ・オブ・デライト」、これは彼がチンのアルバムに大学生時代に大感激し、是非チンのアルバムを作りたいと言うことで立ち上げたものと聞く。このレーベルでのファーストアルバムが、盟友剛氏との初デュオアルバムになったとはなんとも興味深い所。アルバムは日頃2人がライブハウスなどでよく取り上げている、「サマー・タイム」「朝日の如くさわやかに」などのスタンダードがメインだが、当然剛氏の十八番とも言われる「ミスティー」も収録されており、その他タイトル曲など2曲のチンさんオリジナルも含まれている。
気心の知れあった2人だけに、収録も実にスムーズ。山本嬢はスタジオでは初対面だったが、既に都内のある飲み屋で剛氏と同席、かなりよく知り合った仲だとも言う。お互いを褒め合った所で収録は無事終了。チンが「小西よー、どこか連れて行けよ...」と言うことで、このコロナ渦のなか、いささか心配ではあったが過密にならない様に、東京を代表する居酒屋「升本」に、酒豪の剛氏とチンさんを誘う。剛氏はこの銘店に初めて訪たと言うことで、いたくお気に入り。また是非誘ってよとのこと。コロナ禍のなかあまり長居は...と言うことで早々に引き上げたが、日本を代表するお二人との一時、実に楽しいものでした。また是非やりたいものですね。
【今回の番組ゲスト:ベーシストの鈴木良雄さんとピアニストの山本剛(つよし)さん
新譜『LOVING TOUCH』から
M1「Loving Touch」
M2「Blues for Edith」
M3「Softly as in a Morning Sunrise」
M4「Misty」
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