お知らせ:

テイスト・オブ・ジャズ

番組へのお便りはこちら
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日22:00-22:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.194~スティーブ・サックス~】

 本場のミュージシャンの中には、ハービー・ハンコックやチック・コリアなど、大の日本びいきと言う連中も少なくない。そんな中、好きが高じて日本に住み、そこを拠点にしてしまう...、となるとさすがにそうはいない。そんな日本びいきで日本在住ミュージシャンの代表格が、サックス奏者のスティーブ・サックスである。サックス奏者で名前がサックスとはこれいかに...、などとダジャレの一つもかましたくなるが、彼は確かハーバード大を卒業した超インテリで、日本大好きで日本人女性と結婚、彼女に引きずられた形で日本にやってきて早や18年余り。日本を拠点にしている在留外国人ミュージシャンの中核。彼のバンド仲間で僚友とも言うべきピアニストのジョナサン・カッツは、こうした在留ミュージシャンを主力にフル・バンドも結成、彼やキューバ出身のルイス・パジェも参加したこのフルバンドは、今さまざまな方面で注目を集めつつある存在になっている。

 ところでそのスティーブだが、彼がまだNYにいた頃から、ラテンジャズやブラジリアンミュージックのミュージシャンとしても大活躍、当時大人気だった小野リサなどのバックを務めたりもしていた。そして彼が小野リサのバックで日本でツアーをした時、ちょうど彼自身のアルバムも日本で出たのでスタジオに来てもらったものだった。それから20数年、彼が在留ミュージシャンや日本のラテンジャズの精鋭等と組んでいるバンド「マンボ・イン」のデビューアルバムが2月末に発売されたので、いい機会と思い本当に久しぶりに新しいスタジオに来てもらった。

 ラテンジャズとブラジリアンミュージック、そしてジャズのフルバンド、洗足音楽大学のジャズ講師等々、大変に忙しい仕事をこなしている彼だが、スタジオでは元気そのもの。本番では無かったが打ち合わせでは、お得意のダジャレなども飛び出し、至って快調。ニュー・アルバムは、ここ数年彼が力を入れているラテンジャズバンド「マンボ・イン」による初めてのアルバムで、タイトルは『マンボ・アラウンド・ザ・ワールド』。ラテン・ジャズの古典とも言うべき「マンボ・イン」を皮切りに、アメリカ=ジャズから日本の童謡(「海」)、フランスのシャンソン、北欧の民謡など、世界中のナンバーをラテンジャズ化しようと言う大胆な内容で、我が国のラテンジャズ水準の高さをはっきりと物語る快作に仕上がっている。スティーブもラテンジャズの必須楽器、バリトンサックスをメインに、フルートやソプラノサックスなどを持ち替え、愉しげに世界中を飛び回っている。「好いアルバムだね...」とスティーブに感想を言うと、実に嬉しそうに「ありがとう」と返してきた。
 ハーバード大出の超エリートだが、そうした臭みがなく生涯一ジャズメンとして、その生き方を徹底させている。好漢のアルバムが是非売れて欲しいものですね。

お知らせ

お知らせ一覧