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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.328~ミスターラグビー&ミセスクライミング&モア】

  
ジャズ以外でぼくの好きなもの、ハードボイルド小説、温泉探訪等々いくつかあるが、ラグビー観戦と山登り、この2つは欠かせないもの。大学時代はジャズ研以外にもう一つ山登りの愛好会にも所属、山歩きの番組も3年ほどヤマケイ(山と渓谷社)の協賛でオンエアーしていた。一方のラグビーはご存知の通り、藤島大というラグビージャーナリストをパーソナリティーに迎えての番組(「楕円球に見る夢」)でもお手伝いさせてもらっており、さしずめこの2つは趣味と実益を兼ねたものといった感じでもある。
 その両分野で我が国のミスターラグビーとミセスクライミング(まあこんな言い方は一般的ではないが...)と言える人物が、このところ相次いで亡くなってしまった。ラグビーの方は平尾誠二、山女の方は田部井淳子。そしてもう一人、こちらはミスター声優と迄は行かないが知る人ぞ知る名声優、肝付兼太である。このお三方の霊に黙祷!

 ミスターラグビー平尾氏とは、たった一度だけインタビューをした(番組は何かスポーツ関連の特番だったと思うが...)仲なのだが、そのインタビューのことは今でも鮮明に覚えている。と言うのもそのインタビュー場所が神戸の浜川(だと思う)にある高速道路傍の神戸製鋼グランドとクラブハウス。時はあの神戸大震災から一か月半ほど後のこと。ラグビー神戸製鋼チームは栄光の日本選手権7連覇を遂げた直後にあの大震災に遭遇、彼らのグランドやクラブハウスも震災の為に滅茶苦茶。そんな中でのインタビューだったが会社の広報を通じでOKしてくれた彼は、インタビュー場所を震災で使えない状態のクラブハウスに指定、そちらに出向いて話を聞くことになった。会うと直ぐに「グランドに出てみましょうよ...」と誘われ液状化現象の激しいグランドを案内され「今は使い物になりませんがきっと直しますからね」と無念さをにじませながらの力強い言葉。グランドでは若い神鋼の選手達がグランド整備に励んでいた(確か元木選手や増保選手などもいたはず)。クラブハウスでのインタビューは7連覇よりもこれからの神鋼チームの行く末がメインになったと思うが、実に端正なマスクと話しっぷりで、ラグビーよりもむしろ役者にでもなれば...と思わせるようなダンディーな色男。その話に聞きほれてしまった覚えがある。松尾雄二と並ぶ天才プレーヤーだった彼は、ラグビー選手にしては珍しく交友関係の幅広い人で、あの思索家・出版プロデューサーの松岡正剛などとも対談集を出すなど、ラグビーという枠に留まらない思考の持ち主だった。惜しい人材を失ってしまった。

 そしてミセス山女、田部井さんとはヤマケイのパーティーなど山関連の集まりで何度かご一緒をさせてもらい、「一度是非番組にも...」と彼女に言われながらも遂にその機会のないまま終わってしまった。パーティーなどで一緒に話す時の彼女は、実に気さくな小柄なおばさんで、この人が女性で初めてあの世界最高峰のエベレストに登頂したとは到底思えないほどの人。話も実にウイットに富んでおり、魅力的な女性だった。有名なクライマーの還暦祝い(?)のパーティーで彼女が祝辞を述べた折、その人を知っているということで息子さんも連れてきていたのだが、その高校生の息子は反抗期真っ盛りでテレもあり終始ふてくされた様子、世界の田部井も彼には手が付けられない(海外遠征などで家を空けることも多かったろうから、かなり甘やかしていたに違いない)有様で、母親とはかくも大変なものかと...見ていて仲々に興味深く面白くもあった。

 そしてもう一人肝付兼太。享年80才。スネ夫やイヤミの声でおなじみのこの声優は、ラジオたんぱの一時代を築き上げた功労者で、人気パーソナリティーでもあった。一般にはラジオたんぱがその存在を世に知られることになったのは、大橋照子というスターアナウンサーの出現以降と言うことになっているが、その彼女の登場を誘導したのが肝さんこと肝付兼太だった。今からもう40年ほど前、三菱電機が新しいラジオ(世界中の短波放送が聞ける...を売りにしたラジオ)=ジーガムを発売、その宣伝番組(「ハロー・ジーガム」)として我がラジオたんぱに指名の声が掛かり、15分の帯番組を設定。これが世界中のラジオ局カード(ベリカード)を集める大ブームを巻き起こし、全国の小・中学生たちもこぞってこのカード集めに熱中、番組も大ヒットとなり、肝さんも一躍時の人になったのだった。このヒットが当時の局の上層部の関心を呼び、自局でもスターを...となり大橋アナの登場となる訳。この「ハロー・ジーガム」帯番組だけに3人のディレクターで担当したのだが、ぼくはその中で一番のペイペイ。小・中学生のベリカード収集サークル取材で肝さんと一緒に全国の市町村を飛び回った、きつくとも楽しい思い出がある。番組終了以降は殆ど会っていないが、声優と同時に自身の劇団も持ち、人気劇作家の北村想の芝居を専門に上演しており、演劇好きということで招待され、何度か観劇にも行ったりもした。鹿児島の有名な武将の子孫で(鹿児島県にはその名前を取った、肝付郡があり帰郷すると大歓迎だった)外見に似ず気骨ある人だった。  

 平尾氏はまだ50代初め、田部井さんはぼくより5歳ほど上、そして肝さんは80才。3人の死を悼むナンバーとしてぼくが推薦するのは、名ベーシストのチャーリー・ヘイデンとキューバ出身の天才ピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバの哀切なデュオプレー「ノクターン(ver)」、是非聴いてみて下さい。
今週の番組ゲスト:ドラマー、コンポーザー、プロデューサーの平井景さん】
M1Running Man
M2Old Clock Tower
M3When I Left Home
M4「展覧会と少年」

 

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