10月7日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [テイスト・オブ・ジャズ]
2021/10/07(木) 19:00 番組スタッフ

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.595~春樹とモーズ・アリソン~】

  日本を代表する作家、村上春樹。彼は早稲田大文学部卒業で、かなりな母校愛の持ち主。自身の蔵書やレコードコレクションを母校に寄贈、そのコレクションを中心に収められた春樹記念館がこの度大学内に作られ、この10月には開館を迎えるとも聞く。まあこれは卒業生としては是非一度は行ってみないとならないし、そのコレクションもかなりなものだと聞くので、ジャズ関係者としても閲覧しなくては成らないだろう。ハルキとぼく...などと偉そうには言えないのだが、彼はジャズファンならばご存じだと思うが、作家デビュー前は「ピーター・キャット」と言うジャズ喫茶のマスターで、単なるジャズ好き、ジャズファンと言うよりも、ジャズ関係者と言った方が良いような存在で、ジャズ本も何冊も書いている。その「ピーター・キャット」、最初は国分寺駅北口にありその後千駄ヶ谷に移り、数年ほどで作家として彼が売れてしまったので店仕舞いになったのだが、ぼくは彼の知り合いに連れられ、何回か千駄ヶ谷の店に通ったものだった。それだけに当時は会えば会釈する位の仲だったが、単にマスターと客と言う関係。もう少し話をすれば...と、今となっては残念には思うが、その当時の彼はほぼ無口な若いジャズ喫茶マスターでしかなかった。

 そんな彼はかつてこんな風に語っていた。「ぼくは13才か14歳の頃からずっと熱心にジャズを聴いてきました。コードやメロディー、リズム、そしてブルースの感覚、そういうものはぼくが小説を書くにあたって、とても役に立っています...」。普通ジャズファンと言うとほぼモダンジャズのファンと言うことになるのだが、彼は水道橋駅の近くにかつてあった(半世紀ほど前の話だが)、「スイング」と言うトラッドジャズやスイングジャズだけを掛ける、ある種の偏屈ジャズ喫茶でバイトを1年間ほどしていたことがあり、そのトラッド分野に強いのも彼のジャズ趣向の特徴だと言える。

 彼が最近再開させたFMラジオ番組「村上ラジオ」では、ジャズはもちろんビートルズからビーチ・ボーイズ、クラシックナンバー迄、彼の好きな曲を自由気ままに紹介する云わば彼の道楽番組なのだが、その村上ラジオで最近「モーズ・アリソンを知っている...」と言うテーマで、「モーズ・アリソンのナンバーがいくつか紹介されたらしいよ...」と、ジャズ仲間から連絡があった。番組は聞き逃してしまったのだが、いかにも春樹らしいマニアックで凝った選択だなーと、いたく感心し嬉しくもあった。と言うのもこの渋い白人カントリーブルースシンガーは、ぼくが大学生時代、ジャズ研の部誌に最初に書いたシンガーの一人だっからなのだ。モーズ・アリソンと言う人は弾き語りを得意とするブルースシンガー兼ピアニストで、1927年にミシシッピー州で生まれ、この地だけに本物の黒人ブルースをたっぷり浴びて育った人。2016年に亡くなっており、90才近くまでほぼ現役で活躍した元気印だったが、その出世作が『バック・カントリー・スーツ』(pres)で、弾き語りによる白人ブルースの極致にある様な名品。彼はロックシンガーなどにも大きな影響を与えた人だが、ことジャズファンには余り感心を持たれていない。その名盤は1曲々はどれも短いものだが、白人カントリーミュージックと黒人のブルースが相乗された独特な味わいを持っており、未だ20才前のぼくが何故あの世界に惹かれたかは、今となってはしかとはしない。だが今聴いてもその独特な味わいは魅力たっぷりで、チャンジーになった今こそその魅力に浸れる感もあるだけに、春樹氏が今回わざわざモーズ・アリソン特集を組んだのも、大いに納得の一言。
 10月には完成と言う早大に出来る「春樹記念館」。年内にはぜひ訪れてみないと...。今から本当に楽しみです。

【今週の番組ゲスト:選曲家/Quiet Corner主催 山本勇樹さん】
Diana Panton for Quiet Cornerfairy sings love suite』から
M1It's A Most Unusual Day」
M2Tea For Two
M3And I Love You So
M4Moonlight Serenade




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