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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日22:00-22:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.203~大震災とジャズ~】

 未曾有の大震災、東日本大震災から3年余り。被災地の復興は政治の極端の貧困や日本人特有の「のど元過ぎれば...」思考など様々な負の要素が絡まり、残念なことに遅々として進んでいない。音楽の世界でもいろいろなチャリティー・コンサートが各地で頻繁に開かれていたが、やはり震災から時間が経過してしまうと、痛みも風化してしまうのか、最近では余り耳にしなくなってしまった。ジャズの世界でもワールド・ワイドでチャリティー・ライブやアルバムなども出されたが、この所は余りそうした動きも聞かれない。

 そんな中にあって地道にボランティア・ライブを続けている女性フルート奏者がいると聞き、興味を持っていたのだが、そのプレーを実際に耳にすることは無かった。それがひょんな所からあるフルート奏者が新しいアルバムを出し、彼女は震災ボランティア・ライブももうかなりな数になり、是非番組で紹介してくれないかと言う話が舞い込んで来た。そのフルート奏者こそ佐々木優花(ゆうか)さん。ボランティアに熱心だとは言え、そのアルバムの出来が余り良くなければ話にならない。そこで2枚目の新作『ア・フラワー・オン・ザ・レイク』を聴いてみると、これが想像以上に素晴らしい仕上がり。そのうえバックが、ピアノの鬼才、渋谷毅以下広木光一(ギター)、飯田雅春(ベース)、パーカッションのヤヒロトモヒロ、と言う番組でもうお馴染みの素敵な面々。飯田君は大学の後輩だし、何よりリーダー&アレンジの渋谷さんのピアノが素晴らしい。音を聴いて直ぐにでもと...、出演オファーした。そしてスタジオにやってきた彼女。噂通りの中々の美形で、おとなし目だが芯の強さを窺わせる人。聞くとNYのニュースクール大学ジャズ科で学び、師匠はあの名プレーヤーのフランク・ウエスと我が秋吉敏子先生の旦那、ルー・タバキンだと言う。デビューアルバムではこの2人の師匠が賛辞を寄せ、ウエスは「ジャズ・フィーリングが好いし、フルートの音色も美しく、大好きだよ...」と語っているほど。
 
 

 そんな彼女が何故大震災のボランティア・ライブを続けているかと言うと、仙台生まれで岩手の奥州市(水沢)育ちで、友人の中には被災した人も少なくなく、他人事とは思えないからだと言う。ライブの収益金は全て寄付しておりもうかなりな額になったらしいのだが、その積極的な活動はアジアの国々からも注目を集め、ベトナムからは招待も受け同地で大規模なコンサートも行っている。
 デビュー作ではオリジナルは数曲だったが、今度の新作は10曲全てが彼女のオリジナル。中でもメインになるタイトル曲は、大好きだと言う画家ルドンの作品「オルフェウス」にインスパイアーされたもの。「日常生活の中で自然に心に浮かんだメロディー」だと言うそのオリジナルは、どれも独創性に溢れたもので、ぼくのお気に入りは被災地の海岸線で見た、美しい夕焼けを描いた「サンセット」。彼女のフルートと渋やんのピアノ、渋谷アレンジのストリングスが美しく絡み合い、心を揺さぶる被災地の夕方の情景が描き出される。「渋谷さんのピアノを聴いてジャズをやろうと思ったんです」と語るだけに、渋やんがアルバムに参加してくれたことが、何より嬉しかったようだが、実に新鮮でチャーミングな響きを持ったナンバーが並ぶ。フルートは最近あまり聴かないのだが、これは推薦に値する1枚と言えそうです。皆様も是非...。

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