2月21日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [テイスト・オブ・ジャズ]
2015/02/20(金) 19:00 番組スタッフ

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
    
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.243~新垣隆参上~】

 「参上」などと言うと鞍馬天狗、怪盗ルパン、アントニオ猪木等々、どうも時代錯誤の表現しか出てこないが、この人の登場はその話題性から「参上」に相応しいものではあっても、実際は本当にひっそりと慎ましやかな参上とはほど遠いものであった。その人とは昨年小保方女史と並んで最も話題なった一人、あの偽作の代筆作曲者の新垣隆である。
 昨年の贋作騒動、そして実作家としてのカメングアウト会見など、彼はまさに時の人であり、その風変わりな風貌、言動も相まって一躍人気者となり、今では男性月刊誌や女性週刊誌のグラビアにまで登場するとも聞く。その新垣隆、現代音楽作曲家にしてピアニスト(桐朋音大作曲家卒業)の彼が、どうして我が「テイスト・オブ・ジャズ」に登場することになったのか...、と言えば答えは簡単。彼はかなりなジャズファンにして、ジャズのデュオ作品をこの2月に発表したからに他ならない。そのデュオの相方は、前衛ポップ&ジャズ暴れ者集団「渋さ知らず」でも活躍するバリトンサックスの鬼才、吉田隆一。この奇才&鬼才同士のデュオだけに話題にならないはずは無く、2人のアルバム『N/Y』(NYの様だが2人の頭文字)は、発売前からかなりな注目を集めることになる。そしてこの2人を引き合わせたのが、ぼくと同業のジャズライター村井康司(本職は大出版社の辞書編集担当)。デュオアルバムのプロデュースも彼が担当し、その村井くんから番組で取り上げて欲しいと要請があり、面白い企画で内容も仲々なので、直ぐに実現したわけだ。

 スタジオには吉田氏は当日仕事が入り来れず、新垣氏と村井氏2人の参上と相なったが、新垣氏はそのお人柄同様、実に静かにフェードイン気味と言うよりもまさにスニークイン(放送用語で静かに音楽などが入ってくる様子)状態で、受付前の長椅子に座っていた。挨拶すると隣の恰幅いいおっさんが立ち上がり、新垣の兄ですと自己紹介、本人は申し訳なさそうに頭を下げる。この謙虚さ、実に好ましいもので直ぐに好意を持ってしまった。聞くところによればこのお兄さん、彼のスケジュールやお金の管理をしているマネージャー役とのこと。そうだよなー、あんな感動巨編を密かに書き上げても貰えるものは本当に僅かで可哀そうなもの、なので彼にマネージャーは必須と密かに納得。遅れて村井氏も登場してスタジオ入りしたが、主役は終始謙虚。アルバムのインナースリーブのデュオ写真は、あたかもあの「ブルース・ブラザーズ」の様なハードボイルドなカッコ良さで、アルバムの内容も今までにない面白さもある。曲は2人の共作やそれぞれのオリジナル、スタンダードなど全12曲。新垣氏のオリジナルには「秋刀魚」などの曲もあり、ラストは日本が世界に誇る大作曲家、武満徹の「明日ハ晴レカナ曇リカナ」で見事に締められる。現代音楽と前衛ジャズの融合...と言った七面倒い類いのものでなく、スリリングではあるが心温まる愉しい作品である。

 収録が終わると彼はほーっと一息付き、お仕事終わりと言った寛いだ様子で微笑ましかった。「また是非番組に登場させてください。愉しかった...」とお愛想も言ってくれたが、自身も気に入っているので是非聴いて欲しい、ともつけ加えてスタジオを後にした。
 最後に恥ずかしそうに握手。如何にも好人物そのもので、どこにあの悲壮な大作を書き上げる力があったのか...。人間って面白いし、ジャズもまた実に面白い音楽なんですね。
【今週の番組ゲスト:ピアニストで作曲家の新垣隆さんと、音楽評論家の村井康司さん】
M1「野生の夢」
M2「秋刀魚」
M3「Embraceable You」
M4「明日ハ晴レかな曇リカナ」







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