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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.644~ゴールデンカムイ~】

 最近の漫画の最高傑作にして世界にも誇るべきアイヌ文化史・民俗書でもある「ゴールデンカムイ」が、この春単行本にして全31巻で遂に完結を迎えた。マンガ大賞など多くの文化関連賞を獲得したこの傑作は、冒険漫画にして狩猟、食、生活、音楽等々、アイヌという民族をトータルに描き出した傑出した漫画本だと思う。偶然にも本屋でこの漫画に出会い読み始めたのだが、その驚異のエネルギー放出量と、その文化・民俗学的知見&博識の高さ・正確さに圧倒され、最終巻が出ると直ぐに国立の本屋に直行した程。この作品の凄いのは100近いアイヌ関連の研究所や博物館、大学研究室など、文化・民俗施設が協力していること。

 作者の野田サトルは札幌近郊の出身で、ひい爺さんは日露戦争にも行った屯田兵で、その彼と北海道のアイヌ民族を結び付けてこの雄大な物語を構想したと聞くが、これ迄にはやはり北海道が舞台のアイスホッケーチームものぐらいで、決して有名な存在では無かった。この漫画は集英社の週間ヤング・ジャンプに連載されたものらしいが、チャンジー(爺さん)だけに漫画誌などを読むこともないので、どんな反応があったかは分からない。だが数ある集英社関連コミックで、良くこんな素晴らしい作品が登場したものと本当に驚いている。

 編集者に勧められ、狩猟もの漫画を...と言うことで構想したらしいが、狩猟~北海道~屯田兵~アイヌ民族へと構想は広がって行き、超弩級の傑品「ゴールデン・カムイ」になったと言うこと。ゴールデンは英語の黄金、カムイはアイヌ語の神だが、アイヌの埋蔵金伝説を追うストーリーに加えられた、民族関連の諸要素が素晴らしい。何より魅力的なのはアイヌの民族独立を図る少女ヒロインのアシリバ。彼女を助ける日露戦争生き残りの不死身戦士の杉元。そして色物とも言える助演の網走監獄を抜け出した脱獄囚の白石。この3人の個性とその絡みが抜群で、敵役の鶴見中尉、ロシアの少数民族出身のパリチザン~ソフィア、更に新撰組生き残りの土方歳三まで登場するのだから何とも堪らない。

 最終巻は暴走列車の中での死闘がメインのアクション編で、重要な人物の殆んどが死んで行くのだが、アシリバ、杉元、白石は生き残り6年後の大団円を迎える。素晴らしい感動巨編なのだが、最後の最後に日本の戦後直ぐに君臨した、占領軍のマッカーサー司令官が登場、その彼にアイヌの埋蔵金が絡んでいる...と言ったエピソードを記して終わるのだが、ぼくの感じではこれは全く無用だった。アシリバと杉本が北海道の森林と原野に戻り、そこで活動する...と言う話のままで止め、変な陰謀論など絡ませない方が良かったとは思うが...、そこは作者に任せるしかない。

 少し大げさだが日本に生まれたものとして、このSDGSに目を向ける現在、アイヌと言う少数民族の事を知る格好の資料でもあり、是非読まれるべき傑作だと思う。

【今週の番組ゲスト:ジャズピアニストの平倉初音さん】
デビューアルバム『Tears』を名門ジャズクラブ 六本木ALFIEのレーベル「LIVE AT ALFIE」の第一弾としてリリースされました。

M1Sea Raccoon

M2Tears Part3-Breathe-

M3Something for Charles Mingus

M4But Beautiful

平倉初音1.jpg平倉初音2.jpg

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