7月21日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [テイスト・オブ・ジャズ]
2022/07/22(金) 11:00 番組スタッフ

「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.636~伝説の大隈ライブ~】

 今月12日の夜、早稲田大の大隈講堂で伝説にして因縁のライブが53年振りに再演された。山下洋輔トリオ「乱入ライブ」である。山下トリオの面々は、最初期の山下、中村誠一(sax)森山威夫(ds)。53年前のライブ、今月のライブ、ともにぼくはその場に居ることが出来なかった。先日は間近に迫った台湾特番の収録・編集の為であり、53年前も確か入局2年目で、走り使いのアシスタント仕事だった筈である。残念と言うかこれがぼくの運命と言った所なんだろうが...。もしも台湾特番収録さえなければ、ライバル局の一つであるTOKYOFM主催のライブイベント(村上ラジオのスペシャルイベント)、おっとり刀で駆けつけた所なのだが...。まあ運命などと大げさな表現をしたが、53年前のこの山下トリオ乱入ライブ、実はその前日に早稲田大のジャズ研の2年後輩で、後にジャズ雑誌の編集長を務め50代の若さで病の為殉職したⅯ君から、早稲田に来て是非参加するように誘いを受けていたのだった。
 「小西さん、明日午后に是非大学に来なよ。面白いイベントと言うか、騒ぎがあるから...。山下さんのトリオをメインに、色々と騒ぐんだよ」と...。実態は不明ながらもそのTELには強く引き付けられたが、なにせこちらも入局2年目。偉丈夫のスポーツディレクターS氏の手伝いをしないとならない。それで無くてもどこかに良く消える若いディレクター...と、評判さんざんだっただけに重要な番組のアシスタント役をほっぽり出して、早稲田大に向かう訳には行かない。泣く泣く諦めたのだが、それが伝説とも言える乱入ライブだった...とは、後で聞いて大変に悔しい思いをしたものだった。

 大隈講堂のピアノを無断で持ち出し大学校舎(バリケード封鎖されていたか...)で演奏会を開くと言う、この無謀な試みを仕掛けたのは、当時12チャンネル(現テレビ東京)の俊英ディレクターだつた田原総一朗氏。岩波映画出身の彼は、自身がメインディレクターになりドキュメンタリーのシリーズ物を制作、その一環として「荒れる学生運動とジャズ」と言ったテーマで、山下トリオに目を付け山下トリオや周囲の学生を挑発し、大学バリケードの中でのジャズライブを実施、それを映像化したのだった。Ⅿ自身は大隈講堂からピアノを運び出す役割は担えなかったのだが、7,8名の運搬役の中には後に作家として名前を成す故立松和平氏もいたとのことで、これは後年ぼくが担当した山下氏の番組で彼をゲストに呼んだ時にも、その時の話を興味深く語ってくれたものだった。全て小綺麗になってしまった、今の早稲田大からは想像出来ないまあ凄い時代だったものだが、この伝説乱入ライブは運んだピアノに火を点けそれを山下洋輔が弾いた...等と言う...尾ひれが付いて伝わってもいたのだった。

 あれから50数年、当時文学部の1年生だったのが作家の村上春樹で、彼自身は直接このライブには関わってはいないのだが、自身のラジオ番組「村上ラジオ」の記念ライブとして、この伝説ライブを同じメンバーで再現してみたら...と考え山下氏に持ち掛け、実現したという訳。山下洋輔と村上春樹。日頃は余り結びつかないこの2人が、この伝説の乱入ライブで接点を持ち、それを実際のライブと番組で再現する。大胆不敵にして良き番組・イベント企画である。
 このライブ実際に耳にしていないので、その成果は何とも言えないが、再演ライブとそれに伴うシンポジウムは盛況で、大隈講堂には老若男女満杯のファンが集まったと聞く。こんな面白い試み、実際に手掛けられたならば、ラジオ屋として望外の喜びだろう...。羨ましい限りである。

【今週の番組ゲスト:ピアニスト渋谷毅(たけし)さん】※渋谷毅さんご出演の番組は7月28日に放送いたします。ご了承ください。
15年ぶりのソロアルバム『I  LOVE CARLA BLEY』から
M1「Lawns」
M2「Little ABI」
M3「Soon I Will Be Done With The Troubles Of This World」
M4「通り過ぎた時間」

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