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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.304~香港の歌手兼ブランド社長】

 外国人と外人。どちらも日本国籍を有していない人と言った同じ意味の単語だが、ぼくの中ではこの2語、微妙に違っているのである。外国人は文字通りの日本国籍以外の人だが、一方の外人さんとは、日本人を含む中国・台湾・韓国など東アジア地域の人達~いわゆるモンゴロイド系を除いた他の人達、特に欧米の白人が中心で、それにアフロ・アメリカンや中南米、中近東等々の人達と言ったイメージが強い。これはひとえに、ぼくが「ギブ・ミー・チョコレート」で育ったロートル世代からなのかも知れないが、やはり外人と言うと、白人そして黒人を思い浮かべると言うことになってしまう。

 
さてそんな外人さんだが、最近スタジオに遊びに来ていないなーなどと考えていたら、是非番組に登場したいと言う申し入れがあった。と言ってもその本人から直接では無く、とあるレコード会社を通しての申し入れだったが、ある条件を飲んでくれればと言うことで喜んでOKした。その条件とは通訳を手配すること。今までは通訳と言うと、ラジオ日経きっての英語使いの才媛、帰国子女のⅠ女史にお願いして来たのだが、彼女も役員さんに昇格、そんなお仕事はやってられませんということで、自力で見つけなければならないのだが如何せん予算はゼロ。さすがにこれだけはノーギャラでは頼めない。通訳問題、そこら辺も外人さんの登場がこの所少なくなっている一因なのだが、今回は通訳をレコード会社が手配すると言う。それならばと言うことで直ぐに決定。その当人がスタジオに現れた。

 
ブリジット・ミッチェル。スタイル抜群の歌姫である。それもその筈で箇所にしてファッションモデル、更にファッションブランドオーナー、女社長でもある。南アフリカ、ケープタウン出身の彼女、同地で育ちそこでプロ活動、同時にファッションセンスも生かしての仕事も始めたという。ただいささか仕事にも飽きてきてこれからどうしようか...と考え、気分一新、大好きな香港に行き、そこでまた新たにファッション関係でも...と思っていたところ、現地の実力派音楽プロモーターと知り合い結婚。彼のおかげでデビューアルバムを吹き込むことになり、これが南アフリカの権威ある音楽賞を受賞。その勢いに乗じて今度は旦那のつてでアメリカの有力ミュージシャンやブラジルのトップミュージシャンによるセッション(ロスとリオデジャネイロの2か所でのセッション)を収録。新作『レッツ・コール・イット・ラブ』を発表、そのプロモーションを兼ねて日本に遊びに来たという次第。

 
香港という都市は世界の商業の中心でもあるだけに、音楽の世界でも結構有力なプロデューサーがいて、彼女の旦那もその一人。そのおかげでラッセル・フェランテ等のトップスタジオミュージシャンが集結、かなりな素晴らしいセッションが実現することになり、リオの方も実力派が集うことになった。曲はロスが6曲、リオが4曲。いずれもアントニオ・カルロス・ジョビンのボッサナンバーかボッサタッチの軽めのナンバーが中心。それを彼女はキューティーボイスでスタイリッシュに歌いこなしており、魅力的な仕上がりになっている。ただそれだけでは無くさすがに女社長。ぼくも大好きなアビー・リンカーンの「スロー・イット・アウエイ」を彼女なりに歌いこなしているのだ。あまり取り上げられないこの素晴らしいナンバーの作者にして最高のシンガー、アビーと言う女性は、主張する黒人女性シンガー。その彼女がビリー・ホリデイに捧げたナンバーで、黒人女性の苦しみ・悲しみ・ほのかな希望などが歌い込まれたメッセージ性の強いナンバー。それをあの南ア出身の白人女性シンガーが取り上げる。そこには彼女の主張も垣間見られ、興味深いものがあり、ぼくもこの選択で彼女のことが直ぐに好きになってしまった。
 そういえば香港のあの世界的なクラシックレーベル「ナクソス(一時はジャズも取り上げていたが...)」の社長夫婦、山の上の豪邸に招待されたあの夫婦は今どうしているだろうか...、と懐かしく思い出されたし、香港特番も最近ついぞやっていないなーなどと余計なことも考えてしまった一時でした。有難う 美しきブリジット。

【今週の番組ゲスト:香港を拠点に活躍するジャズヴォーカリストBrigitte Michellさん(通訳:和田麻衣子さん)
M1「Meditation」
M2「Throw It Away」
M3「Lost In The Memory」
M4「Once I Loved」

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