5月31日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [テイスト・オブ・ジャズ]
2020/05/29(金) 20:00 番組スタッフ
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.515~ジャズボーカルの注目株】

 ぼく自身は余りジャズボーカル好きというのではないが、どういう訳か担当しているジャズ専門誌のディスクレビュー(アルバム評)などではボーカル作品が回ってくることが多い。これには全般にCD不況とも言われる折、新人ボーカリスト達が名刺代わりにアルバムを作ることが多く、一見ボーカルシーンが賑わいを見せている...と言う事情も作用しているようだ。但し困ってしまうのはこんな力量の人がアルバムを...、と思うようなのが結構あること。そうなると正当な評価などは出来にくいのだが、その彼女達(多くは女性シンガー)も、かなり張り切り無理をしてでも一枚のアルバムを作り上げた...という、その熱意や事情も良く分かるだけに、余り厳しい評価も...と言うことになる。まあここら辺りがレビュアーのきつい所なのだが...。

 さてそんな日本のボーカル事情はさておき、本場に目を移してみると流石にこれは...と思わされる実力派も次々登場、充分に愉しませてくれる。そんな中今ぼくが注目しているのが、キャンディス・スプリングス。ボーカルの世界に新登場した新星だが、ジャズボーカルの世界はカントリーミュージックタッチのシンガーソングライター、ノラ・ジョーンズの出現で、シーンは大きく変化した感もある。ある意味ノラ以前と以降と言った感じなのだが、更に黒人の代表格カサンドラ・ウイルソンもノラとは異なった側面から、ボーカルの新しい波を起こしており、この2人を中心に動きつつあるとも言える。まあこうした新しい波と同時に、エラ・フィッツジェラルド、カーメン・マクレー等と言った、今は亡き大御所達が築き上げたオーセンティックなジャズボーカル世界も、今なお厳然として存在している訳なのだが...。そうした新旧(?)のジャズボーカルシーンをうまくミックスして自身の世界を構築している一人が、このキャンディス・スプリングスだとも言える。彼女はカントリーミュージックの本場、テネシー州ナッシュビルの生まれ育ちで、現在もこの地を拠点に活躍していると言う異色の存在。カントリーの本場育ちと言うと、白人シンガーの様にも思えるが黒人の歌い手で、父親はこの地でよく知られたソウル系シンガー。その父親の影響も大きいのだが、その彼女の新作『私を作る歌』は3枚目のアルバムで、デビュー作はソウル色の濃いアルバムだったが、2作目ぐらいからジャズ色も加わって来ており、この新作で一挙にジャズシンガーとしての地歩を固めた感も強い。

 アルバムはそのタイトル通り、自身の歌手としての大切な要素を作り上げてくれた、偉大な先輩シンガー達にリスペクトを捧げたもので、彼女達の持ち歌を自分なりのテイストで仕上げており、憧れのノラ・ジョーンズなどは一緒に共演したりもしている。ここでは女性ジャズボーカルの大本とも言える、レディー・デイ=ビリー・ホリディ(曲は「奇妙な果実」)から、エラ(「エンジェル・アイズ」)カーメン(「ソリチュード」)と言った大御所、更にアイドルでもあるノラ・ジョーンズやロバータ・フラッグ、ローリン・ヒルと言ったコンテンポラリーシンガーたちの持ち歌を取り上げ、ジャズをコアにソウル~ロックと言った幅広いフィールド迄も網羅し、自身のジャズワールドに作り上げている。仲々に見事だし聴き応えも充分。ご愛嬌なのはあのキャロル・キングの銘品「ユーブ・ガッタ・ア・フレンド~君の友達」を、日本の山崎まさよしとデュエットで聴かせてくれるところ。山崎の唄声もなかなかジャージで魅力たっぷりだ。

 これからのジャズボーカルの世界を担う有力な資質として、キャンディ・スプリングの存在、是非注目して欲しいものです。

【今週の番組は昨年4月に放送したものの再放送】

音楽評論家の青木和富先生に「平成のジャズ」というテーマでお話し頂きました。
M1The Doo-Bop Song / Miles Davis
M2Bye Bye Blackbird / Keith Jarrett
M3Spiral / Hiromi Uehara
M4Lifeline / Vijay Iyer & Craig Taborn
M5Don't Know Why / Norah Jones
M6Some Enchanted Evening / Sonny Rollins

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