6月24日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [テイスト・オブ・ジャズ]
2021/06/24(木) 19:00 番組スタッフ

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.571~歌うベーシスト】

 「歌うベーシスト」とはもちろんベースを奏でながら歌う、文字通り二足のワラジを履くシンガー&ベーシストのこと。この所このシンガー&ベーシスト(歌うベーシストと言うとベーシストが唄う...、と言うちょっと違った意味合いになってしまうので...)、かなり注目を集める存在になっている。その先駆けとも言えるのが女性のニッキ・パロットで、彼女の存在を有名にしたのは、ジャズをメインにした日本の某レコード会社。次々と彼女の新作を発表、彼女の名前と同時に、そのシンガー&ベーシストと言う存在の面白さもアピールすることになる。そしてジャズのみならず、ヒップホップなどブラックミュージック全般のニューヒロインとして、エスペランザ・ホールディングスが登場、この本命とも言える存在が、シンガー&ベーシストと言う存在をファンの間で定着させた感がある。

 面白いことには、エスペランザもニッキも女性だと言うこと。男性でもベーシストで余技に歌ったりもする輩もいるが、それはあくまでも余技、本職はベースと言うのが殆どだった。ところが最近のシンガー&ベーシストはもっぱら女性の独壇場、それもベーシストと言うよりシンガーと言うイメージの方が勝っている。更に付け加えると、この2人とも人を強く惹き付ける美形だということ。ベース弾きとしての力量があっても、歌い手となるとやはり華が必要となる。

 そんなジャズにおける歌うベーシストの世界に、今回新たな有望株が登場した。それもジャズにとってのかなり辺境とも言える地からで、一人では無く二人チームの一員としてなのである。彼女の名前はカンデ・ファッツ。アルゼンチンの女性で、2人組ユニット名は「カンデ・イ・パウロ」。カンデとパウロと言う2人の名前から取った、至極簡単なユニット名で、そのうちのひとりはピアノ&キーボード奏者のパウロ・カリッツ。かなり知的な雰囲気のキーボード奏者である。
 2人は自身で作成したユーチューブを公開した所、世界中から大反響を集めユニバーサルレコードからオファーがかかり、デビューアルバムのレコーディングに至ったと言うかなり幸運な進展具合。そのデビュー作は今人気絶頂のボーカリスト、グレゴリー・ポーターなど多くの音楽関係者が絶賛しており、ぼくの所にもそのインフォメーションが送られてきた。ラテン全般そしてアルゼンチンも大好き人間としては、このユニットの存在聞き逃す訳にいかない。と言うことでデビュー作を聴いてみると、これがなかなかのもの。

 全10数曲のうち、スタンダードが「サマータイム」など3曲ほど、また若い世代のユニットだけにレナード・コーエンやニール・ヤングと言ったロックの巨匠たちのナンバーも取り上げており、当然故郷アルゼンチンのナンバーも、母国のロックの英雄、アルベルト・スピネッタの銘品「パロ・タル・ベス」やフォルクローレの巨星、ユパンキなどのものが数曲あり、やはりこれらが素晴らしい。そして興味深いのはあの往年の東映の大スター、梶芽衣子の「修羅の花」を、ラストで取り上げていること(日本独自企画のようだが...)。この曲はクエンティン・タランティーノ監督が自身の映画「キル・ビル」で使い、世界的に知られるようになったが、2人もこの映画で強くインスパイア―され、今回取り上げてみたのだと言う

 アルゼンチンと言うともっぱらタンゴと言うことになるが、ガトー・バルビエリやラロ・シフリンなど世界的なジャズミュージシャンも排出、結構ジャズでも知られる国なのだ。それに最近ではアルゼンチン音響派など新たなポップミュージックも注目を集め、「アルゼンチン音楽ガイド」などと言うムック本も登場するほど、かなりな音楽充実国でもある。その国でベースを巧みに扱いながら、故郷の哀愁を醸し出すフォーキー&ジャージーな歌唱を聴かせるカンデ、その彼女を静かにフォローするピアノのパウロ。絶妙の息遣いで独特な世界を作り出すこの2人。きっとかなりな話題を集めるはずなので、皆様も要注目です。

【今週の番組ゲスト:フランス在住のサックスプレイヤー 仲野麻紀さん】
新譜『アンソロジーvol.1-月の裏側-』と『Cyrcles』から
M1「おもてとうら〜「ふたりののベロニカ」のために〜」
M2「あなたが欲しい」
M3「リフレクション」
M4「ジムのペディ1番」

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