「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.720~ブルータスジャズ特集号~】
「ブルータス」という雑誌がある。若者だけでなく中・高年の連中にもそれなりの影響力もあり、結構面白い特集企画も登場してくる好雑誌である。ここで以前「ジャズ・イズ・ポップ」という特集が組まれていた。ぼくの記憶違いでなければ、昨年も確か同じテーマで特集が組まれていた筈で、ジャズ関係者としては嬉しい限り。それにしても2年間続けてブルータスが同じテーマを組むとは、この雑誌にしてはかなり珍しいことだと思う...。ある意味それだけ今ジャズが、再び若者などの間で注目を集めつつある...のだ、と言えるのかも知れない。一頃は「ジャズ・イズ・デッド」なる言葉も、音楽界の流行語(?)となっている感もあり、実際この言葉をバンド名にしたパンク(ロックか?)バンドもあったくらいに、ジャズは影が薄いものになっていた。それがどうだろう、今やはりジャズなのだ...と気付くミュージシャンや音楽ファンが増えつつあり、これはエポックメーキングな事実いや事件なのです。
と言うことで早速書店に向かい、ブルータスを一冊購入、ササっと読んで見ると、嬉しいことに巻頭特集ではなく全編ほとんどがジャズ関連記事。昨年も同じ特集のブルータスを買った筈だが、それとどう違うかは余り覚えてはいない。しかしいくつか教えられるところもある面白い記事もあり、買って損したと言うこと無しだった。まず冒頭記事が「10イベンツ・オブ・ジャズ」と言うことで、23年のジャズ10大ニュースなるものが載っている。当然注目の歌姫=サマラ・ジョイのグラミー賞2冠受賞やジャズミュージシャンのドキュメンタリーフィルムが目白押し...などの良く知るニュースもあるが、新鮮だったのは韓国ポップス=Kポップのスターとジャズとの関りで、一つは今話題の若手シンガー、ジョン・バティステがK-ポップの新星女性ユニット「ニュー・ジーンズ」(初耳ユニットだ)とシカゴの音楽フェスで共演したニュース、そしてもう一つは、流石にこれはぼくも知る韓国人気ユニット「BTS」の人気ナンバー1とも言われるⅤが、スタイリッシュなジャズアルバムを発表し大人気を呼び、更に女性アイドルユニット「ブラック・ピンク」(これも初耳ユニット)の一員ジーンも、ジャズテイストの新作を出したのだと言う。流石に目端の利く韓国ポップス界。何やらロッド・スチュアートやボブ・ディラン等のスターが、次々とジャズアルバムを出したことを連想してしまうが、彼らは大御所で韓国の方は若手の人気者達。音楽の先を読む韓国ポップスフィールドの目の付け所、日本とは一寸違う感あり...なのです。そう言えばジャズ志願者ならば誰でも憧れる、あのバークレー音楽大学(音楽院から大学に昇格)の在籍者は、今や第一が韓国、2番目が台湾、そして3位が日本だと言う話をかつてその卒業生から聞いたことがあるが(真偽の程はしかとはしないが...)、ことほど左様に韓国のジャズ人気はかなりなものがあり、また世界最大級のジャズフェスが毎年インドネシアで開催されれている事実など、今や「ジャズ・イズ・東アジア」と言った様相すらある程なのである。
そしてもう一つ面白かった記事が、大御所森山威男と若手随一の石若駿の親子以上に年令の違うドラマー対談、それと日本のジャズと言えばこの人、貞夫さん(渡辺貞夫)のジャズ・トークと好きなアルバム10選。そしてもう一つはぼくの自慢話...。30年ほど前のデビュー時から次世代のトップはこの人...と言い続けてきた、ぼくの押しのシンガー(当時は殆ど話題にもならなかった...)セシル・マクローリン・サラバント。彼女が堂々の1ページを使って取り上げられていること。ようやく日本でも彼女の存在が、トップシンガーとして認識されつつある良き証左とも言える。最後にもう一点。楽器によるジャズ...という項目の「サウンドの世界を拡げるが楽器たち...」として、フルートやヴァイブと共に、なんとチューバが取り上げられていこと。これは立派です。ジャズ発祥の地ニューオリーンズから今最も熱いサウスロンドンへ、それを繋ぐ楽器がこのチューバ。この最も古くて最も新しい楽器に目を付けた辺りは立派で偉い。まあなにやかで...、色々と面白いブルータスのジャズ特集号でした。
【今週の番組ゲスト:アレンンジャーでコンダクター、トロンボーン奏者の松本 治さん
ジャズボーカリストの大野えりさん】
『デューク・オン・ザ・ウインズ feat.大野えり』から
M1 「Something To Live For」
M2 「Solitude」
M3 「Take Love Easy」
M4 「Mood Indigo」