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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.325~秋といえば月】

 このところ秋の長雨の例え通り雨天や曇天続きで、肝心の仲秋の名月を味わうことも叶わない。この月=ムーンは珍しく欧米人も日本人(だけでなくアジア圏全体だろうが...)も共通の大きな愛する対象。と言うのも、もう一つの秋の風物詩、虫の音などは欧米系の連中にはほとんどが関心外とも言われ、人間の感性にもそれぞれのお国柄、民族柄が出るようなのだが、こと月に関しては共通の愛でごとで、欧米や日本でも多くの曲で月を歌い込んだものも多い。いわゆるジャズスタンダードでも最も多いタイトルの一つで「ムーン・リバー」「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」等々、直ぐにタイトルが思い浮かぶものも少なくない。このタイトルだが、かつてはメロディーを聴けば大体直ぐにその曲名が出てきたものだが、いささかアルツ気味のオールドボーイ(ぼくのこと)ともなるとこれがそうはいかない。コンサート評などを頼まれると、良く聴くメロディーでぼく自身も好きなものでも、そのタイトルが思い出せないものも多く、それに注意が向いてしまい肝心の中身を聴き逃すこともしばしば...で、トホホな事態になってしまう。誠に困ったものである。
 
まあそうした老いの話はさておき、この季節にぴったりなムーンタイトルの曲について、今回は少し記してみようと思う。まあどうしてこんなことになったかと言うと、9月のある日新宿のディスク・ユニオン・ジャズ館でエサ箱を覗いていると、ジャッキー・キングと言う耳慣れないギタリストの『ムーン・マジック』と言うアルバムが気になり、購入してみるとこれがタイトルにも関係している通り、全編月をタイトルにしたナンバーばかりを集めた企画もの。彼のギターをメインにしたギタートリオアルバムなのだが、ジャッキー・キングなどといささか胡散臭い名前で当然初めて聞く人だったが、アルバムのライナーノーツを読むと、これがテキサスではかなり知られた人。ジャズだけでなくカントリー、ブルース、テックスメックス(テキサス風メキシコ音楽)など、テキサス流に何でもこなすバーサタイルなギタリストと言うことで、あのカントリーの第一人者、ウイリー・ネルソン(彼が唄うジャズスタンダードアルバムは大ヒットした)のバックバンドの中心メンバーで、ウイリーからの信頼も絶大な人だと知った。

 
その彼のムーンアルバムには、当然「ムーン・リバー」など上記の2曲も収められており、その他には「ブルー・ムーン」「ムーンライト・イン・バーモンド」「イースト・オブ・ザ・サン・ウエスト・オブ・ザ・ムーン」「ムーン・レイ」「ポルカ・ドッツ&ムーン・ビームス」など、全部で9曲のムーンソングが収められている。テキサスの名ギタリストと言うだけあって、ジャッキー・キングのギターテクも抜群で、何よりジャズ臭が薄く様々な音の色合いを保っている所が良い。モダンジャズの創成期=ビバップエイジに良く演奏された「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」ではビバップ風味な巧みな技を披露、ジャズギタリストとしても一流な所を聞かせてくれる。ムーンソングの代表曲が殆ど網羅されたこのアルバム、全9曲の中でぼくが知らなかったムーンソングは1曲だけ。「ワット・ア・リトル・ムーンライト・キャン・キャン・ドゥー」と言う曲。すこし資料を調べると、この邦題は「月光のいたずら」とあり、ハリー・ウッズと言う人が作詞・作曲したもので、残念ながら制作年度は不明。
  これを含めここでの9曲以外にも、ムーン・ソングは...と調べてみると、最も有名なのが人気スイングジャズバンド、グレン・ミラー楽団の「ムーライトセレナード」、そしてスイング王ベニー・グッドマンの十八番「ムーングロー(月光)」。そして「月の悪魔は君の瞳の奥にいる...」と歌われる「オールド・デビル・ムーン(アニタ・オデイの名称が印象的)」辺りか...。これに続くのが「ムーン・ワズ・イエロー」と「ムーン・イズ・イエロー」と言う色シリーズ。更に映画主題曲としても知られる「ムーン・オブ・マナクーラ(マナクーラの月)」と言った処。「ムーン・ワズ・イエロー」はその後に「アンド・ナイト・ウワズ・ヤング」と続くのが正タイトルとのことだが、ざっと上げてもムーンソングは15曲余りで、まだまだ山ほどある筈だが、今回はこの辺で...。

 果たして西洋にお月見の風習があるかはしかとしませんが、日本でも台湾でもフィリピンでも、やはり東アジア諸国では月を愛で色を愉しむ(どこも共通にお団子のようです)古来からの風習があるようですが、我らジャズ党はここらで月は見えねど月歌ジャズ=ムーンソングジャズを愉しむ...という、この時期ならではの風雅な志と余裕を持ちたいものですね...。

【今週の番組ゲスト:「off note」主宰の神谷一義さん】
M1Stravizauls / 生活向上委員会ニューヨーク支部」
M2「インターナショナル /大工哲弘」
M3Sedotta e abbandonata(誘惑されて棄てられて)/ 原田依幸」
M4「Vietnamese Gospel / 梅津和時」

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