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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、再放送毎週土曜日23:00-、毎週日曜21:30-、などでオンエアー中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.116~東京ジャズ2012~】

 9月の初旬に東京フォーラムで開かれた「東京ジャズ2012」に行ってきた。今や首都圏で開かれる唯一のジャズ・フェスになってしまったこの東京ジャズだが、10年目と言う節目の年。いわゆるジャズの公演は初日・8日の夜、”ジャズ・ルーツ”とタイトルされたものだけで、あとはポップス、R&Bなどと言った感じのグループが主流で、規模やその歴史に大きな違いがあるが、出し物だけを見るとスイスの「モントルー・ジャズ・フェス」に近い、ジャズ職の薄いミュージック・フェスと言った感じになっている。ぼく自身はこの変化、そう悪いものだとは思えないが、やはりラテン・ジャズなどお祭りムードを高めるビヨンド・ジャズ的な出し物も是非欲しいとは思っている。

 この“東京ジャズ”、最近ではメイン会場の公演よりも、無料で聴ける屋外の出し物の方が、意欲的で面白いと言う声も少なくないのだが、今年もまたヨーロッパやオーストラリアから、若い俊英ミュージシャン達がやってきての自身の音楽を目一杯披歴し、大いに盛り上がっていた。メイン会場とこれらのサブ会場の有機的な連携なども、これからの課題だと思われる。

 さてここ数年このフェスの人気を独占していた感もあった上原ひろみに変わって、今年の顔は小曽根真だった。松田聖子が初めてジャズに挑戦などと言う格好の話題もあったが、小曽根の活躍にははるかに及ばなかった。クリスチャン・マクブライド、ジェフ・ティン・ワッツと言った最強メンバーと組んだ自身のトリオで、その凄腕振りを見せつけるとともに、自身の父親(関西ジャズ界のボス)と同じ年令と言う、ニューオルリーンズのレジェンド・ピアニスト、エリス・マルサリスと楽しげにデュオを展開するなど、その活躍は際立っていた。しかしそれ以上に今回のフェスで彼の存在が光っていたのは、急遽公演取り止めになった鬼才、オーネット・コールマンの代役で、小曽根スペシャル・バンドを組み、オーネットの難曲をそのメンツと共に演奏したことだった。オーネットの取りやめが決まったのは数日前のこと、主催者はあわてて彼に相談したのだろうが、オーネットにちなんだナンバーをスペシャル・ユニットでやるというアイデアをだし、それを見事実現したのは流石だった。「ぼくはオーネットの曲をやったことは無いんですけど…」と観客に語りかけた彼は、前衛派の闘士として尖鋭的なイメージも強いオーネットと比べると。あまり重なる所もないが、彼のブルース感覚を小曽根流に処理し、従来とは違うオーネット像を浮かび上がらせた手腕は素晴らしかった。特にアンコールで登場し、ソロで弾いた「ロンリー・ウーマン」、小曽根自身にとってもメルクマールになるような圧巻のパフォーマンスだった。


9月15日番組ゲストのMUZAK福井亮司さん


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