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テイスト・オブ・ジャズ

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テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.598~横尾忠則展~】

 余り年令の事は言いたくないのだが、やはりその話になってしまう。どうも最近コロナ禍も影響しているかも知れないが、出不精になっているようだ。案内が来ても展覧会や試写会、更にはコンサートなどへ顔を出すことも少なくなってしまった。中でも美術展、以前は関心があるものは余程混んでいない限り、行くようにしていたのだが、どうも駄目である。

 そんな折NHKのEテレ美術番組で特集も組まれ、是非とも行かねば...と思っていたのが、東京都現代美術館(MO+)で開催中の横尾忠則展。だが気持ちはあっても行動が伴わないのだが、期日を見ると10月半ばにはもう終了とある。まあこれでは仕方ない...と諦めかけていた所、山本嬢がこの展覧会を見に行き感激、是非行くべき...とTEL予約までしてくれた。こうなれば国立の自宅から隅田川を超え、はるばる下町の美術館迄行かざるを得ない。と言うことで先日、終了ギリギリで行ってきました横尾展。一口に言って想像以上に凄かった。まあ掛かっている絵画・ポスター一体いくつあるか分からない程に膨大、その数量、そして作品の馬鹿でかさ=雄大さ。本当に圧倒されました。老体には珍しくその前夜、番組収録と編集作業で仕事終わりがなんと夜の11時過ぎで、帰宅はタクシーを使い深夜1時過ぎ。横尾展当日は眠たくて々仕方なかったが、入館時間が予約で決まっており間に合うように急いだ。現代美術館に着くともうかなりぐったりだったが、そんな眠気・疲れなど会場に入ると一瞬にして吹き飛んでしまう程、圧巻のエナジーが各作品から放射されている。

 ぼくらの世代、言うなれば大学時代に大学闘争を経験した60~70代の連中で、文芸・音楽・演劇・絵画などの芸術活動に関心をを抱いた面々、特にぼくのようにジャズに最大の関心があった者にとって、間違いなく絵師&ポスター師の横尾忠則は、時代のアイコン(象徴・アイドル)だった。あの時代を彩った2つのアングラ劇団、唐十郎の状況劇団、寺山修司の天井桟敷。ぼくは唐派だったが、あの激動の時代を担った2つの意欲的芝居小屋、その蠱惑力・動員力をさらに高めたのが、横尾忠則が描く芝居ポスターだったのは間違いない。「腰巻お仙」「ジョン・シルバ―」等々、テント小屋芝居での横尾絵師の描くポスターは「書を捨て、街へ...」では無いが「日常を捨て、テント小屋へ...」と、若いぼくらを強烈にアジっているものであった。余談だが膨大な数の機動隊に囲まれながら見た、早稲田大近くの戸山公園にあった野外劇場跡での、唐さんの「ジョン・シルバ―」忘れられません。

 あのポスター師からポップアーティストとしての80年代初め頃迄の横尾の仕事、強烈にインスパイアされるものは多かったのだが、以降「絵描き宣言」をしてポップ芸術の世界を抜け出して以降、その彼の仕事振りにはなぜか興味がわかなかった。と言うよりもその頃は確か小説なども書いており、それが余りに霊的な要素の濃いものだったことなども影響して、あちらの存在としての横尾には興味を失ってしまい、何を描いているのかも時々知る程度だった。そんな折にEテレでの特集、かなりショックを受けたのだが、その作品の持つスケール感まで分からなかった。それが今回それらに対峙して、本当に仰天したと言う感じなのである。

 展覧会のサブ・タイトルは「原郷から幻境へ、そして現況は?」と言うもので、今回の展覧会のコンセプトを見事に浮き彫りにしている。それにしても「滝」と「二又路~Y字路」、更に自死した作家、三島由紀夫。この3つの重大要素への横尾の拘りは凄い。中でも「滝」を描くために彼が集めた世界中の滝の絵葉書。その数なんと13000枚余り、その殆んど全てがびしっと部屋中に展示され、それだけでクラクラと眩暈がしてしまう程。
 まあこの驚天の展覧会に、今回間に合っただけでもぼくは幸せ者だとつくづく思う。その余りに並外れた才能と想像力、創造力そして好奇心、横尾のこれら全てに乾杯!

【今週の番組ゲスト:ヴォーカリストの おいたえりこ さん】
Starry Night』から
M1I wish you love
M2Wild is the wind
M3「愛しき人よ(Love me tender)
M4Vincent


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