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テイスト・オブ・ジャズ

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テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.392~大西順子】

 最近のジャズシーン、特に日本のジャズシーンでは女性陣の活躍が目立つように思えてならない。今や国際的な大スターとして、屈指の力量と人気を誇るピアニスト、上原ひろみを筆頭に、おなじピアノの山中千尋、ヴァイオリンの女王、寺井尚子、若手では寺久保エレナ、桑原あい等々、まさに多士済々。シーンは女性天下と言った趣きすらある感じである。そうした女性陣の先陣を切って今から四半世紀前、日本のジャズシーンに大きな刺激と衝撃を与えた偉才、それが若くして女傑とも言える風格の大西順子だった。

 彼女のデビューは今から4半世紀=25年ほど前のことで、名門バークリー音楽院を卒業、帰国直後に吹き込んだデビュー作『ワウ』は、一大センセーションを巻き起こし大評判となった。圧倒的な演奏テクニックとそのジャズセンスと共に、その存在がジャズ関係者の注目を集めたのは、誰に対してもため口で話すその大胆とも言える物言い。生まれは京都なのだが、育ったのはぼくの住む東京の国立市で、出身は進学校の都立国立高校。ぼくの高校時代の同級生が国高で物理の教師をしており、その彼から才気溢れる彼女の存在は聞いていたのだが、その後バークリー音楽院に留学すると知り、将来が楽しみだった。帰国直後に新宿のジャズクラブ「J」で会い、色々と話をして番組出演を承諾してもらったのだが、「J」での会話でも聞きしに勝る生意気さ、ぼくとは30才近い年の差があった筈だが終始彼女は「あんた」呼ばわり。その時は後輩のジャズ雑誌編集長も一緒で、その彼もあんた呼ばわりされむっとしていたが、ぼく自身はいささか気張っているなーとは感じてもそう気にもならなかったし、なかなかに面白い存在と思えたものだった。その数日後デビュー作を携えスタジオに現れた彼女、当時の担当アナウンサーの質問にもまともに答えることも無く、あの問題になった沢尻エリカ状態。面倒くさそうにスタジオを後にしたが、以降はあれよあれよと言う間も無くスター街道をひた走り、一躍J-ジャズきっての大スターへと上り詰めて行った。その後はほとんど顔を合わせることも無かったが、激しい気性の彼女は毀誉褒貶も激しく、自身が起こした問題などの個人的な事件などもあり一時は引退状態。カムバックしてからも自身で「ジャズなどやっているのは馬鹿らしい...」などと勝手に引退宣言、各方面からバッシングを浴びるなど、実にドラマチックなジャズ人生を歩んで来た。

 
そんな彼女も数年前からは大分落ち着いて仕事にも取り組むようになり、昨年終わりには本格的なカムバック作として2枚のアルバムを同時発表、再び大いなる注目を集めることになる。1枚はそのキャリア初のバラードアルバム『ヴェリー・スペシャル』、そしてもう1枚は8年振りとなる自身のトリオ作品『グラマラス・ライフ』である。まあ2枚も同時発表し今大いに乗っている感もある順子先生。ここは一つ久し振り(25年振り)にスタジオにお呼びしてみようと...と思い立ち、恐る恐る声掛けをすると快諾を得られた。順子先生も変わったのである。
 担当の山本郁嬢も色々評判を聞いているためか、大分及び腰でびくびくものだったが、いざスタジオで接するとそんな評判とは裏腹、昔の彼女を知っているぼくもいささか面食らったし、ホッともしたものだった。彼女自身は25年前に番組に登場したことはもう記憶になかったのだが、「あの頃は本当に生意気でしたからねー、色々とご迷惑も...」と軽く感想をかましてくれた。大分大人しくなり成熟した感はあっても、相変わらずひりひりとして生意気風ないい女でもある。

 
バラードアルバムの方はイントロとエンディングが彼女のオリジナルで、後は有名スタンダード、そしてヴェルディ、チャイコフスキーと言うクラシックナンバーのジャズバージョン。大西とゲストミュージシャン達とのバラードを仲介とした化学反応も実に心地良い。一方のトリオアルバムは、井上陽介(b)高橋信之介(ds)と言う、このところ一緒に活動している俊英達とのトリオ演奏で、3人の丁々発止のアグレッシブな絡み合いがなんとも凄い。タイトルの「グラマラス・ライフ」とは「豊かで充実した人生」と言った意味合いで、今の彼女を象徴しているような言葉だとも言える。番組ではそれぞれから2曲ずつ彼女が選び出し紹介しているが、彼女の多彩な音楽性が良く分かる選曲になっている。
 
新しい年の抱負として、彼女は、もう一度自身の原点を見つめ直し地道な活動を展開して行きたい...と語ってくれたが、なにか語ると常にセンセーショナルに取り上げられがちな彼女だけに、自身の原点を...という言葉は重く響いた。結婚・子供の誕生などを経て、人生や音楽に対しこれまでとはまた違った感じで向き合っている彼女、その今後は更に期待大と言えそうだ。ジャズアマゾネスとしていつまでも精力的な活動を...。
【今週の番組ゲスト:ジャズピアニストの大西順子さん】
昨年2枚同時リリースされた『Very Special』『Glamorous Life』から
M1Tiger Rag」
M2I Cover The Water Front
M3Lush Life
M4
Golden Boys


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