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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30+再放送毎週日曜日20:00-20:30でオンエアー。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.57~郭公のセレナーデ~】

 ぼくの住んでいる国立市は、一橋大学に象徴されるように、文教都市として知られ、緑の多い住みよい街でもある。そんな街だけに朝方などは鳥の鳴き声も多く、我が家のバカ犬との散歩の愉しみの一つが、鳥達の鳴き声を聴くことにもある。そんな中でもこの初夏、6月から7月にかけて、毎年楽しみにしているのが郭公の鳴き声である。

 毎年一羽だけ、言うなれば“はぐれ郭公”がいて、これが朝方けたたましく“カッコウ、カッコウ…”と鳴くのである。恐らく異性を求めての鳴きなのだろうが、隣の中学校のアンテナの上や大きな山桜の木もてっぺんなど、声が大きいので姿も直ぐに見分けが付く。他の鳥の場合は、特にこれが何の鳥かなど気にならないし、その鳥が鳴き始める時期も無関心なのだが、この“はぐれ郭公”だけは何故かその存在が気になり、その声を聴かないとどうしたのか気になってしまうのだ。まずはその鳴き声の大きさ、そしてたった一羽、孤独にさえずり続けるところが、なんとも気になり、今年もまた頑張っているなー、などと励ましの声を掛けたくなってしまうから不思議なものである。
 
 そしてこの“はぐれ郭公”の鳴き声を聴くといつも一人のジャズ・メンのことを思い出してしまう。奇才にして鬼才、盲目のサックス吹き、故ローランド・カークである。彼は自身で改良したサックス(マンゼロやストリッチなど)を一度に同時に吹く、世界でも類の無い多重奏法を確立した天才なのだが、盲目の上いっぺんに3本も楽器を扱う驚異的プレーヤーだけに、デビュー時にはその外見から“グロテスク・ジャズ”などと言う、甚だかんばしくない名前も付けられたこともあった。しかし彼のジャズはその外見とは裏腹に、実にピュアで美しいものだった。そんな彼がフルートで美しく描き出したのが郭公の鳴く姿。“セレナーデ、トゥ・カッコウ”と題されたそのジャズ・ナンバーは、数あるジャズ・オリジナルの中でも最も愉しく美しいナンバーの一つでもある。朝、散歩途中に”はぐれ郭公”の声を聴くと、あのカークの名旋律が浮かんできて、何故か一人でハミングしてしまうのです。


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