「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.703~グレッチェン&マークス】
このジャズコラムでも以前書いたが、ぼくも関わっていたジャズ雑誌「ジャズ・ジャパン」の編集長、三森隆文氏が夏の初めに急逝してしまった。突然死だっただけに色々その後はあったのだが、その後継誌の「ジャズ・イズ」を彼と一緒に編集をやっていた佐藤俊太郎君が立ち上げ、先日無事にその創刊号が刊行された。目出度し目出度し...と一安心だったのだが、そんな折敬愛する先輩のジャズライター、悠雅彦氏が亡くなってしまった...と言う悲しいニュースを聞かされた。
数年前からいささかアルツハイマーの傾向が見られた氏だったが、昨年には施設に入ることになり面会も叶わないと言う状態で関係者は大分心配していたのだが、残念なことに亡くなってしまわれた...。どうもぼくも含めジャズ関係者などは、かなり我がままと言うか自由に生き行動する連中が多く、高齢者施設みたいな結構閉鎖的な所に入ってしまうと、周りと上手くやって行ける感じも無い。それだけに...と心配していたのだが、どうやらその危惧は現実になってしまったようで、施設に入ってからは急速に元気を失くしてしまった...と言ったとも時々耳にしていただけに...。
悠さんは早稲田大の先輩で、学内の有力音楽サークル~ジャズのフルバンド「ハイソサエティ―・オーケストラ」通称ハイソの出身。学生時代はバンド付きのボーカリストだったとも聞くが、大学卒業後はプロの歌手として少しばかり活動していたらしくシングル盤を出したこともあるやにも聞く。だが余りパッとはせずに消えてしまった。その後一念発起しジャズ誌「スイング・ジャーナル」のジャズ論文コンテストで最優秀賞を獲得、ジャズライターの道を歩み始めることになる。ジャズについて書くだけでなく、自身でジャズアルバムのプロデュースも行い「ホワイ・ノット」と言う意欲的なレーベルも立ち上げ、NYの最先端に位置するミュージシャン達とも積極的な交流を図ったりもした。悠さんは早稲田の音楽サークル繋がりと言うこともあり、昔からかなり親しくさせてもらっていたが、それだけにその死のニュースを聞いた時は、大変に寂しい思いをしたものだった。晩年はぼくも絡んでいるジャズサイト「ジャズ・トウキョウ」の編集主幹として、ジャズに関する巻頭エッセイを毎週ものしていたが、その鋭い感覚のジャズエッセイを読むのも今はもう叶わなくなってしまった。
先日「ブルーノート東京」に、今ぼくが最も関心を持っている新時代のジャズシンガー、グレッチェン・パーラトが登場、夫君で今最もクリエイティブなドラマ―としても知られるマーク・ジュリアナ、更にその息子を伴ってのステージだったが実に素晴らしいもので、ジャズボーカルの新らたな地平を切り開くようなその圧巻のステージ、それを聴きながらそう言えば彼女とマークのこのライブ、悠さんならば大絶賛しただろうに...と、彼女の歌うブラジリアンナンバー「フローラ」と共に、残念な想いもいや増す感じも強かった。アディオス、悠雅彦~我が敬愛する先輩!
【今週の番組ゲスト:トランペッターの松井秀太郎さん】
デビューアルバム『STEPS OF THE BLUE』から
M1「HYPNOSIS」
M2「STEPS OF THE BLUE」
M3「NEAPOLITAN DANCE」
M4「TRUST ME」