6月23日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [テイスト・オブ・ジャズ]
2018/06/22(金) 19:00 番組スタッフ
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.415~話題のコルトレーン発掘盤】

 今年のジャズ界の話題と言えば何と言ってもジャズの神聖レジェンド、トレーンことジョン・コルトレーンの公式スタジオ録音の奇跡とも言える音源発掘と言うことになるだろう。6月末に世界同時発売(!)されるそのアルバム。タイトルはずばり『ザ・ロスト・アルバム』。トレーンの絶頂期、1963年に正式録音されたもので、あの黄金カルテット(トレーン、マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)エルビン・ジョーンズ(ds))による失われた公式演奏記録が、なんと55年振りに発見されたと言うのだから、ジャズ界で話題沸騰になることは至極請け合い。現に朝・毎・読の3大新聞をはじめ音楽関係各誌、更に何とNHKの定時ニュースでもかなりな時間を割いてこのニュースが取り上げられた(残念ながらぼくは見ていないのだが...)のだから、話題枯渇状態にあったジャズ界にとって、なんとも嬉しいビッグニュースになったのである。

 ユニヴァーサルから期間限定で送られてきた音源を聴いたが、アルバム収録曲は7曲。50分余りの収録でその内に未発表曲が2曲、いずれもマトリックス番号が付けられており、タイトルは無し。トレーンならではの「シーツ・オブ・サウンズ」を生かした目まぐるしい展開のナンバーになっている。この録音が行われた63年前後には、彼の代表アルバムともされる『バラード』(62年冬)『コルトレーン&デューク・エリントン』(62年9月)『コルトレーン&ジョニー・ハートマン』(63年3月)と言った人気&傑作盤が収録されており、この吹込みはなんとシンガー、ジョニー・ハートマンとの共演前日に行われたものだと言う。この3作に共通しているのは『バラード』にも象徴されるように、バラードタイプの心和むソフトタッチの演奏がメインなのだが、今回出されるこの『ロスト・アルバム』はかなりフリーブローイングにも接近した、後期トレーンにも近いハードエッジでゴリゴリと迫ってくる重めの演奏が多いこと。当時のライブアルバム『ライブ・アット・バードランド』(63年10月)ではこれに近いエッジの利いた演奏が展開されているが、ここでも1曲目の未発表曲や彼の代表曲の一つ「ワン・アップ、ワン・ダウン」などがその代表的な先鋭プレーでもある。
 実を言えば、最近は余りトレーンのそうした真摯にしてトーゥーマッチ(ヘビー)なプレーに接していなかっただけに、かなりずっしりと迫って来て、素晴らしいと思いつつもいささか...と言った感じも抱いてしまう。

 今から半世紀ほど前、荒れた世の中にあった大学生時代、新宿のジャズ喫茶に入り浸って「石を投げたり」「ジャズを浴びていた」頃には、トレーンは間違いなく世界の一つの中心だった。彼の過激・激烈を絵に描いたようなあの来日コンサート(この1年後に彼は他界、あの過酷な日本ツアーが彼の寿命を縮めたのは間違いない事実だが...)では、ぼくら3大学のジャズ研(早稲田、立教、慶応)が、公式記者会見で大学生だけの質問時間を取って、彼に直接質問をぶつける等も敢行、ある種のジャズ神でもあった彼の本質に迫ろうなどと言う大胆な試みも行ったものだった。だがあれから55年、月日は過酷に流れ去り、今やオールドボーイに成り果ててしまったぼくには、あの突き詰めた迄の過度の真摯さに、多分に惹かれつつも...と言う感じがあるのもまた事実。でもでもここでの彼の演奏、そしてエルビン以下の黄金カルテットの面々のプレーもさすがの迫力だし凄いの一言。ジャズ黄金時代の底力ここにありの言った感がひしひしと迫って来る。但しぼくがここで最も気に入ったのは、なんとも言えない明るさを漂わせたミュージカル「メリー・ウイドー」の挿入曲でもある「ヴィリア」。この軽快感は同時期に吹き込まれた3枚の傑作アルバムにも共通したもので、ホッとすると同時に愛おしさも強く感じられる。

 このアルバムが世に出るようになったのも不可思議な縁によるもの。元の収録テープはレコード会社が消去(合理化のための様だ)、トレーン自身が自宅に記録・保存用として持ち帰っていたテープ、それが数十年後にある音楽オークションで遺族から提出され、競売にかけられ「ヴァーブ」の担当者の目に止まる。そこからまた様々な紆余曲折を経ること10年余り、今回ようやくインパルスレーベル作品として日の目を見たと言う次第。ある意味本当に奇跡の発掘であり、本当にこんなジャズ大看板にもこんなことが起こるのだと言う好例とも言える。
 発売は6月末。番組でも是非このアルバムを特集し、その意義や魅力を誰かプレーヤーに解説してもらうつもりです。期待して待っていて下さい。よろしく!
【今週の番組ゲスト:「Ladyやまねこ」のトランペッター、コンポーザー、アレンジャーの中西暁子さん】
1stアルバムの「Let Them Talk」から
M1
Bluesette
M2
Blue Dancing Manatee
M3
「星めぐりの歌」
M4
Hana Aoi

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