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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.232~88プロデューサー~】

 11月下旬のある日新聞を見ていると、死亡欄に彼の名前がある。とうとう来たか...,と言った感じで、その日に仲間からメールやTELが数回入り、通夜や葬式などの予定が判明する。伊藤八十八くん、68才。
 ジャズ評論家やプロデューサーから社長に出世したお偉いさんならば、死亡欄に登場することもあるが、一介のプロデューサーが朝日新聞の死亡欄に出るとは異例のこと。それだけ彼の業績が如何に大きかったことを如実に物語っている。

 このコラムでも何回か彼を取り上げており、一番多いのは彼が旗振り役の軽井沢大賀ホールでの日本の「ニューポート・ジャズフェス(映画「真夏の夜のジャズ」)」を目指し、初夏に行われている「軽井沢ジャズフェス」関連。今年の夏で3回目になり、毎年彼から頼まれてライブ評なども担当しているのだが、今年は闘病中で彼の姿は遂に現場に無かった。その他「ジャズインディーズ」と言うと、彼が立ち上げた自身の「88」レーベルのことに言及する結果にもなり、彼の名前は再三このコラムに登場となっていた。そんなこともあり通夜の席で、参列者から「彼の名前を検索していたら「テイスト・オブ・ジャズ」が頭から2回も出て来たよ...」などと言われもして、悲しくも少し嬉しくもあったのだった。

 その八十八氏だが、彼は早稲田大でぼくの1年後輩、トラッドジャズの「ニューオーリーンズ・ジャズクラブ」出身。学生時代は知らなかったが、彼がレコード会社に入社してから知り合い、もう40年近い付き合い。入社後数年経ってCBSソニーに移籍してから、渡辺貞夫、日野皓正をはじめ、スクエアー、マリーン、ケイコ・リー、今再注目の寺久保エレナ等々、彼は大きな仕事を次々とこなしていき、大プロデューサーとしての地位を確立する。元々は岐阜の名勝地、養老の滝の傍で生まれ育ったいわば山奥の出なのだが、その作品は最も都会的でファッショナブルなものだった。その名前88は八月八日生まれだったことによる。彼はこの88を大変大事に考え、自身のレーベル名もそうだし、結婚もこの8月8日(かみさんは元アイドル歌手)、定年で独立したお祝いもこの8月8日だった筈で、人生88尽くし。この世を去る日だけは8月8日とはいかなかったのだが...。

 ぼくは彼の通夜にしか出なかったが、葬式では一関の「ベイシー」の名物マスター、菅原氏が追悼の辞を述べ、横にいた森田氏ことタモリを呼んで一言述べさせたと言う。タモリと八十八は早稲田大文学部で同期、閣下は一緒だったかはしかとは知らないが、同じ音楽仲間で当然顔見知り、その後レコード会社ではタモリのアルバムも作ったりした仲。フジオちゃん(赤塚不二夫)の時程ではないだろうが、森田くんらしい一言が聞かれたはずで残念でもあった。

 それにしても惜しい人を失った。八十八氏が立ち上げた「軽井沢ジャズフェス」も、来年からどうなるのか...。まあ存続はかなり難しいだろうが、どうにか続けて欲しいものである。ジャズアルバムが売れなくなってしまった現在、かなり孤軍奮闘していた感のある八十八氏。「いまはアルバム作るよりも、イベントブッキングの方が忙しくてね...」などといくらか寂しそうに語っていた彼。その人なっこい微笑ももう見られない。八十八さんよ、安らかに眠りたまえ。合掌!
【今週の番組ゲスト:テナーサックス奏者のQいしかわさんと、ピアニストの遠藤征志さん】
M1『Kingengo Blues』
M2『Misty』
M3『夕やけのうた』
M4『約束』

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