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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は2020年1月より毎週日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.498~エースのジョー逝く】 

 エースのジョーこと俳優の宍戸錠さんが亡くなってしまった。自宅で倒れている所を発見され死亡が確認されたと言う、孤独死だったようだ。本当に個性的な俳優さんだったし、素晴らしくダンディーな漢だっただけにとても寂しい。と言ってもジョーさんの存在を知る若い人はそう多くない筈だし、中高年の人達でもその全盛期を知る人はそう多くないと思う。石原裕次郎、小林旭、渡哲也、藤竜也と言った、全盛期の日活の主役を張った錚々たる面々の一人で、善人ヒーローだけでなく、あくの強い悪役もこなし映画界のヒーローになった、得難い存在だった。

 ぼくがジョーさんと仕事をしたのは今から30数年前、たった一度きりのことだった。但しその仕事の間1か月位の付き合いは、今となっては本当に忘れ難いものでもある。当時ぼくはスポーツプロデューサーとして、シーズン中はプロ野球中継を担当、野球のオフシーズンは毎週3時間半のスペシャル番組の制作を担当していた。毎週このスペシャル企画を6か月間、25本近くの特別番組を2年間ほど作り続けたが、月4本強の番組の内、1~2本は外部のプロダクションとの協同制作、残りが自主制作。これがなかなかの難物、今考えれば良くこなしたと思うが、自身の勉強にもなった貴重な特番制作だった。その中の1本が「我が愛しのヒーロー達~日活映画のスター達」と言う企画で、ぼくが好きな日活映画のヒーロー達のインタビューと映画の音声などを組み合わせた中々の力作で、往年の日活を偲ぼうと言うもの(その時に日活はポルノロマン路線でかつての全盛時から10年余り経っていた)。
 日活の宣伝部も協力してくれ、これは自慢になるのだが、この内容とほぼ同じ企画が、そのまま「ヒーローズ」と言うタイトルで映画化された。ラジオ番組が映画化という例はまあ余り無く、この映画の監修役は特番で進行役候補の一人に挙げていた、作家の矢代俊作氏(日活映画フリーク)。ラジオの特番を聴いた日活の宣伝部の一人が、この企画を編成会議に提出、それが通って映画実現と言うことになった様だが、大変に嬉しく自慢できる想い出でもある。

 
 そしてこの特番では役者さんとのコネクションなども考え、当時の中堅監督の長谷部安春氏にお願いすることにした。大のジャズ好きで、フジタツちゃん(藤竜也)の野良猫ロックシリーズなど、実にシャープでいい映画を撮っていたので、出演を頼むことにして基本OKも貰っていた。しかしどこかからこの話を聞きつけたジョーさんが(宣伝部で打合せをしている時だと思うが)その場にやって来て、「あんしゅん(安春)はドモリなんだから、そんな大役は無理だ...。俺が手伝ってやるから...」と押しかけ協力。特番の中のハードボイルドドラマの主役をこなしたり、日活撮影所の取材などにも全面協力、ジョーさんの力もあって裕次郎さん、旭さん、渡さんなどの大スターのインタビューもスムーズに進み、我ながらかなりな自信作に仕上がった。ラジオ番組の賞でもある民放賞のラジオエンタメ部門にも出品しようと言う話にもなったが、登場スターが脇役まで含めかなり多数で、3時間半の特番を1時間に縮める(1時間番組が提出規則)のは不可能と判断し断念したのだが、その代わりが日活本体による映画化。
 何かと想い出多い特別番組だったのだが、1か月近くジョーさんも協力してくれ、全ての収録が終わった時には、進行役の安春さんや構成の高平哲郎氏などスタッフを引き連れて、銀座・青山のクラブをはしご、実に愉しい一時までも設けてくれた。真の映画スターの一人だったと思う。10年ほど前には家が全焼、住まいも無くなってしまったが意気軒高、俳優魂を見せている姿を頼もしく・心強く感じてもいた。

 
 ジョーさんとはその時1度きりのお付き合いで、まさに一期一会だつたが、意外なことに奥さんの遊さんとは、2度ほど番組でインタビューしている。宍戸遊さん=エッセイスト・俳人で、俳句の番組や高齢化を考える番組でご一緒しているのだが、インタビュー終了後にポツンと「私の夫は俳優で、子供も俳優をやっている(宍戸開)の。結構有名なのよ...」と語ってくれたので、ジョーさんの奥さんと言うことが分かった次第。彼女ももう10数年以上前に亡くなってしまい、ジョーさんは寂しき一人暮らし。しかしあのダンディーさは何時までも失われなかったはず。大変に残念だし、寂しく悲しい。享年86才。黙祷&献杯

【今週の番組ゲスト:ピアニストでコンポーザーのなら春子さん】
M1「ドラムツリー」
M2
Maria Cervantez
M3
「夢」

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