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テイスト・オブ・ジャズ

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「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、再放送毎週土曜日23:00-、毎週日曜21:30-、などでオンエアー中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.76~革命の唄~】

 色々と大変なことが多かった2011年もそろそろ終わろうとしている。ジャズと言うよりも音楽業界全体を取り巻く環境は、今年に入って更に悪化の一途をたどりつつあるようだが、単なるBGMに成り下がった感のあるジャズなどは、一度解体してしまうのも…、などと、あるジャズ・アルバムを聴きながらいささか不穏当なことを考えたりもしている。 

 そのアルバムとは2ヶ月ほど前に出された、イタリアを代表するピアニスト、ジョバンニ・ミラバッシの『アデランテ』。タイトルは“進め”と言う意味で、“インターナショナル”や“パルチザン””リベル・タンゴ“など、かつて変革の象徴だった世界中の反体制・反権力歌、そして自由への希求(そしてその闘士達)を歌った唄の数々を、ソロ・ピアノで綴ったもの。こう書くといかにもイデオロギーに凝り固まった、硬直した音楽を想像しがちだが、実際は実に美しくも強靭で哀切な歌の数々。それをピアノで綴るミラバッシの想いが溢れており、仲々に素晴しいものだ。

 ミラバッシは70年生まれで、ジャズが最も社会とコミットし、先鋭的に熱く燃えていた、まさにその時に生まれた“遅れてきたジャズ青年”だが、彼の血の中にはジャズの本源とも言える、ラジカルでホットな異議申し立ての意思が熱く脈打っている。元々はクラシックを学んでいた繊細な青年だった、ヨーロッパの才能豊かな若いピアニストが、こうした反権力、究極の自由賛歌の数々を取り上げ、自身のジャズ世界へと昇華、再構築していく。こんな姿を見ると、ジャズはまだまだ捨てたものでないとも思う。愉しいだけでなく(それは大変に重要ではあるが…)、何時も世界を見通す目を持った、社会的にも意義あるもの。それがジャズの持つある側面だということを、改めて思い知らされた、静かな熱気に満たされた珠玉の1枚です。是非聴いてみて、この1年間を静かに振り返って下さい。


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