8月13日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [テイスト・オブ・ジャズ]
2016/08/12(金) 19:00 番組スタッフ
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.318~木全信さん追悼】

 梅雨が明けた7月終わりのある夜中、3件ほどの携帯Telがあった。こちらはなにも無い時には11時前には就眠してしまうので、翌朝早くこれに気付いた。何か良くないことが...などとつらつら考えてみると、1件思い当る件があった。2週間ほど前にtelしたある先輩の存在。その時はかなり元気が無かったのでもしやと思い確かめると、やはりその悪い予感通りで、先輩が逝ってしまったと言う。木全信さん。朝日・毎日・読売と言う3大新聞の死亡欄にそれが掲載されていたので御存じの方もおられるかも知れないが、日本を代表するジャズプロデューサーである。しかしそれ以上に彼は、かつての日本短波放送(現ラジオ日経)のぼくの先輩ディレクターであり、今から55年程前に我が「テイスト・オブ・ジャズ」を立ち上げた、その当人なのである。享年78。

 
このコラム担当のO部長から「最近また訃報関連が増えましたね」と嫌味を言われたが、木全氏死去とあればまず何を置いても書かなければならない。お許しあれ。彼は今年の初めに癌が見つかり、通院して薬物療法を受けていた最中の訃報だった。3月に銀座で一緒に食事をした時は、銀座の山野楽器で丁度彼が出したジャズ本「ジャズは気ままな稼業」に因み、彼のプロデュース作品を何作か掲示しており、それを見た後に数人で昼食を取ったのだった。その時病気になった事を彼から告げられたが、至って元気な様子だったが、その後状態は悪化していったのだろう。
 
彼は洒落者揃いのレコード会社の中でもとびきりにダンディな好漢で、絵に描いた様な慶応ボーイのもて男でもあった。ぼくのような東京育ちのかっぺに対し、木全氏は岐阜と言う地方都市出身ながらも都会的な洒落者。好対照な存在だったが、ぼくの大好きな先輩であり、頼りになる相談相手でもあった。

 
木全氏とぼくとは短波放送の制作部で2年程一緒で、彼はその頃からジャズの原稿を書くジャズライターでもあった。ぼくもジャズ番組の手伝いなどもさせてもらっていたが、彼は直ぐに営業部に移動、そして1年ほどでレコード会社に転職、制作や宣伝の仕事を手掛け、アルファレコードのお偉いさんにまで上り詰めたが、最後は自身のプロダクションを立ち上げ、そこで数多くのアルバムをプロデュースしたのだった。ある時誰かが彼に入れ知恵をし、世界最多のジャズ作品をプロデュースした人として、ギネスブックに申請してみたら...と持ち掛け、彼も満更でもなくやる気になり、そのおかげで彼のプロデュース作品を集める手伝いなどもやらされたが(結構大変な作業だった)、結局この話はお流れとなってしまった。でもそんな話を持ち掛けられる程、数多くのジャズアルバムを制作した人でもあり、恐らく300枚を超えるジャズ作品を発表したはずである。

 
彼が世に送り出した第一の存在、それがピアニストのケニー・ドリューだった。それまでは故国を離れ、欧州で地味な活動を続ける実力派だった彼に、一般受けするポピュラーナンバーのジャズバージョンを演奏させ、その心地良さがが女性ファンをメインに大ヒットを記録、当のドリュー自身もその人気の過熱振りに吃驚したほどだった。こうした選曲の妙、それが木全マジックと称されるものだが、反面ポピュラーな人気を狙った下世話な企画などと言う評価もあり、かなり毀誉褒貶の激しい人ではあった。だがきっぷのいい好漢だったことは間違いない。

 
もともとこの「テイスト・オブ・ジャズ」には前身の番組があり、それが「大学対抗バンド合戦」。これは音楽分野における大学インターハイのようなもので、このラジオ音楽フェスに出場、賞を獲得することが、多くのポップス系大学音楽サークルの夢でもあり、早稲田のジャズ研もこれに賭けていた。この企画を立案・実施したのが彼だったが、大手の広告代理店に入った東大ジャズ研のある男が、ラジオ東京(今のTBS)にこの企画をそのまま持ち込み、短波放送ではわずか数年で終了、その後ラジオ東京の人気番組になってしまったのだ。ひどい話だが局の力と言うか、どうしようもない。そこで木全氏がジャズ番組でもひとつ...と言うことで生まれたのが、今や民放ラジオ最長寿のジャズ番組となった、我が「テイスト・オブ・ジャズ」なのであり、かれが営業部に異動し、「お前が後を継げ」と彼からバトンを渡され早や50数年。局員達の様々な迫害を乗り越え、どうにか今に至っているという次第。木全氏すら「お前あの番組まだ続けているの...」と言うほどなのだが、そこはコケの一念。やれる所までやり続けますよ...。と言うことで9月の第1週の「ジャズ」は、ぼくが番組に登場、木全氏プロデュースの代表作を掛けながら、山本嬢と共に先輩の偉業(?)を回顧するつもりにしています。乞う、ご期待と言った所ですかね。

【今週の番組ゲスト:東京ジャズ プロデューサーの八島敦子さん】
今年、15回の記念の年を迎えた東京ジャズ。 92日(金)~4日(日)の日程で開催されます。

M1Last Train Home  /  Pat Metheny

M2Come Today / 渡辺貞夫」

M3「地中海の舞踏 / 渡辺香津美」

M4「疾走する閃光 / fox capture plan

M5Wonderland / 上原ひろみ」image1.JPG


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