「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中(再放送は毎週金曜日 18:30~19:00 ※特別番組放送により休止の場合あり)。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.682~超個性派のトム・ウエイツ(ワン・フロム・ザ・ハート)】
この年令になるとそろそろ人生の店仕舞いと言うことで、終活を始めなければ...と思うし、ぼくの周辺ではそればかり気にしている輩も少なくない。ぼくはズボラな性格なので、そうした整理が大の不得意なのだが、息子や娘から毎回小言を言われっぱなしで、そろそろ整理を...と考えていたら、人生上でも1、2とも言えるある大事が起きて、いやおうなしに色々なものを整理せざるを得なくなってしまった。となると一番の難物はやはりCDとレコード盤。CDは白番(テスト盤)が多いので誰かにあげるか廃棄するしか方策無しで、いざ整理となると本当に困ってしまう。もう少し前に整理していればまだ欲しいと言う連中も少なからずいたのだが...。このコラム読んでいる方で欲しいと言う方がいれば是非ご連絡を...、と書きながら今日の本題に。
今は毎日少しづつアルバム整理に励んでいるのだが、結構空しい作業だし好いアルバムが見つかると、どうしても聞き惚れてしまい捨てる訳に行かないと考える。そんな折CDの山の中で見つけ出したのが、トム・ウエイツが出演し音楽は彼が担当していた、巨匠フランシス・コッポラ監督の不思議なカラーに彩られたミュージカル映画「ワン・フロム・ザ・ハート」のサントラ盤。1982年に公開されたこの映画は、あのコッポラ監督の世紀の失敗作、愚作等とハリウッドの評価は最低、大コケした作品でもあるのだが、ぼくは大好きな一作だし、アルバムも最高。ハリウッドでは不評でもヨーロッパの映画ジャーナリスト達からは評価の高い、ラスベガスの遊技場を舞台にした、不思議な魅力に溢れたミュージカル作品でそのサントラ盤も素晴らしい。
この作品の魅力の殆んどはトム・ウエイツと言う、本当に不可思議な魅力と才を有した歌い手、しわがれ声の酔いどれのホーボー(流浪人)シンガー&詩人の魅力に尽きる訳だが、ジャズとは一味違うが実に味わい深いジャージーなシンガーでもある。その彼がカントリーシンガーのクリスタル・ゲイルと組んで、物語を歌で紡いでいくと言う独特なひねった構成のミュージカル仕立て作品で、如何にも曲者コッポラ監督作品ならでは...と言った趣きなのだが、こうした分かりにくい映画作りはハリウッド関係者は嫌う筈だし、その通りに大不評だった訳だが、欧州の映画関係者達には抜群のセンスが受けたのだろう。
トム・ウエイツはぼくとほぼ同い年令で、もういい爺さんで最近は余りアルバムも出していないのだが、一時は独特な味わいを持った俳優としても大活躍、シンガーにして俳優という独自のスタンスで稀有な存在感を放っていた。「ナイト・オン・ザ・プラネット」「ダウン・バイ・ザ・ロー」等々、彼が出演しているだけでB級作品でも光輝いていたものだし、その上彼が作品中でその歌声を聴かせてくれるだけで、もう大満足と言う本当に貴重な役者兼歌い手でもある。カリフォルニア生まれの彼は一時、やはり独特な存在感を誇る素敵なシンガー、リッキー・リー・ジョーンズと同棲していたと聞くが、この2人は凡百のジャズシンガーをはるかに凌駕した、真のジャズの歌い手でもある。2人の共演のアルバムは無い筈だが、それがあればもう言うこと無し。ジャズボーカルのアルバムなど無くても良しと言った感じすらある。そのリッキー・リーは今度久方ぶりにジャズ・スタンダードを歌ったアルバムを作ったらしい。今ぼくが最も聴きたいのはそのアルバムなのだが、残念ながら未だ手に入れていない。まあそんなつまらないよしな事を考えながら、CD整理に励む最近のぼくなのですが...。皆様も一度はトム・ウエイツのアルバム耳にして欲しいと思います。「ワン・フロム・ザ・ハート」のサントラでなくても、彼のアルバムはどれもお勧めですから...。
【今週の番組ゲスト:ジャズピアニストの外山安樹子さん】
外山安樹子トリオ結成15周年記念アルバム『『Moving Again19'→23'』から
M1「イランカラプテ」
M2「Here's to Life」
M3「Here's to Life 」
M3「Blues Discovery 」
M4「This Must Be the Place 」