「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.710~今年の1枚~】
もう年末、毎年この時期になるとジャズ雑誌などから「ジャズアルバム、今年の1枚を...」などと言った依頼が来る。発売数も昔に比べるとかなり少なくなってしまったものだが、それでもかなりな数で例年結構この依頼には悩まされる。だが今年はこの1枚と決めているアルバムがあったので、かなり楽な作業だった。
その最も印象に残った作品と言うのが、隠れた名アレンジャー(&トロンボーン奏者)の松本治による素晴らしいデューク・エリントン集『デューク・オン・ザ・ウインズ』。このアルバムはデューク・エリントン(&ビリー・ストレ―ホーン)の10の銘品に、松本が「歌と木管アンサンブル&ベース」と言った、少し変わった編成で挑み見事な成功を収めた、異色だが出色のエリントン集。更にここでフューチャされるのが日本屈指の唄者~大野えりだけに、もう言うこと無し。エリントン集と言えば、これ迄にも星の数ほどに多くの名作が残されており、日本人のものでは渋谷毅(p)の一連の作品群(『エッセンシャル・エリントン』)がつとに有名だが、これもそれ等の名作に匹敵する素晴らしい内容を誇る。「革新的アレンジに驚愕」(山下洋輔)等と大御所やうるさ方からも絶賛されており、その評判通りの自在・闊達にして巧妙なペン捌きで、エリントンの広大で深淵な音楽を彼流に鮮やかに再構築する。更に歌姫えりの歌いっぷりも見事の一言で、目くるめく蠱惑の音世界を現出した意欲作として、今年の1枚としてぼくは推薦したい。
松本のエリントン集は日本ジャズ=和ジャズの秀逸な作品だが、一方海外作品としてぼくが推薦したいのは、ぼくの大好きなラテンジャズの分野から、キューバを代表するピアニスト、アロルド・ロペス・ヌッサの新作『ティンバ・ア・ラ・アメリカーナ』。これまでに9枚ほどのアルバムを発表し、ラテンジャズシーンのリーダー格で頑張っている彼が、今回ようやく世界的ジャズレーベル「ブルー・ノート(BN)」と契約を交わすことになり、その記念すべき初アルバムである。今はフランスに移住し、心機一転新たなラテンジャズの構築に励む彼の姿が、生き生きと捉えられた好作品で、ラテンジャズの醍醐味を味わえる作品として推薦したい。
まあいずれにせよ来年も「テイスト・オブ・ジャズ」を宜しくお願いします。来年最初のゲストはなんとあの小曽根真。本当に久々の番組登場なので、1月1日の元旦にもわざわざ時間を取って放送することが決定。皆さまもお愉しみにお聴きください。コンサートから音大教授まで多彩な顔を誇る世界的ピアニストの登場、今からぼく自身もワクワクものです。
【今週の番組ゲスト:音楽ジャーナリストで整形外科医の小川隆夫さん】
今年1年のジャズ界を振り返って頂きました。
M1「Hail To The Real Chief / M.E.B」 (『That You Not Dare To Forget』より)
M2「Encounter / 小曽根真スーパーカルテット」(『A Night in Tokyo』より)
M3「I Fall In Love Too Easily / Pat Metheny」(『Dream Box』より)
M4「Mr. Tambourine Man / John Scofield」(『Uncle John's Band』より)
トークの中に出てきた小川さんの本『ジャズ・クラブ黄金時代 NYジャズ日記1981−1983』
『来日ジャズメン全レコーディング1931−1979 レコードでたどる日本ジャズ発展史』
尚、1月1日、元日の朝9時30分からは新春第1回のテイスト・オブ・ジャズを放送致します。ゲストはピアニスト、小曽根真さん。どうぞお楽しみに!